多彩な設置が可能な打楽器用のグースネック・コンデンサー・マイク

SHUREBeta 98AMP/C
SHUREから新たに音質と設置性能を高めた打楽器用ミニチュア・マイクBeta 98AMP/Cが登場した。音質はもとより、セッティングのやりやすさも含めてチェックしていこう。

専用アダプターにより
幅広いセッティングが可能


Beta 98AMP/Cは新たに設計されたパーツを採用したエレクトレット・コンデンサー型のマイク。小型だが、実際に手にとってみると重厚な作りで、どのようなシーンにも溶け込みそうな、Betaシリーズ独特のボディ色が採用されている。新開発のマイク・カートリッジ部は打面を確実にとらえられそうなグースネック構造となっており、資料の周波数カーブを見ると、高域に特徴があるようだ。エレメントがやや小さいが、どのような音作りがなされているか注目したい。最大音圧レベルは157.5dB SPLと、打楽器の録音には十分だろう。本機のもう一つの特徴は、個人的にこれまであまりなじみがなかったユニバーサル・マイクロフォン・マウント。スネアやタム、パーカッションなどのリム用とスタンド用の取り付けアダプターを合わせたような形状で、マイク・スタンドを使わずにさまざまな設置場所に対応し、素早く正確に固定することができる。先述したように本体自体も自在に曲がるため、すっきりとしたスタイルでセッティングも容易そうだ。

スネアはEQ無しでも
程良いサウンドが得られる


今回は私が10年来レコーディングを担当しているアーティストHARCO(www.harcolate.co
m)よりスネアを借用して、いろいろな距離/角度でBeta 98AMP/Cをセッティングし、聴いてみた。なお比較試聴用として、私がPIZZICATO ONEなどのセッションでタムやオーバーヘッド用に愛用しているNEUMANN KM84Iも同じような設定で立ててみた。距離はかなり近い2cmから5cm/10cmくらい、角度は打面に対して45°/90°にして聴いてみた。近接専用らしい作りとはいえ、近過ぎるとやはり低域が強調され、離れると音が遠くなる。私の好みで言えば、5cm程度の距離で角度を45〜60°くらいにセッティングすると、響きがちょうど良く感じられた。スネアのほかにもタンバリンやパーカッション類で試してみたが、音質の傾向としては、想像していたより低域がしっかりとある印象。高域もコンデンサーらしい伸びを感じさせつつ、ちょうどよいカーブをしており、欲しいと感じる帯域が過不足なく出ている。打楽器(特に皮もの)に最適化されたチューニングになっているようで、驚いたことに、スネアではEQ無しでも程良いサウンドが得られた。ちなみにKM84Iはより低域が出ているが、その分、音の扱いには気を遣う必要があるように感じられた。ユニバーサル・マイクロフォン・マウントは取り回しがとてもよく、楽器のリムにも簡単、正確、確実に固定でき、精密な調整が可能だ。マイク・ホルダーは上下左右に可動するし、一発でマイクを取り外せるクイック・リリース・ボタンなど、現場での使い勝手もよく考えられている。楽器本体に取り付けるため、直接伝わってくる振動は気にならなかった。今回は1本のみの試聴だったが、本体とマウントを3基ずつパッケージしたBeta 98AMP/C-3PK(126,000円)もあるので、複数本をタムに立ててレコーディングで使ってみたい。マイク・スタンドが要らないので、ステージなどでは省スペースでいいし、映像がらみの録音でも映り込みに気を遣わずに済みそうだ。ドラム用マイクと言えば同社のSM57かSENNHEISER MD421が定番だった時代があった。現在はエンジニアひとりひとりが好みのマイクを使っている。そのラインナップにBeta 98AMP/Cを加えてみるのもいいだろう。なお私の場合、通常ドラムには10本前後のマイクを立てる。それらすべてが混ざって"ドラム・サウンド"になっていることを、最後に付け加えておきたい。 201109_BETA-98AMP_C_01.jpg

▲付属のユニバーサル・マイクロフォン・マウントにより、1つのアダプターでさまざまな場所に取り付けられる


 
SHURE
Beta 98AMP/C
48,300円
▪形式/エレクトレット・コンデンサー型▪指向性/単一▪周波数特性/20Hz〜20kHz▪開回路感度/−50.5dB▪等価雑音レベル/31dB SPL▪最大音圧レベル/157.5dB SPL(1kHz)▪外形寸法/32.77(φ)×182.37mm▪重量/130g