解像度と定位感に優れたSHUREのモニター・ヘッドフォン最上位機

SHURESRH940
大型家電量販店に行くと買い物以外にいつも行く場所があり、楽しみにしていることがあります。最近はヘッドフォン市場が結構盛り上がっていて、たくさんの種類があり、新製品も非常に早いサイクルで発表されているので、よく聴きに行くのです。最近の量販店ではほとんどの製品が試聴できるようになっており、端から端まで聴いていくと結構時間がかかるものです。中には値段が安くても性能が良いものがあったり、プレミアムとかブティック系と呼ばれる、信じられないような高い価格の製品があったりして、盛り上がりを実感できます。

交換用イアパッドのほか
ケーブルも2種類付属


仕事でヘッドフォンに接する機会と言えば、録音時にミュージシャンがモニターに使用するとき、スタッフがコントロール・ルームでディレクションや録音の確認のために使用するとき、私たちエンジニアがバランスの確認に使用するときなど、さまざまな場面があります。また最近では、ミュージシャンが自宅スタジオで作業することも増えており、住宅事情などからあまり大きな音量を出せないことが多く、ヘッドフォンで作業していることが多いようです。また、私たちがミュージシャンの自宅スタジオで作業する際は、そのスタジオのモニター環境に慣れていないので、使い慣れたヘッドフォンを持参して作業する方がやりやすい場合もあります。スタッフやミュージシャンに"使いやすいヘッドフォンありますか?"と質問されることも多く、今回ちょうど良い機会なのでSHURE SRH940を紹介しましょう。SHUREは、私にはマイク・ブランドとしてなじみが深いですが、数年前にインイア型イヤホンを発表して以降、オーバーヘッド型ヘッドフォンでも評価を高め、アイテムを増やしてきました。今回のSRH940は型番からしても最上位機種になるので興味津々です。付属品はヘッドフォン本体、ベロア素材の交換用イアパッド、3mの脱着式カール・ケーブル、2.5mの脱着式ストレート・ケーブル、金メッキの標準プラグ・アダプターなどです。交換用のイアパッドとケーブルが2種類付属しているのは好感が持てます。このケーブルは若干音質に差があり、個人的にはストレートの方がバランスが良く感じましたので、今回はこちらを使用して試聴を行いました。ヘッドフォン本体はシルバーを基調としたデザインで、耳に当たるドライバーの部分は少し縦長の卵型をしており、ヘッド・バンドの頂点付近は黒のレザー調素材で4つのポコポコしたクッションが付いています。また、本体は2パターンに折り畳めるようになっており、持ち運びの際に便利でしょう。

ややハイ上がりの特性
コーラスの倍音が奇麗に聴こえる


それでは、手持ちのマルチトラック・データからいろいろな楽器を再生して試聴してみましょう。まずリズム系から。生ドラム&ベース、打ち込みのドラム&シンセ・ベースを取り出して聴いてみました。ローエンドは抑え気味、高域は少し強めの傾向で、スピード感がよく表現され、アタックの感じもよく分かります。ノイズ成分がよく聴こえるので、ノイズ・チェックにも便利でしょう。次にコード楽器系として、生ピアノ&アコースティック・ギター、RHODES&エレキギターを同様に取り出して聴いてみました。楽器のコード感がよく分かる感じで、奥行きと広がりがかなり良く、素晴らしいです。エレキギターの微妙なひずみ感もよく分かります。女性ボーカル&コーラスは中低域がやや少なめですが、それにより中域がクリアな傾向になり、倍音が奇麗に聴こえます。また、声が近くでリアルに聴こえるように感じました。最後にロック/R&B系の楽曲それぞれの2ミックスを聴いてみました。いずれも超低域がやや少なめで高音が伸びている傾向ですが、広がりや定位感は良く、特にロック系の楽曲ではリバーブの感じが見えやすいです。装着感は少し重く感じますが、フィット感は良好。音質は少しハイ上がりの傾向で、エイジングが済めば落ち着くかと思いますが、反面、重低音は少なめなので、クラブ系よりもロック系などの音楽に向いているでしょう。解像度と定位感が素晴らしいので、仕事用として使えると思います。上級者はイアパッドやケーブルを好みのものに交換してみても楽しいのではないでしょうか。
SHURE
SRH940
オープン・プライス (市場予想価格/ 27,000円前後)
▪形式/密閉ダイナミック型▪ドライバー・サイズ/40mm▪感度/100dB SPL▪インピーダンス/42Ω▪最大入力/1,000mW▪重量/320g(ケーブルを除く)