アンプ録音した生々しいサウンド
ヘビー・ロックにマッチする7弦ギター
まずはギターから。ギター本体はFENDER、CARVIN、GIBSON、SCHECTERなど、アンプはFENDER、MARSHALL、MESA/BOOGIE、VOXといったおなじみのアンプ・メーカーを使い収録している。パッチのカテゴリーとしては、ハードなロック向けのヘビー・ギター、少しポップなロック・ポップ・ギターと分かれており、さらにその中からソロに適したリードとバッキングに適したリズムというように分別されている。ヘビー・ギターは最近ヘビー・ロックで聴くことの多い7弦ギターも多く収録され、ほぼ最低音はBとなっている。
ギターはどの音もいかにもアンプから録った雰囲気で、一音一音だけ聴いてもとても生々しい。言うまでもなくギターは、同じ音でも演奏方法などによって全く音は変わってくる。通常の演奏パッチは、低音のMIDIノートによる音色チェンジ機能を持った、いわゆるキー・スイッチ・パッチと、モジュレーション・ホイールによって切り替えるパッチが用意されている。もちろんベロシティによる音色切り替えも含めるとかなりのバリエーションになる。キー・スイッチは10個程度の切り替えになっており、ビブラートがかかったり、グリス・ダウンしたりなど、さまざまな演奏が収められている。リズムの方は、やはりパワー・コードが中心。1度と5度を打ち込んだときの雰囲気は本製品ならではのロック・サウンド。あまり音程感の無いノイズ系の音は鍵盤の上の方にアサインしてあったりして、キー・スイッチと組み合わせれば1パッチでもかなりリアルな演奏が可能だ。
新たにリマスタリングされたベース音
新旧の名機を使い録音されたドラム音
続いてベースだ。生産完了となったベース音源のQuantum Leap Hardcore BassとHardcore Bass XPに収録されていたFENDER、HOFNER、GIBSON、SILVERTONE、RICKENBACKER、MUSICMAN、LAKLANDの各ベース音がリマスタリングされている。また、MUSICMAN Stingrayの5弦ベースと新たに7,000サンプルを収録。全体的にどれもロック・ベース!といった雰囲気満載で、奏法もグリス・アップ/ダウンなどを多く収録。パッチのほとんどは強いベロシティだとグリスがかかるようになるが、意外とそれが自然に感じる。確かにロック・ベースの場合、かなりの頻度でグリスを使っていることに気がつく。各メーカーの音色の違いもとても明確で、MUSICMANのピック弾きの明るい感じ、GIBSON EB2の中域の張った感じ、そしてRICKENBACKERの攻撃的な感じ......各楽器の特徴をうまく再現している。HOFNERのベースも独特の"モーモー感"が良く出ていてなかなかいい。どの音もスライド、トリルなどの演奏音も豊富に収録。またほとんどの音は、たとえ4弦ベースでもE以下の音(C#からB辺りまで)も備えるので、相当ヘビーな曲にも対応できるだろう。ちなみに、MUSICMANの5弦のパッチは下はAまで収録する。
最後はドラム。基本はDWとGRETSCHとLUDWIGの3セット。もちろんドラムの場合、同じセットでもチューニングや収録の仕方、また奏法などによって全く音は変わってくるが、どれもそれぞれの特徴を生かした音作りとなっている。また、基本キットはこの3つだが、ほかにもSONORやGMSなど6つのスネアも用意。さらにルームのアンビエント・サウンドなどは別サンプルとして用意され合成することが可能。エフェクターなどで作られたものではないので、かなりリアルだ。
LUDWIGのドラム・セットでルームを派手に混ぜれば、かなりビッグなロック・キットを堪能することができた。キック、スネア、タム、ハイハットなどは、別パッチでレイヤーする形なので、管理やエディットはやりやすい。組み合わせてオリジナルのキットを作ることも可能だ。また収録には、NEVE、NEUMANN、TELEFUNKENなどのマイクやマイクプリが使われていることもポイント。
各サウンドはプレーヤー・ソフトのPlayによりさまざまなエディットが可能。同時にほかのライブラリーも読み込め、インターフェースも好きに選ぶことができる。打ち込みでロックなサウンドを出したい!という人には間違いなくお薦めできる。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2011年8月号より)