
XY/AB可動式コンデンサー・マイク
外部マイクによるMS方式録音にも対応
早速サイズから。70(W)× 35(H)× 155(D)mmと少し大きく、厚みもありますが、その割に重量は231g(電池含まず)で、軽く感じます。可動式マイクは金属製のフレームで守られた頑丈な作りです。左手に持つと親指側にインプット・ボリュームがあり、右手でメイン・パネルを操作できるよう、各スイッチ類を機能的に配置しています。インプット部分ですが、本体の頭部に搭載した可動式のコンデンサー・マイクはXY/ABの2種類の角度・方式が選べます。本体マイク以外に、XLR/フォーン・コンボ入力を使うこともでき、外部マイクはファンタム電源(48V)の供給も可能。単一指向性/双指向性の組み合わせによるMS方式の録音にも適応します。しかもレコーディング時にMSデコード処理をして記録する方法と、Mid/Sideの音をそのまま収めて本機での再生時にMSデコード処理をする方法を選択可能。ライン入力は最大+4dBuにも対応し、録音フォーマットはWAV/BWFがそれぞれ44.1/48/96kHz、16/24ビットとなり、MP3フォーマットは32kbps〜320kbpsのビット・レートに対応します。何と言っても本機のメインの機能は最大4trの録音が可能なこと。幾つかのモードがあります。"デュアル・レコーディング・モード"では、設定した録音レベルと、それに対して低いレベル(−6dB〜−12dB)の2種類のステレオ録音ができます。"4chレコーディング"は本体/外部の入力をセパレートに録音できるモードで、歌やギター、キーボードなどを別々に録音することが可能。"オーバー・ダビング・モード"は一般的なマルチ録音に対応し、1chごとの録音から、カラオケの歌入れ作業まで、それぞれの定位やバランスのコントロールも可能です。録音に関する機能としては、ローカット・フィルター(40/80/120Hz)やリミッター機能は当然のこと、ピークを検出して自動的に録音レベルを設定するピーク・リダクションや、ある音量から録音開始するオートRECなど、至れり尽くせりな機能を搭載。それ以外にも、録音/再生時にリバーブを付加できるほか、再生スピードを可変するVSA機能(音程はそのまま)、再生音のイコライザー調整なども可能で、まだまだ書き切れない機能が満載です。
空気感をとらえるナチュラルな特性
アンサンブル録りにも適する4chモード
さて実際にスタジオで録音してテストしてみました。ドラム/グランド・ピアノ/アコースティック・ギターをそれぞれ24ビット/48kHzで録音。いずれもXY/ABで録音しましたが、レンジが広くサウンドもとてもナチュラルで、空気感までも録れる自然な感じでした。比較的近距離に設置して録音したせいもあり、自然な広がり感という意味ではXYでの録音が好感触でした。XLRのインプットも使って、内蔵&外部マイクの計4本での録音にもトライ。内蔵マイクをABで遠めから狙い、外部マイクを少し近めで録音。4本のバランスをコントロールすると左右/奥行き感が出てきたので、アンサンブルの録音にはちょうどいい感じでした。このセッティングはライブでの臨場感ある録音でも使えそうでした。
ハンディ・レコーダーはいっとき小型化が主流の時期もありましたが、ファイル・フォーマットの設定や録音モード/レベルの調節に、やはりある程度大きなサイズの液晶が必要です。加えてSDカードの大容量化と低価格化による録音時間がの拡張で、バッテリー容積もある程度必要です。本機は外部入力も含めて、よくぞこのサイズを実現したなというのが正直な感想です。
▼本体左側。左からライン・アウト(ステレオ・ミニ)、拡張入力切り替えスイッチ(ライン/マイク/マイク&ファンタム)、ホールド・スイッチ、インプット・レベル・スイッチ

▼本体右側。左からUSB端子、メディア・スロット。ちなみに本機は単三電池3本で駆動する

▼本体底面。マイク/ライン入力×2(TRS/XLRキャノン)、リモート・イン(リモコンは別売り)

(サウンド&レコーディング・マガジン 2011年12月号より)