温かい音で中域にROYER独特の輪郭が見え隠れするリボン・マイク

ROYERR-101
よりパーソナルなレコーディングやアンプにはぴったり

ROYER R-101 オープン・プライス(市場予想価格/93,975円前後)1997年、"ただのビンテージ・リボンの復刻ではない。リボンの常識を覆すリボン・マイクロフォン"という触れ込みで登場したROYERリボン・マイクは、レコーディング現場で日常的にリボン・マイクが選択肢として挙げられるきっかけとなり、またリボン・マイクを使う際の第一候補としてすっかり定番となった。とにかくギター・アンプやドラムなどの大音量楽器にガンガン使っていける使い勝手。それとは裏腹にリボン・マイクらしい味わいのあるサウンドでユーザーを次々と獲得していった。そのROYERから名機R-121の弟分に当たるR-101が発売された。

全周波数帯域の特性をキープするRシリーズの特許技術を受け継いだ設計


本機もリボンの致命的短所とされてきた"耐高音圧"を見事にクリア。Rシリーズの定番、135dBの音圧に耐える性能とゴールド・メッキ・パーツ、ローノイズFETによる高S/N、高出力化でナチュラルなサウンドを引き継ぎつつ低価格化を図っている。先にも述べたように"弟分"と書くとスケール・ダウンしたかのように思われがちだが、本機が届きケースを開けた瞬間驚いた。サイズがRシリーズより一回り大きく、おなじみのシルバーではなく、同社SFシリーズのブラックに近いむしろ兄貴分といったたたずまい。本機はそのケースとおなじみのROYERマイク・ソックに入り、がっしりとしたショックマウント・サスペンションも付属。後にも述べるがこのショックマウントも含め、弟分と呼ぶのがはばかれるほどの充実度だ。そして、Rシリーズすべてに採用されている特許技術のオフセット・リボン・テクノロジーも採用。これは高SPL時でも全周波数帯域の特性をキープするというもので、同シリーズにも搭載されている2.5ミクロンのアルミニウム・リボンとネオジム磁石が使用されている(かなりの磁力なので絶対にハード・ディスクなどの近くに置かないこと!!)。早速アコギとボーカルに対し、同社R-121、R-122そしてSF-24と比較した。それとギター・アンプに対しては、R-121と本機にてチェックを行い、どちらのチェックもSSL JシリーズとNEVE1073のヘッド・アンプを使用した。

ディストーションでは密度の高い中域クリーンでは空気感が印象的なサウンド


最初は男性ボーカルでのチェック。ふっくらとした温かなサウンドは、まさにリボン・マイクそのもの。ルックスと同様、今までのRシリーズよりも低域に余裕がある。その漂うサウンドの中域に独特のROYERの輪郭が見え隠れする。R-121の洗練されたリボン感とはひと味違うが、ROYERらしい落ち着いたサウンドと言える。R-122やSF-24と比較すると、さすがにこちらの方がプリアンプ内蔵のためゲインが18dBほど高く、高域の伸びや透明感もあった。本機はよりロック・テイストの強い曲に向くサウンドである。次はアコギでのチェックを行った。おおむね先ほどのボーカルと似た印象だが、より低弦の響き、ボディの鳴りのゴツンとした感じやふくよかさはリボンならでは。アコギに関しては、R-121よりむしろR-122の方に近い印象を受けた。ふくよかな分ハイポジションに移ったときのレンジ感の差やマイクとの距離、サウンド・ホールとの角度が変わったときのレベル差を感じた。もちろん経年変化やエージング状態の差もあるのだが、上位機種の方がその辺りが整理された製品に感じた。 このボーカルとアコギに対しては、マイク裏面からのサウンドもチェックしてみた。同ブランドでは"2 Mic IN 1"と呼ぶほど、表と裏で異なるサウンド傾向が楽しめるのも特徴。裏の音は明るくなる傾向にあり、楽器やプレイによりそれを使い分ける(裏側は弱音楽器に限る)。サウンドには明るさが若干増し、ボトムの太い感じが少し抑えられた。筆者はR-121、122とも表側をメインにして使っているが、本機はこちらをメインにした方が音を作りやすい印象。最後にギター・アンプでのチェックだが、これが本機の一番得意かつRシリーズの名を引き継ぐものとしての使命を感じた。ディストーション・サウンドでは密度の高い中域とブーミー過ぎない扱いやすいサウンド。クリーンでは適度にピークを抑えた空気感のある音を聴かせてくれた。先ほども少し触れたが、今までのRシリーズのサスペンションでは難しかった、アンプに対し角度を付けることが容易になった。これにより何本かマイクを立てたときにも、ほかのマイクのセッティングを変えることなく、スピーカーに対しスムーズに角度を変えて狙うことができる。同様にさまざまな楽器へのアプローチも格段に円滑になった。またヘッド・アンプの違いでは、SSL Jシリーズの場合はインピーダンスを変えて受けられるので、ROYERの素直なサウンドのまま中域の充実度を調整することが可能。一方NEVE 1073では、サウンドにコクが生まれコンプ感が増し、一層味わいや時代感が付加される。当日はチェックできなかったが、真空管でドライブさせるヘッド・アンプでは、よりにじみや距離感、アコースティックな雰囲気が加わるのではと感じた。ストリングスなどの楽器で透明度の高いリボン・サウンドを狙うにはSFシリーズ。ポップ、ロックの全体像に味わいを加えるにはRシリーズの上位機種、そしてよりパーソナルなレコーディングやアンプには本機というイメージ。なおブラスやベース・アンプの録音にも相性が良さそうだ。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年12月号より)
ROYER
R-101
オープン・プライス(市場予想価格/93,975円前後)
▪指向性/双指向▪周波数特性/30Hz〜15kHz▪感度/−48dB(re.1v/pa) ▪出力インピーダンス/300Ω @1kHz(nominal) ▪最大入力音圧/135dB SPL(@30kHz) ▪外形寸法/36(φ)×200(H)mm ▪重量/483g ▪付属品/ショックマウント、専用ケース、マイク・ソック