アンプ類をサブウーファー側に集約
簡単な設置で音量感のあるサウンド
L/Rを担当するサテライト・スピーカーは非常にコンパクトでかわいい大きさ。設置に困ることの無いサイズです。パッシブ・タイプで100mmウーファーと25mmツィーターから構成されています。一方サブウーファー(以下SW)はそれなりに重く(約20kg)、設置はちょっと大変ですが、200mmユニットで余裕の低域を奏でてくれそうです。個人的に、サブウーファーはある程度重量が無いと不要な箱鳴りをしてしまうことがあるので、その点ではコンパクトとは言ってもしっかりした作りに好感が持てます。本機のシステムは、ミキサーなどからの接続はすべてSW側に行い、サテライト・スピーカーのパワー・アンプもSWに内蔵されています。なお、サテライト・スピーカーはマイク・スタンドに接続できるほど軽く、壁などへのマウントも可能です。ミキサーなどからの入力端子やコントロール類はすべてSWの背面に装備されています。見たところ、サテライト・スピーカーのツィーターが上位機種と同じタイプに変わりました。上位機種の評判が良いだけに期待できます。アンプは60W×3(L/R/SW)。音を出してみるとSWのおかげか音量感があるので、自宅から中規模スタジオまで対応できそうな鳴りっぷりです。本機はSWを含むシステムのため、セッティングには若干の調整が必要ですが、説明書に分かりやすく解説されているので、初心者でも安心です。今回はSPLメーターもお借りしたので、厳密にL/RとSWのレベルを調整しました。まず、サテライト・スピーカーを通常のスピーカーと同じようにセッティング。SWはL/Rの中心付近の床に置きます。低域は指向性が弱いので、ある程度どこに置いても問題無いと言われていますが、反射によって指向性が強まることがあるので、その場合は向きや位置を変えるなどして探るとよいでしょう。自宅とスタジオの両方で試聴しましたが、どちらも設置に悩むことは無く、自宅ではSWをテレビの脇に置いても問題はありませんでした。
前に出てくるモニター的な音
密閉型ならではの濁りの無さもメリット
さて、肝心の音はパッと聴きで良い印象。全体的に派手で、前に出てくるモニター的な音と言えます。固めと言えば固めですが、ジャンル的にもオール・ラウンドで大丈夫な感じです。特にコンプの強いサウンドでは良い感触でした。中高域がはっきりしているため、音の粒が見えやすい印象です。最近のスピーカーが苦手とするディストーション・ギターなども良く鳴ってくれますし、センターの定位もしっかりしています。この音ならサウンド・メイキング用としては合格点です。ただ、高域はありますが、超高域の伸びは薄い感じです。この印象はYAMAHA NS-10Mに近いかもしれません。また、奥行きの演出や空気感は苦手な方だと思います。実際にミックスで使ってみましたが、いつもよりリバーブ・タイムを長く設定してしまう印象でした。一方、SWの低域は量感も含めとても良い印象。ブーミーにならず、かつタイトによく膨らんでいます。専用設計だけあって、サテライトとSWとのつながりも気になることはありませんでした。曲による低域の違いもよく分かります。この全体的な音の濁りの無さは、それぞれのスピーカーが密閉型というのもあるのでしょう(バスレフだと設置環境による濁り具合の変化が大きいのです)。スタジオでも、結構音が響く自宅でもそれほど印象は変わらなかったという点でも、密閉型が貢献しているのではないでしょうか。またサテライト・スピーカーには低域がカットされた状態で信号が送られるので、設置場所に影響されにくいのかもしれません。バランスの面では、小さい音量でも低域を感じることができる上、音量の変化でバランスが崩れないのも良い印象でした。さすがに上位機種タイプのツィーターを使っていることもあって、旧モデルがリスニング向けとすると、本機種はモニター的な音で、気持ち良く音楽制作ができるでしょう。前に出てくる派手めな音が好きで、低域を十分に感じたい人は、絶対に聴いてみた方が良いと思いますよ。小さい音でもはっきりしているので、自宅での映画観賞用としても欲しいと思えるスピーカーでした。