DJツールの老舗が送り出すライブ仕様のMIDIパッド・コントローラー

VESTAXPad-One
長年、世界中のDJから信頼を得てきたブランド、VESTAX。主にDJミキサーなどのハードウェアに力を注いできた同社から、初のMIDIパッド型コントローラーが発売されました。ラップトップ・パソコンを用いたDJスタイルが定着してきた昨今、コンパクトなMIDIコントローラーは、必須アイテムになりつつあります。今回VESTAXが発表したPad-Oneは、コンパクトながらにプロ仕様の完成度を誇る決定版と言えるものです。では早速、その全容をチェックしていきましょう。

現場使用を想定したタフな重量感
ライブで威力を発揮するXYパッド


サイズは302(W)×30(H)×111(D)mmと、持ち運びに適していますが、実際に製品を持ってみると、ほかの同タイプのコントローラーと比べて明らかにズシっと重い。頑強なアルミダイキャスト製ボディに、従来の小型コントローラーのチープなイメージを覆されました。現場使用を想定したタフな重量感が絶妙で、パッドを強めにたたいても筐体が動かないため、抜群の安定感があります。次にコントローラー部分ですが、トリガー・タイプの光る12個のパッドは暗闇での視認性もバッチリで、ベロシティ、アフター・タッチにも対応し、ドラム・プレイなどを繊細にコントロールできます。またBANKはA〜Dの4つのチャンネルに計48のアサインが可能。本体左側にある灰色のパッドはXYパッドで、X軸/Y軸に各パラメーターをアサインして、指先でコントロールします。この機能をさらに発展させるのがその上に並ぶROLL、CHROMATIC、XY HOLDのボタンとTAPボタン。まずTAPボタンで曲のテンポを設定して、ROLLボタンを押すとドラム・ロール機能が使えます。X軸はロールのスピード、Y軸はロールの音量という具合に、異なるパラメーターを同時にコントロールできる上、CHROMATICボタンで、設定したテンポを1/2、1/4、1/8と切り替えることも可能です。またXY HOLDボタンを使用すれば、指を離した位置でROLLとCHROMATICの値をキープできます。これらの機能はライブ・パフォーマンス時に威力を発揮するでしょう。


たたくだけでなく押し加減でも調整できる
パッドの多彩なインプット機能


そして本機の最大の特徴と言えるのが、パッド・コントローラーでありながら、ノートとCCの両方をアサインできることです。MIDIをアサインする際にPADを強く押し込むとCCを割り当てられます。例えばDAWのセンド・ツマミをパッドの押し加減でコントロールできたりするわけですね。Pad-Oneにツマミがないのは、パッドのみでそれらをコントロールできてしまうからなのです。例えばパッド上段にセンド・ツマミを、パッド下段にドラム音源をアサインしたり、BANKごとに振り分けたりと、自由度の高い設定が可能です。また本機にはMIDI端子(変換プラグが同梱)が実装されているため、単なるソフトウェアのコントローラーとしてだけではなく、外部MIDI機器のキーボードとしても使用できます。また、従来であれば専用ソフトウェアが必須な機能であるノート/CCの変更も、ENCODERノブを使えばPad-One単体での設定も可能です。


では、具体的な使用例を見てみましょう。今回、協力してもらったのは、Pad-Oneの開発に携わったというTeezva。彼はABLETON Liveに曲のパーツを割り振り、パッドによるコントロールでリアルタイムにドラムや上ネタ、ワンショットのサンプルを鳴らし、ヒップホップを出自とするブレイクビーツを聴かせてくれます。彼の使用法で面白いのは、1つのパッドにアサインしたサンプルを鳴らしながら、CCを利用して同時にディレイをアサイン。曲間のブレイクでパッドを強く押し込んでディレイをかけるといった具合に、Pad-Oneならではの操作法を実践している点です。XYパッドを使ったドラム・ロールに加えて、X軸にリバーブ、Y軸にフィルターのエフェクトをアサインし、さらにリアルタイムでのプレイの幅を広げていました。彼のデモ演奏はVESTAXのホームページでも見られるので、ぜひチェックしてみてください。


▼サイド・パネル。左からUSB端子、MIDI OUT、ACアダプター用端子。外部MIDI機器の制御も可能だ




サウンド&レコーディング・マガジン 2011年8月号より)


VESTAX
Pad-One
オープン・プライス (市場予想価格/16,800円前後)
▪外形寸法/302(W)×30(H)×111(D)mm▪重量/750g▪付属品/USBケーブル、MIDIアダプター・ケーブル

▪Windows/XP(SP2以降)、Vista(SP1以降)、Windows 7▪Mac/10.4.11以降、CPU INTELプロセッサー以上