サイズ違いで2機種登場した人気パワード・スピーカーの新シリーズ

M-AUDIOBX8 D2
DAW周辺機器を数多くリリースするM-AUDIO。モニター・スピーカーでもStudiophile BX5A Deluxeなど人気の高い製品を数多く手掛けていることで知られますが、そのBXシリーズに新モデルBX8 D2が登場。今回は、同時発売のBX5 D2も併せ試してみましょう。

リスニング・ポイントが即座に分かる
フロント・パネルの青色LED


BX8 D2は、2ウェイ・タイプで合計130Wのパワード・スピーカー。見た目の印象としては、重厚感のある丸みを帯びたエンクロージャー、ケブラー素材を使用しゴツい低周波ドライバー、さらにシルク素材で肌触りも柔らかく、未来的なイメージの高周波ドーム......と、高級感あふれる作り。筆者が以前Studiophile BX5A Deluxeを使っていたこともあり、個人的になじみがあり落ち着くルックスです。大きさは304(W)×381(H)×254(D)mmと筆者現在が使用しているYAMAHA NS-10Mと大体同じサイズで、並べると高さがそろっていい感じです。また特徴的なのがフロントにあるブルーのLEDライト。スピーカーに向かって両方が光って見える位置に座ると、ちょうどスイート・スポットになる設計です。リアには直径5.5cmほどのバスレフ・ポートとボリュームつまみが付き、TRSフォーンとXLRの2タイプでの入力にも対応します。

全体の印象は丸く柔らかく
1970年代の音源も今風に感じる出音


まずはAPPLE iTunesの曲を再生してテスト開始。ちなみに試聴環境としては、モニター・セレクターにSPL MTC2381、オーディオI/OにAVID 192 I/O、DAコンバーターにAPOGEE Rosetta800と筆者が普段使用している機材を使用しています。最初に生音のドラムが際立つヒップホップを試聴。印象として低域がワイドでエッジが無く柔らかい感じ。ギターの音も丸みがありました。少し芯が引っ込んで物足りない感じがしましたが、しばらく聴いていると低域の幅の広さが心地良くなり、それに包まれて物足りなさは感じなくなりました。エイジングによってさらに良くなると思われます。しかも高域が柔らかいため、長く聴いても耳に負担が少ない音だと思いました。続いて、音が比較的硬めのテクノを再生。エッジの効いたエレクトロでも高域が柔らかく、さらに低域に包まれ心地良い出音。キックのアタックもしっかりあり、ディレイの効いたシンセの音も広がりが増して楽しく聴けました。さらに1970年代ロックを試聴。選んだ曲は音のレンジが比較的狭く、音圧も突っ込んでなくすき間があるものでしたが、BX8 D2では最近作られた曲に聴こえるぐらい音の幅が広がり、つややかですごく新鮮な感じで聴くことができました。NS-10Mと比べると、本機はワイドで豊かな低域が特徴であることが分かります。ミックスやマスタリング時にモニターを切り替えて使う際、できるだけ特性が違う機種を併用することが重要なため、メイン・モニターに別の機種をもう1本加えるような場合でも良い役割を果たしそうです。今度は、本機でモニターしながら実際にミックスをしてみることに。筆者は普段、音の配置を把握するためにある程度リバーブやディレイなどで空間処理を施してから元の素材をコンプやEQで加工し、それからさらに空間処理に戻る......という工程を繰り返すのですが、BX8 D2では原音がワイドに聴こえるため、最初に広がりを付けることなく素材そのものに集中することができ、かなり良い段階まで仕上げ、空間系の処理を最後にまとめて行うことができました。NS-10Mのみでミックスをしていると、時々やたら広がりをつけてしまう傾向がありましたが、本機でモニターすることでその問題は解決しそうです。また今回は、同じく新発売のBX5 D2(オープン・プライス/市場予想価格27,300円前後/ペア)も試してみました。こちらはBX8 D2と同じデザインですが、そのままコンパクトにした感じです。大きさの分、低域の広がりが狭くなりましたが、このサイズの割に満足のいく低域が出る上に、高域の柔らかさも感じられました。広がりが無い分凝縮された感じもしますが、BX8 D2よりも芯があるようにも聴こえ、人によってはBX5 D2の方が好きだと言う方もいるかもしれません。大きさ的にも自宅録音用にも最適だと思います。ここまでの通り、BX8 D2は1970年代〜現代の曲まで幅広くカバーし、さらに耳が疲れにくいのが特徴。リスニングにもってこいな上、この特徴を生かし、ミックス時のモニターとしてももちろん良い仕事をしてくれると思います。 201111_BX8D2_01.jpg

▲リア・パネルには、ボリュームつまみと二系統のアナログ入力(XLR/フォーン)が装備される


 
M-AUDIO
BX8 D2
オープン・プライス (市場予想価格/46,200円前後/ペア)
▪周波数特性/38Hz〜22kHz▪クロスオーバー周波数/2.2kHz▪アンプ・パワー/合計130W▪外形寸法/304(W)×381(H)×254(D)mm▪重量/11.97kg(1本)