
抜けの良い音質が特徴のP5
P5よりもややマイルドなP3S
試用の環境としては、コンソールはYAMAHALS9、アンプがELECTRO-VOICE CP3000S、スピーカーはDYNACORD M12をセッティング。まずはP5、P5S、P3Sで自分の声を収音し、スピーカーからの音質やハウリング・マージンをテストしてみました。
P5の指向性はハイパー・カーディオイド(超単一指向)です。他社の一般的なハイパー・カーディオイドのマイクもコンソールに接続して比較してみたところ、P5のマイク・ゲインは少し高めで、抜けが良い音質だとまず感じました。メーカーWebサイトの周波数特性を参照すると、2〜10kHzがレベル・アップしたカーブになっていて、このカーブが抜けの良さを感じさせているのだと思います。マイクのレベルを上げてハウリングぎりぎりのレベルに達すると、6.3kHzから早いハウリングが始まります。しっかりとしたマイク・レベルが確保できるので特に問題は無いのですが、声量の小さいボーカリストだとゲインを確保できずに突発的なハウリングが起こる可能性があります。またハイパー・カーディオイドの特徴として、かぶりが少なくクリアな音色で収音できるのですが、逆にボーカリストの口元から離れるとかなりのゲイン・ダウンになるので注意です。
次にP5に音声のオン/オフ・スイッチが付いたP5Sを試してみました。スイッチ回路が付いたからでしょうか、周波数特性の2〜10kHzがレベル・アップしたカーブが、P5よりもまろやかになった感じがしました。続いてP3Sを試してみましょう。このマイクの指向性はカーディオイド(単一指向)です。他社の一般的なカーディオイドのモデルと比較すると、4dBくらいゲインが高い印象です。Webサイトを見たところ、やはり周波数特性は2〜10kHzがレベル・アップしたカーブ。ほぼP5と同じ周波数特性ですが、若干P3Sの方がマイルドな感じで好印象です。P3Sのスイッチ無しのモデルもあればいいと思いました。
ここまで試した3本は、共通して透明感がある音質です。ボーカルも良いですが、コーラスやアコギ、パーカッション、スネア、タムの収音にも良いと思いました。ちなみに、スイッチのオン/オフ時に出るノイズが少し大きいので、セレモニーのMCなどでは気になるかもしれません。
明るくリバーブの乗りも良いP4
低域を自然にとらえるP2
次にP4とP2を試してみます。この2本は楽器の収音に適したモデルとのことなので、コンサートのサウンド・チェック時に筆者愛用のマイクと比較してみました。初めにP4をスネアに立ててみたところ、まずは明るい音色だと感じ、抜けも良いのでリバーブの乗りもいいです。コンガに試しても明るくピックアップできたので、そのまま本番も使わせていただきました。
一方でP2は、見るからに低音楽器に適した外観です。バス・ドラムに使用したところ、素直なアタックがピックアップできました。最近のバス・ドラム用のマイクは低音をブーストした構造になっていることが多く、ドラマーのチューニングに関係無く低域がブーストされるのには少し疑問もありました。それを考えると、自然にピックアップできるP2はとても好印象です。ベース・アンプの収音にもいいかもしれませんね。この2本のマイクは最大音圧レベルが高く、P4は152dB SPL、P2は157dB SPLとなっています。パワー・ヒッターのドラマーや爆音ギター・アンプの収音でもひずみにくいので、安心して使用できるでしょう。
これがAKGのマイクのすべてだと思ってはいけませんが、この価格でAKGのマイクが手に入るのは魅力的です。AKGというブランドの歴史の1ページだととらえ、自分なりにマイク・アレンジをいろいろと試してみて、愛用の1本にされることをオススメします。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2012年6月号より)
撮影/川村容一