Onyxマイクプリ8基を実装し明るい音色が魅力のオーディオI/O

MACKIE.は、1989年に圧倒的な高音質とミュージシャンにも手の届く価格のミキサーCR-1604でセンセーショナルなデビューを果たし、あっという間に世界を席巻しました。自分がMACKIE.に好感を持っているのは、同社の主軸はあくまでも"ミキサー"という意思が感じられること、そしてミキサーにオマケのような機能を付け足すのではなく、常に音質向上の努力をつぎ込んでいること。あくまで"ミキサー作りのメーカー"というポリシーを崩さず、今なお地道に音質改良を続けています。 今回レビューするOnyx BlackbirdはDAWでのレコーティングを主目的とした同社の新しいFireWireオーディオI/O。つい最近まで、同社はミキサーにオーディオI/O機能のビルトインという形を取ってきたわけですが、既に発売されているOnyx Blackjackとともについに純粋なオーディオI/Oの登場となります。時代の波でしょうか、彼らがこの決断に踏み切ったポイントがどこかにあるはず......その予想通り、実際にレビューをするとミキサー・メーカーとしての同社の意地と思いやりが細部まで感じられました。

MACKIE.Onyx Blackbird
MACKIE.は、1989年に圧倒的な高音質とミュージシャンにも手の届く価格のミキサーCR-1604でセンセーショナルなデビューを果たし、あっという間に世界を席巻しました。自分がMACKIE.に好感を持っているのは、同社の主軸はあくまでも"ミキサー"という意思が感じられること、そしてミキサーにオマケのような機能を付け足すのではなく、常に音質向上の努力をつぎ込んでいること。あくまで"ミキサー作りのメーカー"というポリシーを崩さず、今なお地道に音質改良を続けています。 今回レビューするOnyx BlackbirdはDAWでのレコーティングを主目的とした同社の新しいFireWireオーディオI/O。つい最近まで、同社はミキサーにオーディオI/O機能のビルトインという形を取ってきたわけですが、既に発売されているOnyx Blackjackとともについに純粋なオーディオI/Oの登場となります。時代の波でしょうか、彼らがこの決断に踏み切ったポイントがどこかにあるはず......その予想通り、実際にレビューをするとミキサー・メーカーとしての同社の意地と思いやりが細部まで感じられました。

ミキサーを踏まえた出力端子の概念
ソフトウェア・ミキサーも付属


Onyx Blackbirdは、アナログ8イン/8アウトとADATオプティカルによるデジタル8イン/8アウトの計16イン/16アウト仕様。8つのアナログ入力はすべて同社の超高音質Onyxプリアンプを備えています。サンプリング・レートは24ビット/96kHzまで対応しており、申し分ないですね。ボディは1Uラック・マウント・サイズ。フロント・パネルにはマイクプリのゲイン・ツマミが整然と8つ並び、中央右にはスピーカーのモニター・ボリュームとして使うMONITORツマミ、そして独立してバランスや音量を調整できる2系統のヘッドフォン・アウトとボリューム・ツマミを配置しています。左側は"SUPER CHANNEL"と呼ばれるセクションで、ここには入力ch1〜2用のXLR/フォーン・コンボ端子とゲイン・ツマミのほか、ボーカル録音に便利なローカット・フィルターとギターなどの直接接続ができるHi-Z入力スイッチを用意し、自宅録音での使い勝手を向上させています。その右隣にはSUPER CHANNELだけに対応する"INPUT1-2DIRECT MONITOR"セクションを配置。これは、後述するソフトウェア・ミキサーを使用しなくても本体のみで入力ch1〜2のダイレクト・モニタリングができる便利機能です。自宅録音時はこの左側のセクションをいじることが多くなるので、その辺りを考えたレイアウトの心配りが感じられます。リア・パネルを見ていくと、入力ch1〜2でそれぞれ使用できるインサート端子、そして入力ch3〜8用のマイク/ライン対応コンボ端子を用意。基本的にマイクはXLR、ラインはTRSフォーンで接続することになります。続いて出力端子ですが、この辺からミキサー・メーカーとしてのMACKIE.の主張を感じることができます。TRSフォーンのアナログ出力端子が6つありますが、名前は"MON OUT" "MAIN OUT" "ALT OUT"となっており、他社のオーディオI/Oなら"Out1-2"などとつけそうなところ、まるでアナログ・ミキサーみたいなネーミング......そう、MACKIE.はこのOnyx Blackbirdを"フェーダーの無いアナログ・ミキサーとして使ってくれ"と主張しているのです。実は、6つある出力端子はいわゆる"OUT 1〜6"という扱いではなく、MAIN OUTがOUT1〜2、MON OUTも同じくOUT1〜2ですが、前面のMONITORツマミを通過した出力となっており、まさにアナログ・ミキサーと同じ考えに立った設計なのですね。ALT OUTはOUT3〜4として多目的に使えるので、主にAUXセンドとして外部エフェクターとの接続や、CUE送りに利用するといいでしょう。

▼リア・パネル。左からFireWire×2、ワード・クロック入出力(BNC)、ADATオプティカル入出力×2系統(S/MUX対応)、ALT出力L/R(TRSフォーン)、メイン出力L/R(TRSフォーン)、モニター出力L/R(TRSフォーン)、ch3-8マイク/ライン入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)×6、ch1-2インサート(TRSフォーン)×2。ch1-2マイク/ライン入力はフロント・パネルに用意。


ここで、"ちょっと待って、残りのアナログ4アウトはどこにあるの?"と思った方も居るでしょう。実は、本機ではフロントにある2系統のヘッドフォン出力をOUT5〜6/7〜8と兼用しているのです。実際、このヘッドフォン出力は作業時のモニターだけでなく、後述するソフトウェア・ミキサーで自由にアサインを決めることが可能となっており、通常のサブオーディオ・アウトとして使用できます。まあ、強いて言うなら7.1chなどのマルチチャンネル出力をする際は配線が煩雑になったりと難しくなってきますが、MACKIE.はこの部分を天秤にかけてもヘッドフォン出力をアウトプットと兼任させた方が全体的な利便性が高まると判断したのでしょう。僕も大きく同意します。ちなみにフロント・パネルの部分で説明しませんでしたが、ヘッドフォン端子の横に"MON/PH1"といった切り替えスイッチが付いているのは、モニター出力とOUT5〜6/7〜8を選択するためです。さらに本機には、DAWとの間に入るソフトウェア・ミキサーのBlackbird Controlが付属します(画面①)。シンプルながらも非常に使いやすいコントロール・パネルで、18本のフェーダーが並び、一番右にMain Mix、Alt Mixといったタブが用意されています。そのタブをクリックすると、個々の出力専用のミキサー画面に変わるという仕組みです。18本のフェーダーは固定ではなく、ラベルの上をクリックすると入力アサインを簡単に変更できるので(画面②)、DAWからのクリック音を入力して録音用の設定を作ったり、DAWからの出力に対してサミング・ミキサーのような設定にすることも簡単です。まあインストールした時点で基本設定はされているので、よく分からない人はいじらなくても大丈夫なのですが、お勧めはMain Mix画面でSUPER CHANNELであるマイク/ライン1〜2のフェーダーを下げる設定。そうすると本体側のINPUT1-2 DIRECT MONITORツマミで入力音のダイレクト・モニタリングができるので便利に使えるでしょう。

▼画面① 本機に付属するソフトウェア・ミキサー、Blackbird Control。Onyx Blackbirdへの入力音およびDAWからの出力をまとめて、各出力ごとに独立してバランス設定が行える。本機に付いている2つのヘッドフォン端子それぞれに対しても異なるモニター・ミックス作りが可能。なお、そのヘッドフォン端子は任意のソースをアサインして通常のオーディオ出力としても利用できる。



▼画面② 各出力設定に対して18本のフェーダーが用意されるが、そのアサインはユーザー自身が任意に行える。例えばBlackbird Controlをサミング・ミキサー代わりにして、DAWからのステムをミックスするという使い方も可能だ。



MACKIE.らしい元気な中高域
96kHz時で潜在能力すべてを発揮


さて、いよいよ音質評価。まずは48kHz WAVファイルを再生してみたところ、中域から高域までの立ち上がり特性というか、スピード感、ダイナミック・レンジに起因する粒立ち感、位相の正確さに起因するステレオ感、どれをとっても非常に良いと感じました。DIGIDESIGN 192 I/Oと比較してみたところ、本機はスネアのアタック感、ハイハットやシェイカーの高域の張り出し感、そしてボーカルのブレスやアコギ弦のキラリとする高域部分などをちゃんと聴かせてくれ、中高域に関してはまるでどっこいどっこい。どちらが好きかは好みのレベルというくらいの印象を受けました。本機の個性としては低域が若干タイトなので、その分、音が前にせり出してくる感じがあります。ヘッドフォン出力もチェックしたところ、低域のタイトさを含めてスピード感と正確さを持っており、メイン出力と同様に手抜きの無い質感でした。次に録音評価です。SUPER CHANNELでボーカルとギターを録り、他社のオーディオI/Oの録り音と比較してみました。24ビット/48kHzで録音したファイルをAVID Pro Toolsから192I/Oで再生したのですが、驚いたことにマイクプリも再生時と同じ音色傾向で、ややタイトながらもスピード感のある元気な音。メリハリがちゃんとあってすごく良いですね。Hi-Z入力のギターもマイク入力時と同じレンジ感を聴かせてくれて、インピーダンス変換をちゃんとしてくれています。ローカット・スイッチもボーカルに対して不自然な低域カットではなく、実に自然で良いです。このタイトさはMACKIE.の伝統的な"カラッと乾いた元気な音色" であり、本機でもそこを狙ってチューニングしているのでしょう。例えば、低域がボワボワな音で録れたとしてもミックスでこれくらいタイトになるようEQしてしまうだろうなと思うと、ある意味ミックスしやすい音に録りの段階でしてくれていると言えます。これはMACKIE.の親切心かもしれませんね。さらに24ビット/96kHzで録音してみましたが、ここで状況が一変。タイトめに感じていた低域が良い位置に腰を落ち着けてくれました。中高域の元気さはあまり変化がありませんが、密度がぐっと増えた感じで、デジカメで言うならば色に深みが出た感じでしょうか。96kHzこそ本機の素晴らしさ、ポテンシャルの高さを感じられる設定なのでしょう。アナログ・ミキサーの観念を継承して、自然にDAWと融合させたOnyx Blackbird。これはコンピューターがちょっと苦手な人でも自然にDAWへ入っていける配慮だと思います。彼らが目指す最終地点は、エンジニアが小難しく使うものではなく、ミュージシャンがハッピーに音楽を作るもの......そんなビジョンが感じられます。何よりMACKIE.らしい明るい音質は、一度でも魅了されたらもう買うしかないでしょう。

サウンド&レコーディング・マガジン 2011年2月号より)
MACKIE.
Onyx Blackbird
96,600円
▪周波数特性/マイク→モニターまたはメイン出力:10Hz未満〜80kHz(+0dB/−1dB)、ライン→モニターまたはメイン出力:10Hz未満~22kHz(+0dB/-1dB)、FireWire通過&マイク入力→任意出力(44.1kHz時):20Hz〜20kHz(±0.5dB)/21kHz(−3dB)▪最大入力レベル/マイク入力&ゲイン最小(0dB):+22dBu、マイク入力&ゲイン最大(60dB):−38dBu、ライン入力&ゲイン20dB:+22dBu、楽器入力&ゲイン20dB:+22dBu▪最大出力レベル/+22dBu▪入力ノイズ/マイク入力@インサート&ソース・インピーダンス、150Ω、20Hz~20kHz:-127dBu(60dBゲイン時)/-126.5dBu(40dBゲイン時)、マイク入力@インサート&ソース・インピーダンス、A-wight:-130.5dBu(60dBゲイン時)/-130dBu(40dBゲイン時)▪出力ノイズ(フォーン・メイン出力、ALT出力、モニター出力@ユニティ・ゲイン)/-91dBu(S/N:95dB、ref:+4dBu)、A-weight▪対応サンプリング・レート/44.1/48/88.2/96kHz▪外形寸法/482(W)×89(H)×216(D)mm▪重量/3.7kg

▪Windows /7/Vista/XP SP2、Pentium4/Cerelon/Athlon XP以上のCPU、512MB以上のRAM▪Mac /Mac OS X10.5 〜10.6.3、PowerPCG4以降のCPU、512MB以上のRAM