楽器録りにも対応するフラットな特性を持ったダイナミック・マイク

TELEFUNKENM81
TELEFUNKENはコンデンサー・マイクのイメージが強いメーカーですが、以前の同社から発売されたダイナミック・マイクM80は、ダイナミック・タイプながらに、コンデンサーっぽい印象を持っていました。今回紹介するのは同シリーズの最新機種となるM81。果たしてどんなサウンドなのか、早速使ってみましょう。

オンマイクでの使用を意識した
近接効果を抑えた特性


製品が封入された筒状の箱を開けて手に取ると、しっかりとした作りであると感じます。ダイナミック・マイクはその用途からも、ある程度の丈夫さが必要なのでその点は合格です。ハンド・グリップ部分もザラつき感があって滑らない印象。付属品はマイク・ホルダーとソフト・ケース......とは言え、TELEFUNKENの刻印を見るだけで気分が上がるのは筆者だけでしょうか?重量感はSHURE SM58と比べて少し重く感じる程度、ハンド・グリップもSM58より太く、SENNHEISERに近い印象です。指向性は最近のマイクらしくSM58より少し狭め。これによってグリップ方面からの音の回り込みを減らしているので、PA現場でのハウリング防止に効果があるでしょう。ゲインはSM58より若干小さい程度です。グリップ下部のXLRコネクターを挿す部分が少し削ってあり六角形になっていて、テーブルなどに置いたときに転がりにくくなっているのも、よく考えられていると思います。では、早速音をチェックしていきましょう。まず自分の声で確認してみると、ダイナミック・マイクっぽくないすっきりした音の印象です。オンマイクでの使用を意識したのか、口元にマイクを近づけたときに低域が持ち上がる"近接効果"が少なくなっているのも印象的ですね。ダイナミック・マイクにありがちな中域~高域にかけてのクセが無く、クリアかつ素直な特性です。同社のM80はハイ上がりで、高域に特徴を持たせた感じがありましたが、本機ではそれが抑えられているようで、より素直なサウンドだと感じました。言うなれば、コンデンサーとダイナミックの中間的な印象です。例えばダイナミック・マイクで録ったボーカルのデモを聴いたときに、何だかモサっとしていてもう少し音がクリアなら良いのに、と思うことも多々ありますが、このマイクならEQしなくてもクリアに録ることができそうです。"デモの音質は良くしたいけど、コンデンサー・マイクを買うまでもない"と思っている人などに最適なモデルだと思います。低域の特性はM80と似ているので、本機よりもさらに高域が欲しいと思う方はM80も試してみると良いでしょう。

EQ処理無しでも使えるクリア感
低域を抑えたナチュラルな特性


さて、パッと試してみた印象が良かったので、早速男性ボーカルのレコーディングで使用してみました。コンデンサーほど繊細ではなく少しラフな雰囲気が欲しかったので、M81を試しに使ってみたのですが、イメージ通りのボーカルが録れたのでそのまま採用となりました。ちなみにハイパス・フィルター以外はEQ処理も無しで、何の不満もありませんでした。ほかのダイナミック・マイクを使うと、あとからEQで何かしらの補正をすることが多いのですが、それが無かったというのはやはり好印象だったということです。オンマイクでも変にこもらないところも良いですね。次にアコギでチャレンジです。特にロックっぽいバンドでアコギを録る場合、筆者はコンデンサー・マイクとSHURE SM57などのダイナミック・マイクを合わせて録音することが多く、ダイナミックは癖があるのでEQ処理が必須になるのですが、M81だとEQ無しの状態でも混ざり具合の印象が良かったです。ここでも中低域~低域を抑えた特性がうまくマッチングしました。最後にエレキギターのアンプ録りも試してみました。これもダイナミック・マイクで録ることが多いのですが、中域のピーキーな部分が気になっり、クリアさが欲しくなることもよくあります。そんな場合でも本機は中域のピーキーさが抑えられ、透明感のあるサウンドで録れました。今回は試すことができませんでしたが、ドラムなどの皮物に使っても良さそうですね。


M81はダイナミック・マイクなのですが、いわゆるダイナミックらしさが前面に出ていないという点が総合的に好印象でした。ですから、あえてダイナミックのクセを求める用途には不向きですが、コンデンサーを使うまでもないけど、少しだけそんなニュアンスも欲しい......というシチュエーションには最適でしょう。どんな音楽にも対応できる特性を持っているので、楽器からボーカルまで全般的に使えると思います。高域が欲しいならM80、素直さが欲しいならM81と、バリエーションで選べるのも良いですね。筆者のマイク・リストにも追加したいと思いました。クセの無いクリアさをダイナミック・マイクに求める皆さんは、ぜひ試してみると良いでしょう。

サウンド&レコーディング・マガジン 2012年6月号より)

撮影/川村容一

TELEFUNKEN
M81
オープン・プライス (市場予想価格/29,400円前後)
▪形式/ダイナミック型▪指向性/単一▪周波数特性/30Hz〜18kHz▪出力インピーダンス/200Ω▪外形寸法/48(φ)×184(H)mm▪重量/371g