過激なひずみやフィルターが得られるビット・クラッシュ・プロセッサー

OTO MACHINESBiscuit
アキバ系のクラブなどでプレイされている、いわゆる8ビット音源を多用したチップ・チューンにメロメロの筆者ですが、今回は8ビット・デジタル・プロセッサーBiscuitのレビューということで、早速飛びついちゃいました! 電子楽器では珍しいフランス製だし、メーカー名もOTO MACHINESということで、早速おしゃれな箱から出して、遊んじゃいました。一見リズム・マシンやシンセ・ベースみたいですけど、これは8ビット専用のひずみマッシブのエフェクト・ユニット! さてさて、どんなひずみっぷりでしょうか? 早速リズム・マシンやシンセなど通してみました。

スタイリッシュかつポップな外観で
DJしているような直感的な使用感


出入力はフォーンで、MIDI IN/OUTも装備されています。外部MIDI機器とMIDIクロック経由でテンポ・シンク可能で、ナカナカ重宝します(もちろんタップでテンポ設定も可能!)。パワー・オンするとホワイト/レッド/ライム・グリーン/ブルー/イエローのLEDがボタン内部で淡く光り、一見キャンディみたいなポップさで、癒されます(ひずみ系と矛盾しちょる!)。では、早速接続してみましょう! まず左上のDRIVEノブで入力音量を調整します。適切なレベルを下回る信号を入力すると、適切なデジタル・プロセッシングが作用しないので、DRIVEノブは適正値に調整するのが大事。一度設定したら、あとはこのノブに触らず、固定にします。そしてその隣のNAKEDノブで出力音量、DRESSEDノブでプロセスされた音の音量を調整。ちょうど、通常のエフェクト・ユニットのドライ/ウェットを2つのノブでミックスする仕様です。これは、本機が8ビットのひずみマシンであり、過激なビット・クラッシュをさせると、意図したボリュームより大音量になりやすく、その対策としてオリジナル音とプロセス音を、それぞれ独立して音量を調整するデザインが採用されたようです。操作感もまるでロータリー・エンコーダーでDJしているような感覚で、たのしー。

リアルタイムの調整が可能なDelay
8ステップ・フィルターのStep Filter


出入力系のノブの隣には、ロー/ミッド/ハイパス選択可能なフィルターがあります。この部分だけでもアナログ・フィール満載でかなりイケてるんですが、ここからが本番! この下に装備された8個のボタンがBiscuitingセクションで、ステップシー・ケンサーみたいなボタンでビット・ステータスを設定、8ビット・クラッシュさせます! 1~8のボタンで数字が大きくなるほど強くひずみますが、どの周波数帯でビット・リダクションするか設定するような感覚で、すぐに理解できると思います。また、ミュートやインバート(反転)のコンボを使うと複雑なビット・リダクションが可能で、単純なノブではナカナカ出来ない芸当です。で、これらのビット・リダクションに対して、CLOCKノブでサンプル・レートをリアルタイム・コントロールすると、8ビット・クラッシュの真骨頂のエイリアシング効果(繰り返して生成されたノイズ)が得られます! さらにフィルターやレゾナンスで強調すると、エグさが増してサイコーというか、音デカッ! また本機の真ん中には、BRAINスイッチがあり4種類のエフェクトを追加選択できます。各エフェクトのパラメーターは、主にCLOCKノブとBiscuitingセクションで使用した8つのボタンで設定します。まずWaveshaper! 8種類のウェーブ・シェイプを使ったデジタル・ディストーションで、ギターやリード系の音などで最高のビット・クラッシュが得られました! 次にDelayですが、MIDIクロックまたはタップ・テンポに同期し、基本的な拍子の設定やフィードバック量も設定可能ですが、FreeClockモードが装備されていて、ディレイ・タイムをClockノブでリアルタイムに変化させると、とても言葉で表現出来ない複雑なフィードバック効果が得られます! こんな一期一会的なエフェクト、大好物です!3番目がPitch Shifterで、8種類のピッチ・シフトを選択可能。オクターブ・アップ&ダウン、メジャー&マイナー、3rd&5th、デチューンもあって、よりファットで荒々しいコードも作れます。最後は、Step Filter。8つのボタンをステップ・シーケンサーに見立てて、各ステップでフィルターのノブの位置などを記憶させる機能です。シーケンスの進行方向も左右とランダムが選択でき、何とフィルターの種類も記憶できます。リズム・マシンと同期させて、裏拍で変化を与えると面白い! 実際、本機はかなりリズム・マシンと相性が良いみたいで、素のキックをビット・クラッシュさせると、かなりカッコイイ! で、せっかく作ったプリセットもセーブできるし、8ビット設定の保存であれば、スナップショット機能で保存、データのMIDIダンプも可能なので安心! 一見オモチャのようですが音質にはこだわっており、8ビットですが高品質なAD/DAコンバーターやリレー・バイパスが装備され、音ヤセはないようです(ひずませるんだから当然!!)。常々、楽器メーカーさんにお願いしたいのは、多機能でなくてもいいから、シンプルで触って楽しい機材です。目をつぶっても操作できなければ、もうそれは楽器じゃないと思います(誰がマニュアルなんか読むもんか~! LEDディスプレイとにらめっこするもんか~! どこかオモチャのメーカーと提携してくれ~!)。遊び心満載の本機で遊んでいるとそんな気がします。 201105_OtoMachine_01.jpg▲入出力部。アナログ入力L/R(フォーン)、アナログ出力L/R(フォーン)。MIDI IN/OUT、電源イン撮影/川村容一
OTO MACHINES
Biscuit
オープン・プライス (市場予想価格/63,000円前後)
▪外形寸法/190(W)×117(D)×60(H)mm▪重量/580g