2.4GHz帯使用&低価格が魅力のデジタル・ワイアレス・システム

LINE 6XD-V70
近年驚いたことの1つが"ワイアレス・マイクがついにデジタル化した"ことでしょう。しかしながら、それらの多くは高価なことも事実。そんな折、ギター関連製品で有名なLINE 6からデジタル・ワイアレス・システムXD-Vシリーズが登場。早速ご紹介しましょう!

コネクターなど必要小物も同梱
すぐにワイアレスが体験できる


まずはラインナップから。最大6ch同時使用可能なXD-V30シリーズは、ラベリア・マイク&送受信機のセットXD-V30L、ハンドヘルド・ワイアレス・マイク&受信機のセットXD-V30(各セットともオープン・プライス/市場予想価格42,000円前後)、そして12ch送受信可能なXD-V70シリーズとして、ラベリア・マイク&送受信機のセットXD-V70L(オープン・プライス/市場予想価格58,000円前後)と、ハンドヘルド・ワイアレス・マイク&受信機のXD-V70。今回はXD-V70をチェックします。"マイクから受信機までの到達範囲が90m"という触れ込みに期待です。受信機はハーフラック・サイズで、複数台設置する場合に必要な連結金具からBNCケーブル、変換コネクターまでも同梱されており、新たに買い足すものが無い! ワイアレス・マイク用に丈夫そうなソフト・ケースも付属します。さて、通常のデジタル・ワイアレスの送信自体はアナログと同じ800MHz帯を使用しますが、本機は2.4GHz帯を使うのがうれしいところ。これは無線LANなどの使用帯域なので、従来のB帯(免許無しで使用できるワイアレス周波数帯)を争ってプランする必要はありません! ごくまれに無線LANと帯域が被ってしまうことがあるみたいですが、そんな場合もオート・サーチ機能を装備しているので、先に使用されているチャンネルを回避できます。状況さえ整えば、同時使用数も最大12chまで可能(本シリーズ1セットに対して1chを使うため、セットを増設した際の使用数)。なお本機のデジタル・コンバートは24ビット/48kHzで、レイテンシーは4msとなっています。

クリアかつ前に出てくるサウンド
マイク・シミュレート機能も搭載


今回はちょうどワイアレスを使用するイベントがあったので、実際にコタニキンヤ.君のボーカル・マイクとして現場でチェックしてみました。まずワイアレス・マイク本体のボタン類ですが、ボディ半ばの画面の下にMUTE(電源)とSELECTスイッチが、誤操作しにくいよう表面より少し奥まった位置に用意されています。MUTEボタンを長押しして電源を入れると、画面にチャンネル番号(チャンネル名はエディットも可能)と電池の残量が表示されます。さらにSELECTボタンを数回押すとマイク選択画面が登場。実は、本機がスゴイのは使用帯域だけでなく、マイクの音色をシミュレートする機能が付いていることなのです。おなじみSHURE SM58、Beta 58、SENNHEISER E835、AUDIO-TECHNIACA AE4100、さらにはAUDIX OM5までもモデリングされており、まさに夢のワイアレス・マイクです! ここでは、コタニ君が普段使用している"Beta 58"を選択。ミキサーでゲインを確認してみると、有線マイクと同じくらいのマイク・レベルでした。このワイアレス・マイクにはゲインやPADなどの調整機能は付いていませんが、あくまで有線マイクと同じように作られているので、通常の使用ならば本機で音がひずむこともありません(本機でひずむ場合は、一般的な有線マイクでもひずみます)。ですから、有線で使用しているマイクをそのまま本機にリプレースしてワイアレス化もできますし、逆に何かのトラブルで有線に戻す場合でも、ゲインがほぼ同じなので安心して扱えます。肝心の音質ですが、さすがはデジタル! クリアだし、S/Nも従来のワイアレスに比べ抜群に良い! デジタル・ミキサーを初めて触ったときに分離が良いと思った感覚に似ています。さほど音量を出していないのに前に出てくる感じがすごく、とにかくボーカルが埋もれません。コンパウンド(信号圧縮)していないので、音が詰まった感じが全く無く、むしろ有線のように口元からマイクを離せば奇麗に減衰します。ボーカリストのマイク・パフォーマンスはもちろん、オペレーターやリスナーも圧迫感のストレスが無くなるでしょう。ちなみに当日は6ch以上のワイアレスを使用していましたが、本機だけはプロ機並みの電波の安定&プロ機以上の高音質を発揮。現場にいた何人かのPAマンも"マイク・チェックのときから良さが分かった"と言っていたのが印象的でした。漢字1文字で言うならば、本機はまさに"優"。"ヤサ"しく"スグ"れた本機は、PA界における今後の救世主になる可能性が十分にあります。本当にこの値段なのかと何度も疑うくらいで、筆者も1セット購入しようかと本気で思っています。 201103_XD-V70_1.jpg▲受信機のリア・パネル。左からアンテナAの入出力(複数台をデイジー・チェインする際に使用)、オーディオ出力(フォーン、XLR)を挟んでアンテナBの入出力 
LINE 6
XD-V70
オープン・プライス (市場予想価格/58,000円前後)
▪周波数特性/10Hz~20kHz▪最大ダイナミック・レンジ/≧120dB▪外形寸法/マイク:42(φ)×240(H)mm、受信機:217(W)×45(H)215(D)mm(突起含む)▪重量/マイク:316g、受信機:1.195g