1Uの剛性感あるボディに
コンプ/リミッター/ゲートを搭載
今回レビューする3632 Compressorは2ch仕様。コンプ、リミッターに加えエキスパンダー/ゲートも搭載したダイナミクス・プロセッサーです。ALESIS伝統のグレーでカラーリングが施されたフロント・パネルを見ると、各機能は黒い文字、数値などの表示は白文字という分かりやすいデザインになっています。またノブ自体も色分けがなされており、スレッショルドとアウトプット・ゲインが大きな黒いノブ、レシオ/アタック/リリースなどコントロール系は小さめの白いノブとなっていて、使いやすいデザインだと思います。各スイッチは自照式で、押し間違いが防げて便利でしょう。パネル上部にはLEDメーターがあり、スレッショルド、ゲイン・リダクション、インプット、アウトプット、リミッターそれぞれの動作状況とレベルを分かりやすく表示。耳で聴いたときの音の変化を視覚的にも確認できます。
リア・パネルには2ch分の入出力がありますがフロント・パネルと同じ位置を保つよう右側にCHANNEL 1、左側にCHANNEL 2が配置されています。それぞれの入出力はTRSフォーンとXLRの両方に対応していますが、両者はパラになっており、優先順位は無いようです。またアンバランスのフォーンを用いても問題ないようです。この入出力には-10dBV/+4dBuの切り替えスイッチがあるので、使用する機材に合わせて設定してください。各チャンネルにコンプのサイド・チェイン用にEQなどをインサートできるSIDECHAIN SEND/RETURNがあります。これはTRSフォーンでイン/アウトできるようになっており、インサート用ケーブルを必要としないので、ケーブルを手に入れやすく、使いやすいでしょう。奥行きは約200mmあり、エフェクター・ラックに入れたときもリア・パネルに後ろから手が届く仕様で、持ち出す際も便利。重量は約3kgとずっしり重く、しっかりとした作りです。
レシオの設定で音色を調整
AUTOをオンにすると派手な効き味に
ではコンプから使ってみましょう。手持ちのマルチトラック・データや2ミックスを通してみたところ、サウンドにVCAコンプらしいニュアンスが感じられます。レシオ設定に特徴があるようで、10:1以下のときにニーがソフトとハードの中間のような音、10:1以上はハード・ニー的な音色になります。マニュアルで操作する場合は、アタックが9~10時の間ぐらい、リリースは7~8時ぐらいの間でVCAらしいスピード感のあるかかり方になり、レシオの設定で好みの音色が得られるでしょう。またアタック/リリースともオートになるAUTOスイッチがあり、オンにするとDBX 160Aのようなロックっぽい派手なかかり方になります。この状態でもレシオで音色コントロールが効くのでかなりお勧めです。
LEDメーターはスレッショルド・レベル付近のボリューム変化が分かりやすく表示され、使いやすいです。もう一つSMARTというスイッチがありますが、ニーがソフトになるので、オンにすればコンプの効き始めが柔らかくなります。またSC FILTERをオンにすると、聴感上コンプから低域をバイパスしたような効果が得られます。低域に強くコンプをかけたくないときに適用するといいでしょう。本機はレシオの設定とこれらのスイッチで幅広い音作りが可能なので、リズム系からボーカルまでオールマイティに対応できると思います。
サイド・チェインを活用すれば
ディエッシングやダッキングも可能
パネル左にあるエキスパンダー/ゲートは、スレッショルド/レシオのノブで不要な音をカットしたり、音を歯切れ良くしたいときに有効です。レシオを低めに設定してスレッショルドを調整すれば、自然にかかるポイントがあるはずです。リリースが比較的早いので、使いやすいでしょう。右のリミッターはスレッショルドのみ。こちらはリリースが比較的長めなので、不自然な感じにならないよう、かけ過ぎには注意が必要です。また、リア・パネルのSIDECHAIN SEND/RETURNに別途EQをつないでSC EXTERNALスイッチをオンにすれば、EQの調整次第でディエッサーやテクノでよく使われるダッキングも可能になります。
初心者の方はぜひ一度ハードウェアのコンプをいじり倒して、音の変化を楽しんでみるといいと思います。そうすればプラグイン・コンプを使う際の良い勉強になるでしょう。本機はダイナミクス系のコントロールはほぼ網羅していますし、価格も手ごろなので、最初の1台としていろいろな場面で使えます。まずはコンプのAUTOをオンにして、スレッショルドとレシオのコントロールとSMARTスイッチのオン/オフでボリュームや音色の変化を体験することをお勧めします。その後にマニュアルでの操作を突き詰めていけば、音楽制作の幅が広がるでしょう。