狙った音をナチュラルに収め宅録にも好相性のコンデンサー・マイク

SHUREBeta 27
1925年にシカゴで創業したSHUREは、マイクをメインにヘッドフォンやレコードのカートリッジでも知られるメーカー。特に、同社SM57/58は世界的に有名なダイナミック・マイクです。これら2製品を含むSMシリーズを受けて新たに作られたBetaシリーズは、軽量化が図られた上、指向性がより狭く設定されています。本稿で扱うBeta 27は、本シリーズ初めてのラージ・ダイアフラムのコンデンサー・マイク。実際に、そのパフォーマンスを見ていきたいと思います。

中域がしっかりとした
ドライでヌケの良いサウンド


まず、デザインは同社コンデンサー・マイクSM27と基本的に同じで、ほぼ同型のボディを採用。メッシュ部分はSHURE伝統の丁寧な作りです。収音部には24金を蒸着させた直径25mmの薄型ダイアフラムを搭載し、3ポジションのローカット・スイッチ、出力端子(XLR)への金メッキ処理など、同社KSM/SMシリーズと同様の仕様です。さて本機最大の特徴といえば、単一指向性をより狭くした指向性=スーパー・カーディオイドが採用されている点でしょう。ライブ時などのハウリングに強い設計ですが、録音でも単一指向性のマイクとは音の違いが出てきそうですね。今回は女性ボーカルと幾つかの楽器に、スタジオなどで定評のあるマルチパターンのコンデンサー・マイク、NEUMANN U87AIを単一指向性に設定し、同距離でセッティング。両機の音を比較しました。マイクプリには、NEVEなどのオールド卓に内蔵されていたパーツから組んだものを使用。まず自分の声でチェックしたところ、U87AIとほぼ同じ、高い出力レベルを持つマイクだということが分かりました。次に女性ボーカルで試すと、声量が小さいときはU87AIよりもヌケの良いドライな音を出力。子音が強調されるようなクセも無く、中域もしっかりしていて実に自然な印象です。一方、大きめの声でチェックした際には、両機間で音のヌケやドライさに、より大きな差が見られました。アコギで試した場合も同様に、アルペジオなどの控えめな音量よりも、コード・ストロークの大きな音を入力したときにその差が拡大。総合的に見てヌケや粒立ちの良さなど、Beta 27に分があるようです。

部屋の音響特性に影響を受けにくく
ナチュラルな音質をキープ


さて、ある程度大きな音を入力するとき、マイクの音質というものはヌケの良しあしや音の太さなど、機種本来の特徴だけでは語り切れなくなります。つまり、部屋の床や壁などに反射する音からの影響も多分に受けるようになるのです。両機にこれほどの差をもたらしているのは、こうした反射音なのではないでしょうか?そこで、比較的デッドな壁とライブな壁の前でテストを実施。音を聴いてみると結果は予想通り、2つのテストの結果に大きな差が無いのはBeta 27でした。本機が、単一指向性マイクよりも部屋の音響特性による影響を受けにくいことが判明しました。試しにドラムへのオフマイクや金管楽器に対するオンマイクなど、より大きな音でもチェック。入力音量が比較的低いとき、両機の出力レベルはほぼ同じなのですが、入力音量を高めるにつれ、やはりU87AIの出力レベルが増加。例えばドラムを収音した場合、U87AIのサウンドには距離感が出てくる上、音の密度が上がる感じがします。一方、Beta 27の音は入力音に左右されにくく、全体のまとまりが良好。よりナチュラルでクリアな印象でした。また金管楽器では、U87AIのサウンドが迫力のある感じなのに対し、Beta 27はスピード感が増していくイメージです。こういった音質差には、各マイクが部屋の反射音から受ける影響が反映されているわけです。両機の決定的な違いである指向性が音質にこれほどの差をもたらすとは、目からうろこです。Beta 27は、特にライブPA時のハウリングや音のかぶりなどを抑えるには効果絶大でしょう。またライブ録音や、同じ部屋で複数の楽器を同時録音する際にも非常に有効だと思います。リハーサル・スタジオのように環境の整っていない場所や、宅録では特に積極的に使っていけそうです。

サウンド&レコーディング・マガジン 2011年2月号より)
SHURE
Beta 27
68,040円
▪周波数特性/20Hz〜20kHz▪指向性/超指向性▪感度/−37dBA/Pa▪等価ノイズ・レベル/8.5dB SPL▪最大音圧レベル/134dB▪外形寸法/56(φ)×156(H)mm▪重量/428g▪付属品/スタンド・アダプター、変換ネジ、マイク・ポーチ