3ウェイを初採用した人気パワード・モニター・シリーズの最上位機

KRKRP-10-3
ギター・ブランドのGIBSONが、DJ界でも有名なSTANTONを買収し、その傘下のKRKもGIBSONの一部となったというニュースが昨年末に飛び込んできた。このニュース、良い製品を作り出す会社同士が統合されてさらに良いモノを作り出すということなので、大いに期待できる話ではないか。そんな中、今年発表された新作のRP-10-3は、同社最上位ラインのVXTシリーズではなく、RPシリーズ。従来の2ウェイ・モデルでは得られなかった音を作り出すべく、3ウェイを初導入したのだ。あえてVXTシリーズではなく、RPシリーズを出したのはなぜか? その辺りも探りながらチェックに移ろう。

クラスABのアンプは計140Wの出力
システム拡張オプションも多彩に用意


RP-10-3の"3"は"3ウェイ"であること、"10"はウーファーの大きさが10インチであることを示しているが、これはミッドフィールド・モニターではあまり見ないサイズだろう。編集担当からのメールを読み返したところ、"大きいです"と書いてある。"そんなデカイの?"と思っていたら、宅配屋さんが2人がかりで運んできた。本体寸法は325(W)×540(H)×365(D)mmで、1本あたり21kg。1人だと箱から出すのもちょっとした重労働で、"家のスピーカー台は大丈夫だろうか"と心配してしまったほどの大きさだ。本体のキャビネットはMDFで、多少のことでは傷も付かなそうなほど頑丈。そしてKRKのスピーカーと言えば、VXTシリーズで採用されるケブラー繊維加工のシルクドームというイメージだが、本機はRPシリーズ。上からツィーターは1インチ・ソフトドーム、スコーカーは4インチ・アラミド・コーン、ウーファーは10インチ・アラミド・コーンという他のRPシリーズ同様のものとなる。周波数特性は31Hz〜20kHzで、最大出力音圧は113dB。アンプはクラスABで140W(低域:80W/中域:30W/高域:30W)の出力パワーを備え、入力インピーダンスは10kΩ、KRKのロゴが光るパワー・インジケーターも搭載。またリア・パネルには、高域:-2/1/0/+1dB、低域:-2/-1/0/+2dBのレベル調整ツマミを実装。さらに-30〜+6dBのボリューム・ツマミも備え、入力コネクターはRCAピン/TRSフォーン/XLRの3種類。サラウンド・システムやオプションのErgo Room Correction Systemでの音響補正にも対応し、より高度なシステムを構築できる。

伸びやハリのある高域と力強い中域
立体的で豊かな低域が特徴


僕は普段ミッドフィールド・モニターを使っているが、いつも聴いているCDを本機で聴いてみると、今まで聴こえていなかった低域が聴こえてくる。曲によってはサビや平歌にだけその低域入っていることも分かる。まるで大きなスピーカーがあるクラブだったり、素晴らしい音響システムのマスタリング・ルームなどで"こんな音入ってたんだ"と思うような感覚なのだ。本機でモニターすれば、小さなボリュームでも、要らない低音や出し過ぎのポイントをを細かく追い込めそうだ。現にこの試聴のときに1曲ミックスを行ってみたのだが、作業が早く、普段は時間のかかる低域の処理なども、納得いく音にたどり着くまでにそう時間はかからなかった。一緒にチェックしてくださったアーティストも"低域が気持ち良いです"とほめ言葉をかけてくれたほどだ。本機のサウンドは、同社初の3ウェイという特色を見事に生かし、伸びやハリのある高域、ガッシリと前に出る中域、そして立体的なアタック感を持つ豊かな低域が特徴。近年のミッドフィールドでは出そうとしても出ないほどの再生能力を実現している。ミッドフィールド・モニターを使うのと同じ感覚で使用できるのも高ポイントだが、結構低音は出るので、近所に迷惑がかからないようなある程度の広さがある個人スタジオや、ラージ・モニターが無い小スタジオでの導入に向いていると思う。単純に全体のバランスが良いので、自分の気に入ったラジカセとRP-10-3のみでも十分に良い仕事、良い音楽鑑賞が可能だろう。


値段の割に妥協の無い内容。その意味でもこのサイズでは類を見ないモニターなのではないだろうか。僕ももっと頑張って、このサイズが鳴らせるスタジオ環境を持ちたいと思わされた。

▼リア・パネル。右部のツマミは上から高域レベル・アジャスト、低域レベル・アジャスト、システム・ボリューム。その下は入力コネクターで、XLR/TRSフォーン/RCAピンの3種類が用意されている


サウンド&レコーディング・マガジン 2012年4月号より)

撮影/川村容一

KRK
RP-10-3
115,000円/ペア
▪周波数特性/31Hz〜20kHz▪最大出力音圧/113dB▪システム出力/140W(低域:80W、中域:30W、高域:30W)▪ウーファー/10インチ・アラミド・コーン▪スコーカー/4インチ・アラミド・コーン▪ツィーター/1インチ・ソフトドーム▪外形寸法/325(W)×540(H)×365(D)mm▪重量/21kg(1本)