大型ダイアフラムを備えたショック・マウント内蔵コンデンサー・マイク

SENNHEISERMK 4
本稿でレビューするコンデンサー・マイクMK 4は、"プロ仕様"と、メーカーもその品質に自信を持つモデルです。さらに1本30,000円強という価格も魅力的。ハンド・マイクを得意とするイメージのSENNHEISERが、一体どんなマイクを作ったのでしょうか? 早速使ってみましょう。

ハンドリング・ノイズが極めて少ない
最大SPLが高く大音量楽器にも対応

MK 4は、SENNHEISER初となる大型ダイアフラム(直径25.4mm)を搭載したコンデンサー・マイクです。本体の作りも頑丈で、きちんと作られているのが分かります。まず見た目は合格でしょう! 程良い重量感もあるので、低音楽器の収録の際にそのサウンドの影響を受けてマイクに入力した音がビビるということも少なそうです。

さて、本機の指向性は単一のみとなっています。またローカットやPAD機能などは搭載されておらず、シンプルな設計。初心者でも難しいことを考えずに扱えるでしょう。付属のマイク・ホルダーは、マイク・スタンドを伝わる振動を軽減してくれるショック・マウント・タイプではありません。しかし、さすがはハンド・マイクを長年開発してきたメーカーの製品。マイクを握ったときに発生しがちなハンドリング・ノイズが非常に少ないのです。これは、頑丈なメタル・ボディとショック・マウント内蔵カプセルのなせる業でしょう。激しい現場利用にも耐えるよう作られています。最大音圧レベルも140dB SPLということで、これだけあれば大音量の楽器にも、入力レベルを気にせず使えそうです。また、保証が2年間あるというのもうれしいですね。なお、オプションにはサスペンションのMKS 4(オープン・プライス/市場予想価格12,400円前後)がラインナップされています。

高域にまとまりがありつつ
しっかりした中域により中抜け感が無い

では早速使っていきます。まずはアコースティック・ギターを録音してみました。録り音の傾向は、中高域が張り出した明るい音というイメージです。低価格帯のマイクにありがちな、高域の散らばり感は少なめ。低域に関しては緩い感じが無く、どちらかと言えばタイトです。前述の通り中高域〜高域が張り出していますが、そこが逆に良い印象。レコーディング後にEQなどで補正しなくても使えるであろう音が録れました。なお、どんな奏法でも特に問題は無かったと思います。

次にボーカルを録音してみると、アコースティック・ギターと同様、明るい録り音。ほかのマイクに比べて、一歩前にいる感じの歌声を確保できます。また、高域だけでなく中域もきちんと出ているので、中抜けした細い音に聴こえないのは良いところ。ただ、先ほど説明した特性が影響してか、強く歌ったときに録り音の中高域がちょっとピーキーな感じに聴こえるときがありました。どうやら、ボーカリストや録音に使うマイクプリとの相性も関係しているようです。レンジが広く明るい音質のマイクプリよりも、APIやNEVEのビンテージ・モデルのように、音が若干なまったマイクプリの方がボーカルには相性が良いと思います。

さらに、ギター・アンプにも立ててみました。ディストーション・サウンドを録りましたが、輪郭が鮮明な録り音となっており好印象です。ひずんだギター・サウンドにありがちな低域の膨らみにも、音が鈍ってしまうことはありませんでした。SHURESM57も同時に立て、録り音を聴き比べてみたのですが、このマイクで収めたサウンドを採用する結果となりました。

また、意外に結果が良かったのはナレーション録りです。ナレーションには、言葉の一つ一つや文章内容をはっきり聴かせるためにEQをかけることがあります。ですがMK 4を使った場合はその必要が無く、そのままでくっきりとした話し声をレコーディングできました。

選択肢が豊富なこの価格帯のマイク。その中でMK 4がどういったサウンドを提供してくれるか楽しみでしたが、使った印象は良かったです。筆者はSENNHEISERのハンド・マイクを所有しているのですが、それと比べてもこのメーカーの製品らしい音のマイクだと言えます。

特性的に、中高域〜高域の張り出した明るいサウンド・イメージでタイトな感じ。全体的に音の散らばり感が無く、前に出てくる印象です。なおかつ、この価格帯でありながら、中域の音質がおざなりになっていないところも良いですね。多少作り込まれたサウンドだと思いますが、それだけに音作りのための機材をたくさん用意しなくても良さそう。プロからアマチュアまで、広い用途で使っていけるマイクだと思います。

サウンド&レコーディング・マガジン 2011年6月号より)

SENNHEISER
MK 4
オープン・プライス(市場予想価格/32,000円前後)
▪周波数特性/20Hz〜20kHz▪指向性/単一指向▪感度/25mV/Pa▪ノイズ・レベル/10dB(A)/20dB(CCIR)▪最大音圧レベル/140dB SPL▪ダイアフラム直径/25.4mm(1インチ)▪パワー・サプライ/ファンタム電源(48V)▪外形寸法/57(φ)×160(H)mm▪重量/485g▪付属品/MZQ 4(マイク・ホルダー)、マイク・ポーチ