同社最上位真空管コンデンサー・マイクの15周年記念パッケージ

RODEClassic II "Collectors Edition"
 高性能なコンデンサーマイクを低価格で提供し続けているRODE。そのラインナップにおいてフラッグシップに君臨するClassicシリーズの発売15周年を記念して、Classic II "Collectors Edition"が発売されたので紹介しよう。

生涯保証やスペア・チューブなど
収集心をくすぐる特典と保証が満載


純金蒸着された1インチ・デュアル・ダイアフラム、6072ツイン・トライオード・チューブおよびJENSEN製カスタム出力トランスといったマイクの中身や細かいスペックは従来のClassic IIと同一。9段階指向性切替え、−10/−20dBのPAD、2段階ハイパス・フィルターというフレキシブルな仕様は、ソースを限定することなくさまざまな音場をとらえたいという要望に応えてくれるだろう。マイク・ホルダーもショック・マウント・タイプおよびスタンド・アダプターの2種類が付属しているので、用途によって使い分けが可能。このショック・マウント、角度調整用の締め付け部分の構造が優秀でしっかり固定できるのだが、マイク自身が1.44kgと重量級であるのに加え、ダブル・シールドされた12ピンの専用ケーブルがこれまた重めなので、それらに耐え得るしっかりしたマイク・スタンドを用意することをお勧めする。


Collectors Editionのみの仕様としては、本体に500個限定を示すシリアル・ナンバーが刻印され、アルミ削り出しケース入りのスペアの6072チューブや革装丁の同社ラインナップ・ヒストリー・ブックが付属。それらすべてがブラック基調で統一されており、従来のClassic IIと差別化が図られている。さらにオンライン登録すると生涯保証も受けられ、オーナーの名前入りのチタン製カードが送られてくるという心憎い演出も。コレクター心をくすぐる"おまけ"要素だけにとどまらず、スペア・チューブの同梱や保証面を充実させている事実に、本機に対するRODEの自信と誠意を感じる。これでお値段据え置きなのだから、お買い得感は高いのでは?


ボーカルは重心が低く自然に伸びる
アコギは深みがあるサウンドで録音可能


では実際にそのサウンドをチェックしてみる。まずは電源を入れテスト。ゲインは若干低め。S/Nはチューブ・マイクとしては平均的といったところか。最初に女性ボーカルで使用したところ、自然で伸びやか。低域の重心は低めで下から上までどの帯域にも嫌なピーク感が無い。300〜400Hz辺りが少し削られているのか、だぶつくこと無く全体にすっきりしたサウンドが得られた。ハイエンドの伸びも自然で、最近のマイクにありがちな"チリチリとしたザラつき"は皆無であった。


引き続きコーラス録り。人数感のあるガヤっぽい処理にしたかったので、無指向に切り替えてみると単一指向に比べて若干ハイが荒れ気味傾向に。録音したスタジオは狭く天井も低く、決して響きの良いスペースではなかったが、3人がマイクから1mほど離れて囲むことで程良いルーム・サウンドを持ったガヤ・コーラスが収録できた。


次にブラスを録音する機会に恵まれた。トランペット、トロンボーン、テナー・サックスにそれぞれ立ててみたが、音圧の高い音源に対してPAD無しで対応できたことからも、本マイクの性能の高さがうかがえる。チューブ独特の心地良い反応の鈍さが、ブラス・セクションの立ち上がりの速い音を上手に収めてくれた。


最後にアコギ。たまたま同社チューブ・マイクNTKがあったので比較してみる。Classic IIはほかのソースに立てたとき同様、豊かで深みのある低域と、スムーズな伸びが印象的。ストローク、アルペジオ共に弦の反応を上手に包み込むようにとらえて、余力があり豊かな印象。NTKの方は6dBほどゲインが高く、ローエンドが少し足りない分中域が張り出したガッツのあるサウンドが得られたのだが、やや弾力に欠けのっぺりとした印象。ハイエンドもClassic IIほどの明りょう度は得られなかった。こうして比較してみるとClassic IIの方が懐が深く、一枚も二枚も上手な感じだ。


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音楽機器の世界において"真空管仕様"人気は相変わらずだが、安価な製品の中にはその良さを引き出せていないものも存在している気がする。そんな中、Classic IIはこの価格帯ながらさまざまな音源に対してチューブ・マイクらしさを十分堪能でき、音場表現の可能性を広げてくれる製品だと思う。



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▲セット内容は、マイク本体、JENSEN製の電源ユニット、専用フライト・ケース、マルチコア・ケーブル(10m)、ショック・マウント、スタンド・アダプター、ヒストリー・ブックなど


サウンド&レコーディング・マガジン 2012年3月号より)



RODE
Classic II "Collectors Edition"
オープン・プライス(市場予想価格/149,800円前後)
●周波数特性/20Hz〜20kHz ●指向性/単一〜無〜双で9段階切り替え ●インピーダンス/250Ω ●最大SPL/131dB ●外形寸法/65(φ)×208(H)mm ●重量/1.44kg