多くの名機を生み出してきたNEUMANN初のモニター・スピーカー

NEUMANNKH120A
NEUMANNは有名なコンデンサー・マイクU87、またミキシング・コンソールやカッティング・マシンなど常に革新的な技術を持ってプロ・オーディオ業界のトップをリードし続けているブランド。今回レビューするのは、同社初となるモニター・スピーカーです。現在のDAW環境は、ものすごい速さでスペックや機能が上がっています。同様に録音やミックスの場も、数年前では想定していなかった環境で、世界各地で広く行われていますね。こうした昨今の状況を踏まえつつ、さてさてKH120Aの実力や、いかに!

音響特性による影響を低減するMMD
帯域別に4つのポジションを備えたEQ


箱から開けたときの第一印象は"予想以上にかなり小ぶりだな!"。本誌(A4変型サイズ)よりも一回り小さく、YAMAHA NS-10Mよりも格段に小さいです。最近のパワード・スピーカーの中では、小型モニターの部類に入るサイズだと思われます。濃いつや消しのメタリック・グレーのカラーとアルミニウム製のボディからはプロフェッショナルな雰囲気が漂っています。ボディには25mmツィーターと130mmウーファーを搭載。ツィーター部には低ひずみチタニウム・ツィーターを使用し、そのキャビネット部分にはMathmatically Modelled Dispersion(MMD)テクノロジーを採用しています。これらの組み合わせによって、音響軸外の特性を大幅に改善し、部屋の音響特性による影響を低減できるようです。フロント下部に2つの大きなダクトを採用し、低域のコンプレッションを低減することで、狭い空間での低域特性の暴れも改善されています。また、環境特性に合わせてチューニングできるように、低域/中域/高域と3つの帯域にEQ(それぞれ4段階)を搭載し、出力は50W+50W。入出力それぞれにゲイン・スイッチと調整トリムが背面に配置されています。フロント・パネル向かって左側にあるNEUMANNのエンブレムは、電源入力時は白、過大入力から電子回路を保護するピーク・リミッター作動時は赤に点灯します。スピーカー背部にはフライング用の2つのねじ穴を備えるなど、将来的にはサブウーファーKH 810(発売未定)との併用で、最高7.1chまでのサラウンドが可能になるようです。

マイクの距離感なども伝わる高解像度
小音量でもバランスがくずれない


さて、どんな音がするのか興味津々です。我が家で使っているYAMAHA NS-10Mと本機のツィーターが耳の高さと同じになるように調整。ブロック横置きの上で、まずまずの高さに。電源を入れ、CDやAVID Pro Toolsの音源でチェックします。ユニットが垂直に並ぶのである程度は予想していましたが、定位の良さにびっくりです。音場の広がり方、逆位相を含めたL/Rを超えた広がり方や、リバーブ感の見え方はとても自然に感じられました。また、NS-10Mと比較すると、レンジの広さは圧倒的。特に低域の見え方は随分と差が出ました。"こっちの方がウーファーのサイズが小さいのに......"と思うほど、サイズに反比例するようにKH120Aの方が無理なく、はるかに分かりやすい低域。解像度は特に中域〜中低域がかなり高いです。マイクの距離やEQ、コンプのかかり方はすごく良く分かります。逆に、その辺りの帯域のアレンジや処理の善しあしも如実に出ます。本当に、ごまかせないモニターです。高域は無理な味付け感は全くなく、明るさは感じられませんが、スムーズで自然な抜けの良さを感じます。逆にNS-10Mがいわゆる"明るいスピーカーだなあ"と、あらためて思い知らされました。次に、音量によるバランスですが、これもNS-10Mよりも使いやすそうですね。ある程度大きな音でのモニター時は、両者共にバランスは良いのですが、小さめにするとNS-10Mは少し地味な印象のバランスになってしまいます。一方、KH120Aは、低域も含めてバランスの印象があまり変わらない。逆に、ある程度小さめの音量でもバランスが十分に分かります。これはあまり大きな音量を出せない夜の時間帯、また長時間の作業をする人たちには特に朗報ですね。最後にKH120Aのセールス・ポイントの一つでもある、EQを使って部屋の特性に合わせて調整をしてみました。低域を減らして高域を少しだけ上げてみると、NS-10Mに近い印象に(笑)。さらに、コントロールすることで、より分かりやすいモニター環境を作ることができました。


全体的には、かなり好印象です。明るく人工的なサウンドとは対照的で、ベーシックな音を追求した明確なコンセプトで設計が成されています。"録音やミックスするために必要なものは?"と問いかけてくるようなスピーカーです。じっくりと腰を据えて確実な録音やミックスをする、これぞモニター・スピーカーと言えるでしょう。スタジオをはじめとしたさまざまな環境で、今後スタンダードになり得る予感を多いに感じさせますね。

▼リア・パネル。左側のEQでチューニング可能。低域、中域、高域別にそれぞれ4つのポジションを用意。右側には4段階の切り替えが可能なゲイン・スイッチと調整トリム


サウンド&レコーディング・マガジン 2011年6月号より)

撮影/川村容一

NEUMANN
KH120A
189,000円(ペア)
▪周波数特性/52Hz〜21kHz(±3dB)▪最大音圧レベル/111.1dB SPL▪クロスオーバー周波数/2kHz▪外形寸法/182(W)×277(H)×220(D)mm▪重量/6.2kg(1本)