SDカードなど豊富な記録媒体に対応
大型ディスプレイは視認性抜群
本機は記録媒体にSD/SDHCカードおよびUSBフラッシュ・メモリーを使用します。実は、この記録媒体がキモで、ラックマウント・タイプのデジタル・レコーダーでSDカードを採用しているものがほとんどないのが現状です。多くはコンパクト・フラッシュやスマート・メディアが採用されています。近年、フラッシュ・メモリーは低価格になり入手しやすくなりましたが、コンパクト・フラッシュやスマート・メディアはパソコン専門店やカメラ専門店でしか扱っておらず、通信販売などでまとめ買い......なんてこともザラです。しかしSDカードは携帯電話の記録媒体に採用されたこともあり、コンビニなどでも入手可能。おまけに1GBあたりの値段もコンパクト・フラッシュやスマート・メディアより2〜3割安い。USBメモリーも同様、扱いやすさや入手のしやすさはSDカードに引けを取りません。スペックに関して、まず対応するファイル形式ですが、WAV(16ビット/44.1kHz〜24ビット/96kHz)とMP3(64〜320kbps)となっています。プロフェッショナル仕様ということで入出力端子も豊富です。アナログにXLR/RCAピン、デジタルにAES/EBU、S/P DIFが搭載されています。TOS LINK(オプティカル)が無いのがちょっと残念。ライブ・シーンでよく見かけるようになったデジタル卓と併用して使うときに、TOS LINKは使い勝手が良く、カードを追加している場合も多いと思うので搭載してほしかったところです。実際にはこれだけの入出力端子があれば現場で困ることもないでしょう。パネル中央に位置する液晶は日本語表示対応の大型有機ELディスプレイ。視認性は全く問題ありません。コントラストも調整可能なので、薄暗い舞台袖から日中の野外でも見やすいと思います。
奥行きと中域に広がりのある音質
オプションのリモコンも使い勝手◎
さて、実際に使用してみましょう。場所は筆者お決まりのライブ・ハウス柏PALOOZAにて、YAMAHA M7CL-48と合わせて使用してみました。パネルのボタン類は少なくすっきりしています。そのためか階層がよく考えてあり、直感的な操作が可能です。録音の設定はPRESETの項目で設定して、3つまで保存できます。実際に録音してみた感触ですが、PRESETさえ最初にキチンと設定しておけば即座に録音が始まります。回転軸を持った録音機材にありがちなプリロードの時間がないので快適です。音質面ではAES/EBUに比べXLRアナログ入力の方が音楽的な味付けがあるように思いました(24ビット/48kHzの場合)。多少奥行きがあり、中域に広がりがある感じです。実際には使用する環境(ケーブルなど)で激変すると思いますので参考程度に。2時間半ほどのライブを2回、8GBのUSBメモリーに録音しましたがノントラブル。即座にPCに挿し替えてファイルを確認できるのが強みです。また、microSDHC 4GBを100円で購入したアダプターに挿して使用しましたが、ちゃんと認識してくれました(5分ほど録音)。このDN-F650RにはオプションでRC-F400Sがあります(別売)。ポン出しに特化したリモコンで、20個のボタンにファイルを割り当て、瞬時にを再生することが可能です。もちろん、通常の音楽ファイル再生もできますし、早送りや巻き戻しもこのリモコンで操作可能。リモコンだけの機能ではないですが、個人的にありがたかったのが、再生を停止すると次のファイルの頭でスタンバイしてくれるモード。ダンス・イベントなどで、フェード・アウトした後に停止すれば次は再生ボタンを押すだけ、というのは便利でした。これは希望ですが、せっかく大きなリモコンがオプションとしてあるのですから、このリモコンから録音操作ができたら言うことなかったですね。ここまで使ってみた感想ですが、本機はほとんど可動部分を持たないため、CD-RやMDのようにメディアと再生機材の相性問題によるトラブルも格段に少なくなると思われます。ライブなどで一発録りの際にバックアップ的な使い方をしてもいいかもしれませんね。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2011年2月号より)