モデリング・アンプを備えた簡単操作のプラグイン・マルチエフェクト

TOONTRACKEZ Mix 2
人気のドラム音源EZ Drummerなどをリリースしているメーカー、TOONTRACK。この度同社から、操作方法の簡単さで人気を博したプラグイン・エフェクトEZ Mixの進化版=EZ Mix 2が発売されました。EQやダイナミクス、空間系、ひずみ、モジュレーション系など、さまざまなエフェクトを1つのプリセット・プログラムの中で一括して扱えるお手軽感はそのままに、本バージョンでは内蔵エフェクトの種類が大幅に増加。また新しくモデリング・ギター・アンプ/キャビネットが搭載されましたので、豊富なプリセットからギターやベースにマッチした音作りも行えます。さらに、従来通りMac/Windowsに対応し、VST/ Audio Units/RTASをサポートしている上、スタンドアローンでも扱えるようになりました。さて、その実力はいかなるものなのでしょうか?

楽器やジャンルに合わせたプリセット
2つのパラメーターで音色調整が可能


EZ Mix 2は、通常のプラグイン・エフェクトと同様にDAWを立ち上げ、かけたいトラックにインサートするだけで使い始めることができます。複数のエフェクトをひとまとめに扱えるため、プラグイン・エフェクトを同じ数だけ使うときに比べるとCPUへの負荷が低くて済むわけです。内蔵エフェクトにはスタンダードなものが網羅的に用意されている上、ロータリー・スピーカー・シミュレーターやテープ・シミュレーターといった変わり種も収録。特に、ロータリー・スピーカー・シミュレーターはどんなサウンドにかけても楽しめます。画面左上の"Instrument Group"エリアを見ると分かるように、ギターやベース、ドラムなど、さまざまな楽器に向けたプリセットが用意されています。幾つかのプリセットを対象となる楽器にかけてみたところ、いずれも扱いやすい音質。また、ポップスやロック、メタル、ジャズといったジャンルでソートし、楽曲にマッチしたプリセットを呼び出すこともできます。さらに画面上部の検索窓を使うと、任意のワードでサーチ&ロード可能。例えば"vocal"と入力すれば、ボーカル用のプリセットが画面中央のセクションにズラりと並びます。各プリセットに含まれるエフェクトの数は画面中央の"FXs"エリアに表示されます。各エフェクトを詳細に編集することはできませんが、プリセットには最大2つのパラメーターが用意されており、画面下部のツマミを使うことでそれらを調整することができます。またツマミの上にある"★+"ボタンを押すと、好みの設定を保存可能。セーブした内容は画面上部の"★Favorites"タブからロードできます。さらに"★Favorites"には任意のプリセットを登録できるため、お気に入りのプログラムをイチから探す手間が省けるわけです。

往年のロックを思わせるアンプ・サウンド
音に味を出せるテープ・シミュレーター


スタンドアローンでも動作するEZ Mix 2。まずはギター用エフェクターとして試してみました。目玉機能は新搭載のモデリング・ギター・アンプ&キャビネット。早速試してみたところ、実際のギター・アンプを使ってコードを鳴らしたときに発生するジリジリとしたノイズまで再現されています。プリセットには"51-VH" "Distorted Vox""Fuzz Drive Stack"など分かりやすい名前が付けられているため、狙いの音色をスムーズに探し出せます。プリセットを選び、その名前から連想したフレーズを弾いてみたところ、コレがなかなかのクオリティ! エドワード・ヴァン・ヘイレンを思わせる"51-VH"にはライト・ハンドのフレーズが、"Fuzz Drive Stack"にはロバート・フリップ的なロング・トーンがハマります。例えば打ち込み系の音楽を作っている人が"ここに70'sハード・ロックのようなギターを入れたい"と思ったときに、イチからそれらしい音色を作るのは骨の折れる作業。しかしEZ Mix 2を持っていれば、イメージに近い音を即座に得ることができます。と、サンレコなのにギターのことばかり書いてしまいましたが(笑)、リズム隊やボーカル、キーボード、ストリングスなどに向けたプリセットも充実しています。さらに、2ミックスの音圧を手軽に上げたいときに役立つ"Master"などのダイナミクス系プリセットも搭載。自作品のデモ音源をサクっと仮ミックス&マスタリングして、バンドのメンバーに渡すこともできるわけですね。もう1つ優秀だと思ったのはテープ・シミュレーター系のプリセット。特に"Fluttered Tape"からは迫力のあるサウンドが得られ、ドラムにかけると少しひずんだ90'sロックな質感に。FENDER Stratocasterの音にもかけてみたところ、良い具合に高域が丸くなり、今度はジャズっぽいむっくりとした音になりました。すごくイイ感じの音色なので、仕事で使わせていただきます!


EZ Mix 2を持っていればパソコンをハードウェアのエフェクターととらえ、ライブ演奏に使うこともできるでしょう。こうした操作性からギターやベースに使用する機会が多くなると思いますが、どんなサウンドに用いても高品位な仕上がりになりそうです。また各プリセットのキャラが立っているので、選んでいるうちに思いも寄らないサウンドに出会えるかもしれません。もちろん、イメージに近いミックスを短時間で作れるという点でも、便利で優れたマルチエフェクターだと思います。

サウンド&レコーディング・マガジン 2012年6月号より)
TOONTRACK
EZ Mix 2
14,700円
▪Mac/Mac OS X 10.5以上、Power PC G5(Intel Macを推奨)、動作フォーマット:VST2.4/AudioUnits/RTAS/スタンドアローン▪Windows/Windows XP(32ビット)/Vista(32、64ビット)/7(32、64ビット)、INTEL Pentium 4またはAMD Athlonプロセッサー、512MBのRAM、動作フォーマット:VST2.4/RTAS/スタンドアローン