ここ数年ロシア人クリエイターがドラムンベース・シーンをにぎわせていますが、ボップはその先駆的な存在。冷たい音色や空間処理、シンセ・ドラムやグリッチを多用したビートなど、エレクトロニカやポストダブステップの影響を受けつつ新しい方向性を示した新世代のアーティストです。
さて、本ライブラリーの内容を見ていきます。収録サンプルはすべて24ビット。ドラムの各打楽器やパーカッション、グリッチ、効果音など760種類の単発素材に加え、ドラムやパーカッション、シンセ系のループを240種類収め、総容量は約813MBに及びます。各種ソフト・サンプラーの専用パッチも収録している上、ループ素材はREX形式でも用意されているため、ドラムンベースのテンポ以外の楽曲に使う際も便利でしょう。
収録素材を聴いたところどれも高品質で、特にシンセ・パッド系のループやそのメロディにはボップの独創性を感じました。ドラムンベースらしいスペイシーさやスピード感のあるフレーズも多数収録されており、聴いているだけで1曲作れそうな、インスピレーションを与えてくれるサウンドです。また普段は2ミックスの音源でしか彼の作品を聴けないわけですが、シンセを多用したフレーズの構成やリバーブ/ディレイ/コーラスなどを巧みに使った処理など、音作りの細部が見られる点も素晴らしい。まずはボップのトラックを模倣してみたり、各素材を自身の作品にアクセントとして加えてみると良いでしょう。またエフェクトのかけ方のみを自作に生かすなど、さまざまな利用法があると思います。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2012年4月号より)