簡単に設置できる高出力なポータブル2ウェイ・パワード・スピーカー

JBL PROFESSIONALEon 515XT
夏の怒涛(どとう)の現場も終了し一段落着くかと思いきや、秋のイベント・シーズンに突入し我々は多忙な時期です。しかし、忙しいからと言って手を抜くわけにもいきません。信用というものは、一つ一つの仕事を丁寧にやってこそつなげていけるものですから......とは言え、必ずしもPAに有利な現場ばかりとは限らないのが現状。それではどうやって仕事をしていけば良いのでしょう? 本稿では、そんな思いに応えてくれる"手を煩わせないパートナー"をご紹介します。

15.4kg/1本の軽量設計
内蔵パワー・アンプは625Wと高出力


PAには"スピーカーの鳴りを調整する"という作業があり、外部のEQで出音の全周波数がフラットに近くなるようチューニングしなければなりません。このプロセスがあいまいだと、入力した音を幾らミキサーで整えようとしても意図したサウンドがスピーカーから出力されず、そのスピーカーを頼りに入力全体をミックスした日にはミキサーのセッティングがひどいものになってしまいます。今回テストするJBL PROFESSIONAL Eon 515XTは、クリアな音質と均一な周波数バランスを備えた2ウェイ・パワード・スピーカーとのことで、良質なPAに一役買ってくれそうです。本機のサイズは438(W)×685(H)×366(D)mmで、重量は15.4kg/1本となっていますが、サイズの割にかなり軽く仕上げられていて驚きです。内蔵パワー・アンプは、同社のスピーカー・ドライバーにベストな組み合わせとされるAMCRONの最新製品。ひずみの低さと低域525W/高域100Wという高出力、そして電力効率の良さを特徴とするクラスDアンプがバイアンプ方式で駆動します。低域ドライバーには同社ライン・アレイのフラッグシップ・シリーズVertecと同様、永久磁石を2つのボイス・コイルで駆動させることで存在感のある低音再生を実現するという独自方式="ディファレンシャル・ドライブ"を採用。ネオジム磁石を備えた高域ドライバーは、軽量でありながら高い出力を生み出します。

大きめの音量にもひずみにくい
中低域/高域共に澄んだ音質


今回はロックなテイストも持つスムーズ・ジャズ系バンドのワンマン・ライブで、ステージ・モニターとして使用します。ドラム・セットは3タムとツイン・キックを含んでおり、激しいプレイも見られそうです。Eon 515XTはそんなステージの中、一体どんな音を聴かせてくれるのでしょうか?本機のリア・パネルには、ライン・イン(TRSフォーン)×2やマイク/ライン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)×1、ライン・アウト(XLR)×1といった入出力端子が備えられており、各入力をミックスして出力できます。また、マイク/ライン・インからの入力についてはダイレクト出力もできるため、スピーカーの増設やほかのPAシステムとの接続にも対応可能です。まずはミキサーの出力を、本機のコンボ端子にXLRで接続。Eon 515XTには出力の低域と高域を調整するためのEQが搭載されていますが、ここではツマミをセンターに合わせフラットな状態にします。次に、マイクの音声信号をミキサーからユニティ・ゲインで出力し、本機の入力ゲインを上げていきます。このクラスのスピーカーを今回と同様の環境で使うと、入力ゲイン・ツマミの位置は大抵3時〜最大で良い具合になります。しかし、本機の場合は何と12時の位置で十分な音量で鳴ってくれる! しかも、この手のスピーカーにある程度の音量を求めるとひずみが生じてしまいがちですが、Eon 515XTは余裕。まだまだボリュームが上がりそうな勢いです。パワード・スピーカーにありがちな中低域の曇り/もたつきが無い上、2kHz辺りの高域がこれだけしっかりと出ていながらハウリング的な鳴りも聴こえません。直線的かつヌケの良い音質で、音圧にも満足できました。フラットな状態でこれだけのサウンドを聴かせてくれる本機ですが、先述したEQで、試しに少しばかり低域をカットしてみました。すると、まさにチューニングされた後のVertecが床を鳴らしているかのような感覚です!Eon 515XTは、"パワード=重い"というイメージを払拭してくれました。価格もリーズナブルな上、早く簡単/確実にセッティングできて音も良い。発売タイミングが合えば確実にチョイスしたのにな〜と、自身が働いているライブ・ハウスの改装を眺めながら思う今日このごろです。 201111_Eon515XT_01.jpg▲背面のコントロール・パネルには左から、ライン・イン(TRSフォーン)×2、マイク/ライン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)×1、ライン・アウト(XLR)といった端子群が並ぶ 
JBL PROFESSIONAL
Eon 515XT
115,500円/1本
▪周波数特性/39Hz〜20kHz(−10dB)▪最大音圧レベル/132dBSPL▪クロスオーバー/1.7kHz▪ノイズ・レベル/10dB(A)/20dB(CCIR)▪外形寸法/438(W)×685(H)×366(D)mm▪重量/15.4kg