同社初のオープン・エアー型を採用し
プレミアムな素材を使用した構造
さて、今回ご紹介させていただくSRH1840は、同社初のオープン・エアー型であり、フラッグシップ・モデルとなるもの。ハイエンド・ヘッドフォンによく見られるオープン・エアー型はハウジング部分に穴が開けられており、スピーカー部のコーン紙の後方から発生した音を外へ逃がす構造となっている。このため周囲への音漏れと、逆に外の騒音が回り込んできてしまうのが難点となってしまうが、その一方で、より自然な音でのリスニングが可能なのが特徴である。本機の第一印象として、高級感を追求するというより、できる限り軽い素材で余分なものを排除しようとする意図が感じられた。重量は268gと手にした感じもとても軽く、フレームとハウジング部をつなぐ部分に強度が強く軽量なエアクラフト・グレードのアルミ合金を使用するなどプレミアムな素材をふんだんに使い、軽さと耐久性の両立を実現。華奢（きゃしゃ）な見栄えとは逆にかなり頑丈で、手にしてみた方が高級感を味わえた。ベロア素材のイアパッドによりとても柔らかく耳によくフィットするが、左右の遊びがほとんど無いため多少窮屈に感じる人がいるかもしれない。しかし側圧も程良く、１時間の連続使用でも疲れたり耳が痛くなることはなかった。ケーブルは両出しで、ケブラー素材の強化ケーブルを採用。MMCXコネクターによる脱着式で、簡単に取り外しができるので保管や交換はとても楽だろう。またパッケージには交換用のイアパッドとケーブルが２本、標準プラグ・アダプターが同梱されるほか、ハード・ケースも付属するので保管にも便利だ。左右の特性をそろえたドライバー・ユニットはネオジム磁石を採用した口径40mmのダイナミック・タイプで、再生周波数帯域は10Hz〜30kHz。インピーダンスは65Ω、音圧感度も96dBと最近の傾向からは比較的高い数値で、ヘッドフォン・アンプの使用を前提としているようだ。実際に音を聴いてみると、やはりパソコンやAPPLE iPodなどのヘッドフォン出力に直接接続するよりは、DACなどを使うのが良いと感じた。
まるでニアフィールド・モニターのような
自然な聴こえ方が特徴
サウンドの傾向はやや中域に色付けがあるが、高域にかけてまとまりがよくどこまでも伸びていく印象。クラシック楽曲ではストリングスのエッジや鋭い金管楽器の響きなどが心地良く響き、繊細なアーティキュレーションも十分に表現されている。高域の伸びが良いため、その分最初は低域が物足りなく聴こえたが、耳が慣れてくると実に自然に再現されていることに気付く。試しにハウジング部分を耳にぐっと押しつけてみると音が近くなり、低域が増えバランスが良くなる印象だった。ひょっとしたらドライバーと耳までの距離があと５〜10mm近いセッティングでも良いのかもしれない。アタック感や定位感は素晴らしく、クッキリとその場所を示してくれる感じだ。音の立ち上がりのレスポンスも早く、ロック系のサウンドでは特にスネアの鳴りやギターのカッティングなど前に出てくる楽器の主張はとてもよく再現されている。全体の音の聴こえ方がとても自然で、ヘッドフォンを付けているというよりはニアフィールド・モニターの前にいるような感覚になれるのもこの本機の魅力のひとつだろう。ちなみに同時発表された本製品の下位機種SRH1440（オープン・プライス／市場予想価格4
0,000円前後）も一緒に試聴したのだが、こちらは全体的にフラットでインピーダンスも一般的な37Ω。パソコン本体に直接つないでも十分な音量とパフォーマンスを示してくれた。また奥行きや臨場感の再現も素晴らしく、DAWでの制作でも一段階上の音作りができるだろう。
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ほんの数年で、プロフェッショナル・ユースからコンシューマー機まで存在感のある製品を次々市場に送り込んでいるSHURE。今後のリリースにもますます目が離せなくなってきた。（サウンド＆レコーディング・マガジン 2012年3月号より）
