250以上のモデリングが搭載されたアンプ・シミュレーターの最新版

LINE6Pod Farm 2
ギター・アンプ・シミュレーターは、ハードウェア/ソフトウェア問わずすごい種類の製品が存在するが、中でも最も老舗と言えるのがLINE6だ。AxSysと呼ばれる、さまざまな種類のアンプをモデリングしたアンプを発表したのが、今からなんと14年前(余談だがその当時、筆者はそのアンプのデモンストレーションを行っているのです)。そしてその後にPodを発表。独特のルックスと、当時としては画期的な機能と音質で一世を風靡(ふうび)した。ソフトとしては、AVID Pro ToolsのTDM専用プラグイン、Amp Farmが、プラグインとしての使い勝手、音質、さらにスピーカー・シミュレーターとしての機能により、プロの間で大評判となった。ギターだけでなく、ひずみ系のプラグインの定番として、TECH21 SansAmpプラグインとともに現在でも君臨している。Pod Farmは、プラグインおよびスタンドアローンで動作するギター・アンプ関係のシミュレート・ソフト。アンプ関係だけでなく、コンパクト・エフェクター、ラック・エフェクターなどもフォローする統合システムとなっている。最近ではこの手の統合システムは珍しくなく、ライバル・ソフトも幾つかあるが、同ブランドの製品はさすが老舗だけあって、インターフェース、機能、音質共にかなり強力な仕上がり。今回リリースされたVer.2ではさまざまな機能が追加されている。

名機と呼ばれるモデルはほぼ網羅
プリアンプも6種類を用意


使用にあたっては、対応するLINE6のUSBオーディオ・ハードウェアもしくは、iLokによる認証が必要だ。スタンドアローン、RTAS/Audio Units/VSTプラグインとして動作する。製品には通常のPod Farm 2とPod Farm 2 Platinumがあるのだが、違いは単純にそれぞれのモデルの種類と数の違いとなっている。ここではPlatinumをベースに説明しよう。モデルの種類は大きく分けてギター・アンプ、ベース・アンプにそれぞれキャビネット、ストンプ・ボックス、オーディオ・エフェクト、マイクプリアンプとなっている。ギター・アンプの基となるモデルは、MARSHALL、VOX、FENDER、MESA/BOOGIE、ROLANDなどのおなじみのものから、ORANGE、DIEZEL Herbert、GRETSCH、など幅広いジャンルに対応している。それぞれのメーカーは、年代やモデルによって分けられている。またLINE6オリジナルのモデルも複数用意される。その数合計で何と78種類(!)ものアンプを用意。ベース・アンプだけでも28種類も装備されている。スピーカー部分のキャビネットもギター、ベース合わせて46種類。またそれぞれにマイクを4種類から選べるので、アンプとキャビネットとマイクの選択だけでも膨大なことになる。ストンプ・ボックスは、いわゆるコンパクト・エフェクターでこちらも種類は多い。コンパクトの部類では収まらないオーディオ・エフェクトも加えると97種類のエフェクトを搭載。名機と呼ばれるモデルは、ほぼ網羅されている。Pod Farmのオリジナルな部分としては、プリアンプ部が挙げられる。マイク・プリアンプは最近プラグインでは人気の分野だが、ギター関係のシステムに入っていることはあまりなかったことと、単体だと比較的高価なものが多かったため、ユーザーによってはこの部分に魅力を感じる人も多いだろう。NEVE、API、SSLなどを参考にした6種類のモデルを搭載している。なおモデル名に製品名は書かれていないので、最初は戸惑うかもしれないが、画面を見れば一目瞭然(りょうぜん)なので、実際のモデルをよく知っている人はすぐ分かるだろう。またPod Farm 2では、Dual Toneという機能があり、2系列のチェーンを使いこれらのアンプ/エフェクターを自由に組み合わせて配線を行うことができる。

直感的な操作が魅力のインターフェース
個別にアクセスできるElements機能


基本画面の中央上部から各モデルを選んで選択する(画面①)。201101PODFarm2_01.jpg▲画面① 選択画面。画面中央のスクロール・バーをクリックし左右に動かすことで、回転する仕組み。そして対象モデルを画面下のシグナル・チェーンにドラッグ&ドロップすると配線される選択方法は、ギア・ブラウザーと呼ばれるもので、最近のAPPLE iTunesなどでもおなじみの方法に似ている。スクロール・バーでアイコンを選択し、ドラッグやダブル・クリックで下の画面に登録する。ドラッグ&ドロップなら、配線されている各モデルの好きな位置に挿入できる。モデル数がかなり多いので、ジャンル分けのタブも用意されている。タブをクリックすると、さらにその中のモデルがポップアップで現れるので、アイコンではなく名前で探す場合はこちらの方がスマートだ(画面②)。201101PODFarm2_02.jpg▲画面② 搭載モデルが多いためジャンルで分かれたタブ画面も表示可能。あらかじめ設定したいモデル名が分かっているときに重宝するだろうこのタブは、アンプ、キャビネットというタブに加え、エフェクターの方は、ディストーション、モジュレーションなどの効果で分けられているので実戦的だ。配線が終わったら、下のモデルをクリックするか、上部のアイコンをクリックすればそのモデルのエディット・モードとなる(画面③)。201101PODFarm2_03.jpg▲画面③ 好みの設定にして配線が完了した画面。ここから音作りのためのエディット操作が可能になるDual Toneの設定もワン・クリックで行える。Dualにすると自動的にAB切り替え、もしくはマージするボックスが現れる(画面④)。もちろんすべての設定を記憶させプリセットとしてセーブもできる。あらかじめ幾つかの代表的なプリセットが用意されているので、それをエディットしても良いだろう。201101PODFarm2_04.jpg▲画面④ Dual Tone画面。2つのアンプおよびエフェクト信号チェーンを自由に組み合わせて配線することが可能。2つを同時にもしくは1つずつでも使用できるPod Farm 2には、Elementsという機能も用意されている。これはプラグインで使う場合、個別のモデルだけを使うことのできる機能で、CPUの負担の軽減化や操作の簡易化を実現している。とは言えすべてのモデルをそれぞれプラグイン化したらとてつもない数になるため、タグと同様に幾つか(11種類)のジャンルに分けてあり、プラグインのサブメニューでモデルを選ぶ方式となっている。

各モデルのサウンドを忠実に再現
MIDIコントロール可能なパラメーター


今回はAVID Pro Tools HDシステムでRTASプラグインとして実際に使用してみた。Pro To
olsの場合、RTASプラグインはオーディオ・トラックにインサートするとレコーディング状態では強制的にバイパスされてしまうので、いったんAUXトラックに立ち上げ、録音はそのトラックをバスアウトにして別のオーディオ・トラックに録音することになる。ゼロの状態から、モデルをスクロールし、まずアンプを選ぶ。コンボ・アンプを選んだ場合はそのままマイクが、アンプ・ヘッドを選んだ場合は自動的にそのアンプに合ったキャビネットとマイクが現れる。ここで例えばキャビネットだけ変更したいという場合は、新しいキャビネットを選択して下のそれにドラッグするだけだ。各モデルの上にはバイパス・ボタンがあるので、キャビネットをバイパスにしてスピーカー・シミュレートを使わないということも可能。キャビネットのエディット・モードでは、マイクの選択、設置場所なども変更でき、用意されているマイクは代表的なダイナミックとコンデンサーの4種類(画面⑤)。201101PODFarm2_05.jpg
▲画面⑤ マイク・モデルは上からSHURE SM57 On/Off Axis、SENNHEISER MD 421、NEUMANN U67肝心のサウンドは、アンプ部のチェックだけであまりの数に少々驚いてしまった。ストンプ・ボックスにもひずみ系は用意されているが、それほど種類は多くなく、ひずみはアンプで作ることを前提にしているせいか、かなりえぐいものもあった。個人的にはVOXのクランチ系がなかなか"ジャキジャキ"していて気に入った。クリーンではROLAND JC-120のモデルがかなり特徴をとらえていた。ストンプ・ボックスは各ジャンルこだわりの音をきちんと再現している。筆者はLINE6のPodシリーズやMシリーズなども使っているため、音の傾向はやはりそれに近い印象だ。フィルター系、モジュレーション系はどれもばっちり使えるサウンドだ。プリアンプは、アンプとの組み合わせで最終的に音作りをするのに役立つ。EQとして使うことになるが、それぞれの効きが違うため、いろいろ試してみるといいだろう。
プラグインの各パラメータは、ほぼすべてMIDIコントロールが可能。プラグインで使うなら、DAWの機能としてのオートメーションを使う方法もあるが、気軽に外部シンセやフット・コントローラーなどのMIDI機器からコントロールできるのは便利だ。コントロール・ナンバーのアサインもMIDI Learn機能でお手軽なので、ソフト・シンセ類を使っているユーザーではなく、生主体のギタリストでも楽に使えるだろう(画面⑥)。201101PODFarm2_06.jpg 
▲画面⑥ MIDIコントール画面。各パラメーターはMIDI機器での操作が可能201101PODFarm2_07.jpg▲画面⑦ Pod Farm Elementsのマイク・プリアンプ。画面はNEVEを参考にしたモデル。アンプ、プリアンプ、EQなどトータル11種類のプラグインを装備しているPod Farm 2は、とにかくエフェクトの数が多い。なおかつElements機能により、それぞれを独立して使えるので、ギター/ベースの録音だけでなく、ミックス時のエフェクトの選択肢がぐっと増えることになる。特にプリアンプ/EQはなかなか魅力的(画面⑦)。ボーカル・トラックやマスター・トラックにインサートして使って個性的なテイストを求めるならバッチリだ。そう考えるとギタリストだけでなく、現在のプラグインに一味加えたいすべてのユーザー向けの製品ともいえるだろう。 
LINE6
Pod Farm 2
オープン・プライス(市場予想 価格/12,800円前後、Platin um版36,800円前後)
▪Windows/Windows XP(SP3)/XP ×64(SP2)/Vista(32ビット/SP2)および64ビット(SP2)、Pentium 4 1.4GHz、1GB以上のRAM、1GB以上のハード・ディスク空き容量、CDまたはDVDドライブ、iLokバージョンはiLokキー必要 ▪Mac/Mac OS Ⅹ 10.4.6以降/G5 Dual 1.8GHz、1GB以上のRAM、1GB以上のハード・ディスク空き容量、CDまたはDVDドライブ、iLokバージョンはiLokキー必要