高品位な256種類のプログラムを備えたハーフラック型エフェクター

ALESISNanoverb 2
ALESIS Nanoverbは低価格でありながら、高品質なサウンドと簡単な操作で瞬時に自分が欲しいエフェクトを得られるという点で、いまだに多くのミュージシャンやライブ・ハウスなどから指示されているマルチエフェクターだ。今回は新しくなったNanoverb 2を検証してみよう。

使用頻度の高いリバーブは8種類用意
シンプルから派手な音作りまでできる


本機はコンパクトでありながらリバーブだけでなく、ボーカルやギター、キーボードにも効果的なディレイやコーラス、フランジャー、トレモロなどの空間系エフェクトを256種類(16エフェクトにそれぞれ16のプログラムを用意)備え、それらを直感的に呼び出せるデジタル・エフェクターだ。外観はハーフラック型で、リア・パネルにはライン・インL/R(フォーン)とメイン・アウトL/R(フォーン)、そしてエフェクト・バイパス用のフット・スイッチ端子(フォーン)も装備。フロント・パネルには左から過大なレベルが入力されると点灯するLED、INPUTノブ(ライン・レベル)、原音とエフェクト音のバランスを調整するMIXノブ、出力レベルを調整するOUTPUTノブ、16のプリセットから使用するエフェクトの種類を選択するセレクター・スイッチ、その選択したエフェクトに対して16の効果が選べるプログラム・スイッチが並ぶ。では、エフェクトのサウンドとその使用感を検証してみよう。使用頻度の高いリバーブは全部で8種類用意されている。まずはホール・リバーブから。これは3つのプリセットから構成されており、HALLS 1はアコースティック・スペースの残響音で、低域が整理されていて非常に使いやすいリバーブだ。プログラム・スイッチを右に回すとリバーブ・タイムが長くなる(0.7〜2.9s)。16段階式にプログラムされたリバーブ・タイムは微調整ができないが、それほど気にならなかった。またプリディレイは各プログラム54msに固定されている。HALLS 2はコンサート・ホールのリバーブで、3.6〜6.1sとあらかじめリバーブ・タイムは長めに設定されていて派手な残響音だ。アコギのアルペジオや空間系のシンセ・サウンドと相性が良かった。HALLS 3はプリディレイの無いスタンダードなミディアム・ホールのリバーブでクセが無く、リバーブ・タイムは0.7〜2.9s。ボーカルをはじめ何にでも使えるリバーブだ。続いては、オルガンやエレキギターに最適なスプリング・リバーブ系だが、個人的には派手なプレート・リバーブという感じで、あまりスプリングっぽくは感じなかった。ただ"スプリング"ということを意識せずサウンドを聴くとSPRING 1では"ザクッ"とギターを弾いた後にプリディレイから立ち上がるさわやかな伸びのサウンドは心地良く、場合によっては本物のギター・アンプに搭載されたリバーブよりも有効かも......と思えるもの。SPRING 2はSPRING 1の派手なバージョンで、3.6〜6.1sとリバーブ・タイムもかなり長めでシューゲイザー的なギター・サウンドを作るのにはかなり向いているだろう。リバーブで少し戸惑ったのが、TAPEというエフェクト。取扱説明書にもテープ・ディレイのシミュレートと記載されているが、ハイをカットした音色の短いピンポン・ディレイに、プリディレイが長いリバーブをミックスしたようなサウンド。TAPEという根拠がよく分からない音色だった。PLATE1は非常に使いやすく整理された一般的なクセの無いリバーブで、本製品では一番シンプルなサウンドだ。アコギのストロークでの奏法やボーカルにも効果的だろう。PLATE 2は以上のリバーブ・プログラムにならって長めのリバーブ・タイムと派手なサウンドの作り方がされている。

デジタル臭くないCHORUSのサウンド
リバーブとの組み合わせが特に秀逸


ここから触れていくエフェクトはエレキギター、キーボードに特化していると言えるだろう。TREMOLOは左右に音がパンニングするステレオ・タイプでプログラム・スイッチを右に回すとスピードが速くなる。エフェクトの深さはMIXノブで調整する。CHORUSは印象がかなり良い。デジタル臭くなく、これまで良いと言われている往年のペダル系コーラスのシミュレートがされている。アンディ・サマーズのような"シャリーン"とした感じやエイドリアン・ブリューのようなコッテリしたギター・サウンドにも近しい心地の良い音色だ。デジタルだとおとなしくなりがちなフランジャーも、このFLANGEはプログラムの仕上がりが非常に良い。こちらもかなりアナログライクなサウンドで、フランジャー効果のキモとも言えるフィードバックのセッティングが非常に良くできており、減衰音に絡む金属音がとても良い。そしてDELAY、こちらは少々厳しいといった印象......30〜650msのディレイ・タイムを16個のプログラムのみで調整するのはやはり無理がある気がした。打ち込みなど、テンポの決まった楽曲でディレイ・タイムを合わすことも多いので、これだけはもう少し詳細に調整できる仕様にしてほしいところだ。また、DELAY、CHORUS、FLANGEはそれぞれリバーブと組み合わせたプログラムが用意されていて、特にCHORUS/RVBとFLANGE/RVBのコンビネーションはとても心地良い。リバーブもそんなに派手ではなくモジュレーション・エフェクトを引き立たせてから軽めのルーム・リバーブがかかっていて、アルペジオでのギター・プレイなどはいつまでも弾いていたくなる印象。ROTARYというプログラムはロータリー・スピーカーのシミュレートだ。エレキギターではパンニングとフランジャーの合わせ技のようなサウンドに感じるが、ひずませたオルガンではロータリー・スピーカーに近いサウンドに感じる。このプログラムも曲中に回転スピーカーのスピードを高低に調整するドライブ感が出せないのが少々残念。


今回はエレキギターとアコギをメインにチェックしたが、特にプリアンプやプロセッサーを介したアコギとのコンビネーションはかなり印象が良かった。空間系のエフェクターとして申し分無いコスト・パフォーマンスで、モジュレーション・エフェクトに個性がある。ライブや宅録にはもちろん、Hi-Z端子は無いが特にギタリストやキーボードなどのミュージシャンにお薦めしたい製品だ。

▼リア・パネル。左から電源コネクター(9V)、バイパスのフット・スイッチ端子(フォーン)、メイン・アウトL/R(フォーン)、ライン・インL/R(フォーン)




サウンド&レコーディング・マガジン 2012年2月号より)

撮影/川村容一

ALESIS
Nanoverb 2
オープン・プライス (市場予想価格/ 13,440円前後)
▪周波数特性/20Hz〜20kHz▪外形寸法/197(W)×44(H)×131(D)mm▪重量/760g