多彩な演奏機能を備えiOSにも対応する超小型&高耐久性MIDI鍵盤

 昨秋に発売されたオーディオI/O、Fast Track Cシリーズが話題を呼び、今年も目が離せないM-AUDIOが重量わずか450gのモバイル型MIDIキーボード、Keystation Mini 32を発表しました。本機にはAxiom 25やOxygen 25、KeyRig 49など小型&多機能なMIDI鍵盤を手掛けてきたM-AUDIOならではの工夫が詰まっています。

タッチの良い鍵盤は両手で弾けるサイズ
APPLE iPadをプラグ&プレイ可能


まず目にとまるのは非常にシンプルなインターフェース。スッキリとしたデザインには高級感が漂っています。外観の良さは、持ち運ぶ際の重要なポイントですよね。しかも19.8mmという薄さなので、ラップトップ・バッグなどに楽々と入れられるのもうれしいところ。もちろんUSBバス・パワーで駆動します。そして携帯性だけでなく、ヘビー・ユースにも耐えられるよう頑丈に設計されています。さらにAPPLE iPad Camera Connection Kit(別売)と併用することで、iPadの音楽制作アプリもプレイできるのです。僕はこれまでに何種類かの小型MIDI鍵盤を試してきましたが、ベロシティに対応していなかったり、鍵盤数に不足を感じたりで"スケッチにも使いにくい"と思ったことさえありました。しかし本機は見事にこの悩みを解消してくれます。まず鍵盤の数が32もあると、演奏の表現性が高まります。そしてキー・タッチもこれまで使ってきたモバイル型MIDI鍵盤とは比べモノにならないくらい優れています。さらにその鍵盤は両手で弾けるだけの大きさを持っていますので、僕のように鍵盤でハーモニーを考える人にとって使い勝手が良さそう。試しにAPPLE GarageBand For iPadのエレピを鳴らしたところ、非常に気持ち良い!モバイル型であるにもかかわらず、ここまで"弾ける"MIDI鍵盤はなかなか無いでしょう。

ピッチ・ベンドやモジュレーションも可能
4種類のベロシティ・カーブを標準搭載


それでは、具体的な機能を見ていきます。まず、ノブ/ボタン類はトップ・パネル左側にまとめられており、その数も絞られています。この外観から"設定できることは限られているんだろうな"と思っていたのですが、意外や意外! 驚くほど細かいオペレーションが可能なのです。まず、ピッチ・ベンドやモジュレーション用のホイールが備えられていないことを疑問に思う方もいるかと思います。本機では前者を"PB"、後者を"Mod"といったボタンでコントロール可能。モジュレーションの速さを調整したい場合は、"Edit"キーを押しつつ左から4番目の白鍵(F)を押すと、任意の速度に指定できるモードに入れます。あとは演奏中に"Mod"ボタンを押したり離したりすることで、指定した速さのモジュレーションをON/OFFできます。また、各鍵盤にはあらゆる機能がアサインされており、上記と同じ要領で"Transpose(鍵盤の音高を半音単位で調整)"や"Program Change(外部のMIDI音源に内蔵された音色の切り替え)、"Tuning(外部のMIDI音源のマスター・チューン変更)"、"Knob Assign(ボリューム・ノブに対するMIDI CC信号の割り当て)などのオペレーションが可能です。そして本機で最も重要な機能が、ベロシティ・カーブの設定。"Edit"ボタンを押しつつ、左から5番目の白鍵(G)を弾くとベロシティのエディット・モードがONになります。次に数値の割り当てられた白鍵を使うと、4種類のプリセット・ベロシティ・カーブを選べるのです。左から9番目の白鍵(D)を押すと、ベロシティの上限値が低めに設定されます。大きな音を出そうとすれば、鍵盤を強くたたかなければなりません。右隣の白鍵(E)を押すと、最もニュートラルなベロシティ・カーブに設定できます。強弱のニュアンスが最も繊細に表れるでしょう。その隣の白鍵(F)を押せば、より大きな音量で出力可能。さらに隣の白鍵(G)を押すと100と127のベロシティ値のみを出力するようになるので、音圧感を重視したいドラム・トラックなどを打ち込む際に便利です。なお、どの打楽器にどちらのベロシティがアサインされるかは使用するドラム音源によります。


超軽量のMIDIコントローラーに求められるのは、アーティストのアイディアを的確に表現できる操作性です。曲をスケッチするツールとしてiPadが注目される中、素晴らしいパートナーが出現したと思います。曲のモチーフに、細かいニュアンスをとどめておくことは大切ですよね。それをKeystation Mini 32とiPadだけで実現できるというわけです。まさに強力な"作曲ツール"ですね!サイド.jpg▲USB端子はトップ・パネルに向かって左側のサイド・パネルに装備されている

(サウンド&レコーディング・マガジン 2012年3月号より)


 Keystation Mini 32製品情報(NUMARK JAPAN)