高出力が要求されるステージで活躍するPA用パワード・スピーカー

ELECTRO-VOICEELX115P
PA市場向けのスピーカーを数多く発表してきたELECTRO-VOICE。大型PAスピーカー・システムのみならず、SX200や後継機のSX300などの12インチ2ウェイ・モデルも世界的にヒットしました。そんな同社からPAシーンへ向けたスピーカー、Live Xシリーズが発売されました。

ストリート・ライブからプロの現場まで
さまざまなシーンを意識した作り


Live Xシリーズはパワード・タイプが3種類、パッシブ・タイプが4種類の計7ラインナップ。パワード・モデルのELX112P(86,100円/1本)は1.5インチのチタン製ダイアフラム・コンプレッション・ドライバーに、12インチのシングル・ウーファーといった構成の2ウェイ・フルレンジ型。今回テストするのは上位モデルのELX115Pで、前述の1.5インチ・コンプレッション・ドライバーに加えて15インチのシングル・ウーファーを搭載しています。スピーカーに内蔵されたアンプは1,000WクラスDの軽量タイプ。低域の再生能力に優れており、最大音圧は132dBとなります。バイアンプ設計で24dB/octクロスオーバー+トランスデューサー保護回路の搭載により、過大入力からスピーカーを守ります。フロント下部に2つの大きなダクトを採用し、低域の圧縮を低減することで、狭い空間での低域特性の暴れを改善します。なお、この2機種はメイン・スピーカーとしてはもちろん、ウェッジ・モニターにもなります。


さらに18インチのシングル・サブウーファーであるELX118P(108,150円/1本)もラインナップ。ELX112PやELX115Pとの組み合わせで最適な性能が発揮され、低域の迫力を増幅する効果が得られます。またパッシブ・モデルに関しては、パワード・モデルの3機種と同じスピーカー構成のモデルに加え、15インチのダブル・ウーファー搭載のELX215(79,800円/1本)が追加されます。ELX112PとELX115Pは35mmのスタンド・マウント・ソケットが付属し、また別売のスピーカー・スタンドASP-1(ポール部分のみ)を使用すれば、ELX118Pの上にELX115Pなどを設置することが可能。


指向性に関しては、90(° 水平方向)×45(° 垂直方向)のカバレッジ・パターンの高域ホーンを装備。奥行きが確保できない場所での使用時もパフォーマンスを十分発揮できるでしょう。


リア・パネルに備える各入力端子は、2系統装備されており、INPUT1はXLR/フォーン・コンボと1系統のRCAピン入力を装備。INPUT2のXLR/フォーン・コンボはマイク/ライン入力の切り替えが可能で、2つの入力それぞれにゲイン・ツマミが装備されています。つまりINPUT1とINPUT2をスピーカー内でミックスして出力することが可能となっています。例えばINPUT1のRCAピンへはAPPLE iPod、INPUT2はマイクを入力して使うような場合、外部のミキサーを使うことなく本機だけで対応できるのです。リンク出力からは送りたいソースを選択して、リンクするスピーカーに信号を送ることができるので、少ないケーブルで接続できるのも魅力。また、ボリューム・ツマミ下にあるEQのON/OFFスイッチは用途に合わせて切り替えが可能で、ONにすると低域と高域が強調されたEQがかかります。


中低域が気持ちの良いサウンド
音色が変えられるWITH SUBモード


ではELX115Pの音を聴いてみます。まずはCDを鳴らしてみると、15インチのふくよかな低域が感じられます。かといってブーミーさも無く、つながりの良い音です。音量を上げてみても、スピーカーの重量から心配された箱が共振するような音の濁りもありません。クリップするまで音量を上げましたが、ダッキングするようなリミッティングもありませんでした。パワー感を残しつつ滑らかに音量を抑えるので、気持ち良く聴けます。


次はマイクで収めた声をプリアンプ経由でライン入力してチェックしてみます。ゲインを徐々に上げていきましたが、フィードバックしない音色にチューニングされています。声を張ってみるとELECTRO-VOICEらしい中低域が感じられました。続いてINPUT2をマイク入力に切り替えて、直接マイクを挿して鳴らしてみると音色が変わりました。マイクプリの特性だと思いますが、マイクの素直な音色がそのまま再生されます。先ほどライン入力で試したときの音量まで上げるとフィードバックしますが、中域が前に出てくるイメージなので、気になる場合はEQスイッチを入れるとラインで入力した際の音色に近づきます。これは2〜3kHzを中心に緩やかな帯域幅で3dBくらいを抑えてくれる印象でした。また、フル・レンジ/サブウーファー接続選択スイッチを"WITH SUB"にすると100Hz以下をカットするハイパス・フィルターがかかるのですが、うまく使うことによってここでも音色を変えることができます。このように、音色に関しては安価なグライコよりもスピーカー側のフィルターを使った方が位相の乱れを最小限に抑えてうまく制御できるといった印象です。


ここまでのパフォーマンスを発揮するモデルが10万円を切ってきたのには純粋に驚きます。


▼リア・パネル。左側上からロゴ・ライト・スイッチ、リンク出力(XLR)、INPUT SELECTスイッチ、その右は出力レベル・ツマミ、EQスイッチ、フルレンジ/サブウーファー接続選択スイッチ。その下はINPUT1の入力端子(XLR/フォーン・コンボ、RCAピン×2)とゲイン・ツマミ、INPUT2の入力端子(XLR/フォーン・コンボ)とゲイン・ツマミ




サウンド&レコーディング・マガジン 2011年10月号より)


撮影/川村容一


ELECTRO-VOICE
ELX115P
99,750円(1本)
▪周波数特性/56Hz〜18kHz(−3dB)▪最大音圧レベル/134dB SPL▪クロスオーバー周波数/1.7kHz▪外形寸法/432(W)×708(H)×382(D)mm▪重量/24.3kg(1本)