入力2chは個別に録音レベル調整可
繊細なニュアンスまでとらえる録り音
当日は近隣に気を遣いながらの六畳一間ライブとあって、プラスチック製トロンボーンとアンプに接続しないベースの合奏となった。本機には90°の角度を付けたAB方式のステレオ・コンデンサー・マイクが搭載されているが、本番では底面のマイク/ライン入力(XLR/フォーン・コンボ)に外部機器をつないで収音。入力は2ch備えられており、接続する機器によってモノラル/ステレオいずれの録音にも対応する。また各入力の録音レベルを個別に調整できる上、ファンタム電源(24/48V)のON/OFFも可能。音声は最高24ビット/96kHzで、4GBの内蔵メモリーかSD/SDHC/SDXCカードに録音できる。まずはトロンボーンにコンデンサー・マイクを1本立て、本機に直接入力。ベースは別途用意したプリアンプにつなぎ、そのアウトを本機のフォーン端子に接続。2chの入力を使い、マイク/ライン録りを一度に試せるセッティングとなった。本機にはUSB2.0端子が備えられており、USBケーブルでコンピューター(Mac/Windows)に接続すると、録音データを転送することができる。録音後、コンピューターにつないだモニター・スピーカーで結果を確認してみると、コンデンサー・マイクでの録り音にはブレスの向こうからかすかに聴こえる雨だれの音まで、はっきりと収められていた。中低域の密度がやや低いような気もするが、SN比の良さは特筆に値する。一方、ベースの録り音は芯がしっかりとしていて抜けも良く、指弾きのニュアンスがきちんと伝わる音質。A/Dの品質も、70(W)×159(H)×33.5(D)mmというサイズを考えれば、申し分無いものだろう。また、2chそれぞれに入力される音の位相差を測定することで、ベストなマイク位置を探れるリサージュ機能も便利だろう。今回のライブ録音ではマイク1本しか使わなかったため必要ではなかったが、今後はぜひ使ってみたい機能だ。
最大SPL140dBでひずみにくい
8trの多重録音/ミックスも可能
"ステレオ・マイク内蔵" "リチウム・イオン電池駆動"と言われれば、やはりフィールド・レコーディングを試したくなるもの。そこで、環境音を記録しに出掛けた。内蔵マイクは音質を向上させるためか、かなり繊細に作られているようで、とにかく敏感。風の強い日でなかったにもかかわらず、吹かれを避けながらの録音は困難を極めた。しかし140dBという最大音圧レベルの恩恵か、録り音自体は大音量でもひずまなかった。外気のほこりっぽい空気感まで伝わる音質で記録されていただけに、風よけを持っていなかったことが悔やまれる。後日、風の無い地下鉄構内で録音を敢行。足音だけで人の動きが見えるような臨場感あふれるドキュメントを収められた。さて、本機最大の特徴はマルチトラック・モードだ。同時に録音できるのは2trだが、オーバーダビングすれば最大8trのレコーディングが可能。編集には各トラックの音量や定位の調整など、簡単な機能しか搭載されていないが、本機だけでミックスできる手軽さは魅力だ。机をたたく音や鼻歌、マンドリンなどを思い付くままに多重録音してみたところ、あっという間に謎な楽曲が仕上がった。内蔵メトロノームを聴きながらの録音も可能なため、スタンダードな音楽作りにも使いやすそうだ。また、デモの制作などにも最適。ミュージシャン目線に立ったLS-100は、音楽制作の心強いパートナーになってくれるだろう。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2012年4月号より)