新搭載のリボン型インターフェース
アイコンの表示で各機能を視覚的に把握
もしかしたら"本バージョンから初めてSibeliusを使います"という人の方が操作の飲み込みが早いかもしれませんね。筆者もそうですけど、旧ユーザーはどうしても前バージョンと比較しながら覚えようとしてしまいますので......。とは言っても前バージョンのショートカットはすべて有効なのでご心配無く(ユーザーがオリジナルのショートカットを作成しやすいのもSibeliusの特徴)。それから"右クリック"(Macの場合はcontrol+クリック)はもう必須です。最近のDAWで右クリックに対応していない製品は少ないと思いますし、Sibeliusでもあちこちで右クリックを使用するので、もしマウスの設定で右クリックを有効にしていない読者は自分の設定を再確認しましょう。前置きが長くなってしまいましたが、具体的にどう変わったのか見ていきます。まず一番大きな変更で目に飛び込んでくるのが"リボン"と呼ばれるタブを使用した切り替え型のインターフェース部分(画面①)。これを見た前バージョンのSibelius 6ユーザーたちは少し驚くかもしれません。と言うのも操作を表すアイコンが付いて各機能が視覚的に把握できるようになっているからです。筆者は主だったショートカットが既に体になじんでいるので最初はちょっと違和感がありましたが、使っているうちに慣れてきました。このリボンは意外と場所を取るのでラップトップでは邪魔かな......と一瞬心配になるかもしれませんが、ちゃんとリボンを小さくする機能もあるので心配ありません。 それから後述するキーボード・ショートカットからアクセスする際は、視覚的にこのGUIの方が見やすいんです。個人的にはブラスのアレンジをするときによく使っていたエクスプロード(拡散)や、オーケストレーションしたアレンジをピアノ譜に戻すときに便利だった、リダクション(縮小)がリボン上に集約されたことは好印象でした。エクスプロードは4声で書いたトランペットのセクションや、合唱などのハーモニーをパート譜にするために1声ずつに自動でしてくれる機能です。
キーボード・ショートカットは
作業効率を格段にアップさせる
次に、本バージョンから新しい使い方として、キーボード・ショートカットをリレー(指定した順序で)しながら目的の編集にたどり着くという機能も改良されました。DAWの操作でショートカットを使うと作業効率が上がりますが、Sibelius 7のキーボード・ショートカットを使うと、リボン上の機能については視覚的に把握しながらすべてキーボードだけで編集可能になります。ここでキーボード・ショートカットの流れを追ってみましょう。基本はcontrol(Mac)またはAlt(Windows)でスタート。例として最初のドの音に6度上の"ラ"の音を追加する操作をマウスを使わずにやってみましょう。筆者のMac環境(OS 10.6.8)で説明すると、まずキーボードのcontrolを押すとリボン上の各タブに小さなアルファベットが表れます(画面②)。音符に関する編集をしたいので"I"を押すと音程の項目の個所に"IA(Interval Aboveの略)"が見えるのでIAと押し(画面③)、6度上の音程を入力したいのでテンキーの6を押します(画面④)。これでマウスを一切使わずに音程の編集ができました(画面⑤)。このキーボード・アクセスを使うと作業効率が格段に上がります。
リボン内の"インストゥルメント"の機能では"楽器の編集"にダイレクトにアクセスすることが可能です。新しい"アンサンブル"というくくり方で自分が頻繁に使う楽器の構成をあらかじめ登録できるようになりました。階層式になっていますが、"ファミリー"に名前を付けて楽器を登録しておけば、自分のバンドの譜面の用意にいちいち楽器を呼び出す必要がありません(画面⑥)。作業環境に合わせて、うまくカスタマイズすると時間の節約に有効でしょう。また、Sibelius 7はさまざまなアレンジに対応したテンプレートを備えています。ただし、スコアやパート譜面が必須のジャンルは、やはりクラシック系が中心となっているため性質的に仕方ありませんが、ロック系のテンプレートは手薄な印象です。
現場で役立つPDF書き出し機能の改良
CPU負荷が確認できるミキサーも重宝
楽譜のプリント関連で、日々の現場で特にうれしい追加の機能がPDFの書き出しの改善。レコーディング前にミュージシャンにパート譜をPDFにして、E-Mailで送らなくてはならない場合もありますね。レコーディング・スタジオにはもちろんプリントして持参しますが、現場でパート譜が足りない!といったトラブルに対処するためにPDFも常に持参しています。前バージョンの場合は各パートごとにPDFに書き出していたので、バックアップのためのPDF出力に意外と時間を取られていました。しかし今回のバージョンでは、全パートのPDFを一発で書き出すことが可能です。前バージョンでは印刷のウィンドウにPDFの書き出し設定がありましたが、本バージョンからはエクスポート(ほかにスタンダードMIDIファイルや、Sibelius 5と互換性を持ったファイルの作成)という項目にまとめられています(画面⑦)。この辺りの変更もSibelius 6のユーザーは戸惑うかもしれないので参考にしてください。 また、書き出し方もスコアとパート譜を1つのPDFとして書き出す、またはスコア&各パートを別々のPDFとして書き出す、など本当に"現場が分かっているな〜"という改良が多いですね。また、オーケストラ楽器が中心のサウンド・ライブラリーも容量38GB(前バージョンに同梱されていたSibelius Sounds Essentialsが3.5GBだったので約10倍!)。それに伴ってミキサー画面もより最近のDAW的な感覚で使えるようになりました。ちなみに各楽器のパンはテンプレート内で既に設定されてあります。トランペットが少し右側で、ホルンが少し左側のような一般的なオーケストラの配置に従って、パンが振られていますから手間が要りません。それから画面左手でリアルタイムのCPU負荷が確認できるようになったのは個人的にうれしいです(画面⑧)。実際はかなり大編成にならない限りそれほど心配ないのですが、気分的に負荷が小さいと目に見えるのはかなり安心。それに筆者の場合、Sibeliusの裏でAVID Pro Toolsを同時に立ち上げることが多く、負荷がかからないのは何よりです。 さて、最後は気になる方も多いでしょう64ビット対応についてです。筆者の作業環境ではメイン・マシンのDAWにはPro Tools 9.05を使用していますので、サード・パーティのプラグインの絡みもあっていまだにMac OS 10.7にはアップグレードしていません。その代わりMacBook Air 11インチのOSは既に10.7に上げてSibelius 7を使っています。MacBook Airでそれほど大きい編成を再生させることはありませんが、動作としては問題なく動いています。Sibelius 7が64ビットに対応したことで、占有メモリーが解放されて、より大きいライブラリーが使えるのはうれしいですね。早くメイン・マシンも10.7にアップできれば搭載メモリーをより効率的に使えるようになるので、Pro Tools&Sibeliusを常用している僕にとっては楽しみです。