ミックスなどの多用途に対応するリアルタイム・アナライザー・ソフト

FLUX::Pure Analyzer Essential
フランスのソフトウェア・メーカーのFLUX::から画期的なリアルタイム・アナライザー、 PureAnalyzer Systemがリリースされました。その基幹となるPure Analyzer Essentialは、基本的にスタンドアローンのソフトですが、何と言ってもDAWにプラグインをインサートする感覚で、メイン・コンピューターと同じネットワーク上にあるノート・パソコンなどからも、本ソフトを使用できるのが魅力です。

DAWマシン以外のパソコンから
ネットワーク経由でメータリングが可能


まずは先述したノート・パソコンなどからメータリングを行う際の設定ですが、非常に簡単です。メイン・マシンで起動しているDAWのマスター・フェーダーに、本ソフトに含まれるプラグインSample Grabberをインサートし、同ソフトをインストールしたノート・パソコン上でFLUX:: Pure Analyzer Systemのネットワーク・ソースから、DAWを起動しているマシンを選択すれば、自動的にシンクロして解析する信号を伝達します。このSample Grabberプラグインは、VST/Audio Units/RTAS/TDM(AVID Venue用)に対応し、メイン・マシンのDAWの複数チャンネルはもちろん、別のマシンで動作するDAWにも上述のプラグインをインサートすれば、アナライザーを表示するマシン側で切り替えて表示できます。ネットワーク設定が自在なのも便利ですね。本ソフトの基本システムであるPure Analyzer Essentialは、使用する現場によって必要な測定プリセットのレイアウトが幾つも用意されていていて、その種類は、Studio、Mastering、Live、Film(サラウンド)などがあるほか、各種の拡張モジュールも追加できます。ちなみに今回はProTools環境でStudio Aというプリセット・レイアウトを使いました。それでは各測定表示の説明をしていきましょう。

スペアナやフェイズ・メーターから
RMSやラウドネスまで多彩な測定機能


Spectrum Analyzer


最もポピュラーなメーターですね。横軸を周波数、縦軸を電圧もしくは電力で表示し、"スペアナ"とも呼ばれます。ミックスやマスタリング作業後に全体の周波数特性(20Hz〜20kHz)を見るのに役立つほか、個々の楽器や歌にも使用できます。

Vector Scope


有線や無線の伝送系から受ける振幅ひずみや位相ひずみを表示するもので、一般的に"フェイズ・メーター"などと呼ばれています。縦軸がMONO(0°)、横軸がS(ステレオ感を調節/−180°から+180°)で、録音スタジオではスペアナよりもこちらを設置していることが多いです。正相と逆相を容易に認識できるので、ステレオ音源の位相チェックに威力を発揮します。

RMS Meter


電流の平均的な値を求める計算方法の略で、VUメーターに近い表示をするため、音圧計測に適しています。人間の聴感上に似たメーターでミックス全体の音圧感や各楽器などの音圧感をチェックするときに使います。初期設定でVUメーターへの変更も可能です。

True Peak Meter


これはDA変換部分を模倣し、計測されたシグナルをアップ・サンプリングすることで、アナログ・ドメインでの本当のピークを表示できます。これはミックスした後にマスタリングで一度DAコンバーターを通したときに起こるアナログ領域でのピークを把握できるため、とても重要なメーターだと思います。

Loudness Meter


あまり聞き慣れない名前ですが、現在、放送業界で注目される規格を表示するものです。ITUとEBUが規格したもので、人間の聴感に近い計算方式で作られています。例えば皆さんも"CMになった途端に急に音が大きくなる!"という経験があると思いますが、この問題を解決するために考えられた規格です。MAや放送関係の方々には重要になるでしょう。

Nebula Spatial Spectrogram


基本はスペクトログラムで縦軸が時間、横軸が周波数を表し、各ポイントを明るさや色で表示します。Nebula Spatial Spectrogramは、スペクトラム・アナライザーとベクトル・スコープの機能を併せ持っていて、縦軸が周波数、横軸がLchとRchに分かれているので、どの辺りの定位に、どの周波数で分布しているかを確認できます。サラウンド対応なので5.1chの作業にも役立つでしょう。

Metering History


先述したメーター(ピーク/RMS/Loudness)などをタイム・コードとシンクして記録、表示できるメーターです。例えば、Pro Toolsと同じ時間軸でメーターを記憶して、ミックスやマスタリングで、曲のどの辺りにピークがあるか一目で分かります。設定も特に必要なく自動的にシンクするので便利です。


実際に使ってみて、非常に役に立つソフトだと思いました。従来の測定表示プラグインに比べて精度も高いですし、ネットワーク経由で使えるというのは、Pro Toolsを立ち上げているコンピューターの負荷を軽減できるという点でもメリットを感じました。今までもメーターを使って作業していましたが、さらに本ソフトを使えば、録音やミックス、マスタリングをより良いものにできると実感することができました。

サウンド&レコーディング・マガジン 2012年2月号より)
FLUX::
Pure Analyzer Essential
45,675円
▪Mac/Mac OS Ⅹ 10.5/10.6/10.7、2GHz以上のINTEL Core 2 Duo CPU(INTEL Core i5推奨)、Open GL 2.0以上、Core Audio対応、iLok用USB端子▪Windows/Windows XP/Vista/7(32/64ビット対応)、INTEL Core 2 Duo CPU(INTEL Corei5推奨)、Open GL 2.0以上、ASIO対応、iLok用USB端子