ROLANDOcta-Capture

音質と機動性をバランス良く併せ持つオーディオ・インターフェース
ROLAND Octa-Capture オープン・プライス(市場予想価格/60,000円前後)DAWシステムのV-Studioシリーズなど、最近ROLANDがリリースする製品は、ソフトウェアだけでなくハードウェアに対する高い技術力とノウハウをユニークな視点でまとめたものが多く、とても興味を引かれます。今回チェックするオーディオ・インターフェースのOcta-Captureも、その高いポテンシャルで、ユーザーに新しい録音の可能性を提示してくれる魅力的な製品です。
V-Studio 700相当の高品位マイク・プリアンプを実装
Octa-Captureはその名の通り、新開発のマイク・プリアンプ“VS PREAMP” を8基搭載したUSB 2.0接続のオーディオ・インターフェースです。本体はコンパクトな見かけによらずしっかりした重量感があり、作りも丁重で、“いい音”がしそうな手触りがします。簡単にスペックを紹介すると、入力は前述の8つ以外にデジタル(S/P DIFコアキシャル)があり、全部で10ch。出力も同様にアナログ(TRSフォーン/バランス)が8つとデジタルの合計10chに加えヘッドフォン出力が1系統あります。そのほかMIDI IN/OUTも装備されています。入出力に関してはプライベート・スタジオでライン・ミキサーも兼ねて使用するのはもちろん、ちょっとしたバンドなどの録音までまかなうことができる数で、最近のオーディオ・インターフェースに最も多く見られる仕様です。ちょっと驚いたのが、24ビット/192kHzで録音/再生できること。入出力数がどちらもアナログ4chに限定されますが、あらためて最近のUSBオーディオ・インターフェースの基本性能の高さを実感しました。しかし、このようなカタログ上の数字だけではOcta-Captureの実力や魅力を表すことは不可能です。何といってもOcta-Captureの面白さは、誰もが簡単にマルチマイク&ライン・レコーディングを行えることにあります。そのことがどれくらい画期的なことなのか説明していきましょう。 まず、“これは特筆すべき!”と思ったポイントを挙げてみます。①V-Studio 700のプリアンプをベースに開発されたVS PREAMPを8基搭載②入力レベルの設定がオートマチックにできるAUTO-SENS機能③入力チャンネルごとに効きの良いコンプレッサーを装備④ステレオ4系統のダイレクト・モニター・ミキサーが内蔵されており、録音時にフレキシブルなモニター環境が構築可能(内蔵DSPによりモニター・リバーブもかけられる)⑤新開発のストリーミング技術“VS Streaming”により、ダイレクト・モニターを使わなくとも低レイテンシーのモニターが可能⑥2台まで同時使用が可能以上の点が筆者が特に良いと思ったポイントです。順番に詳しく説明していきましょう。
最適な録音レベルに自動設定するAUTO SENS機能
①VS PREAMP 前述したように、V-Studioシリーズのフラッグシップ・モデルであるV-Studio 700相当のハイクオリティなプリアンプVS PREAMPが8基も搭載されているのは一番のウリです。高品位な画像のように輪郭がクリアで、はっきりとした立体感があるそのサウンドは、ROLANDらしいポップでカラフルなイメージがします。ch1&2はハイインピーダンスにも対応しており、直接エレキギターやベースを入力可能。パキッと明るい音色で、アンプ・シミュレーターのかかりもいいし、そのまま使っても良い意味でラインらしい、1980年代後半に流行したような抜けのいいサウンドが得られます。またバス・ドラムなど広いダイナミック・レンジを持つ楽器の録音に対応できるように、ch7&8がほかのチャンネルよりも6dB程ヘッドルームを広く取ってあるのもユニークなポイントです。②AUTO-SENS機能 何といっても録音時に一番悩むのは、マイクのセッティングと録音レベルの設定ではないでしょうか。マイク・セッティングは経験を積むしかありませんが、このAUTO-SENSでは入力レベルを感知して自動的に録音レベルを設定できます(画面①②)。ビギナーだけでなく、プレイヤーとエンジニアを兼ねるような人にとっても、強力なアシストになってくれます。自動設定させたいチャンネルを選択してスイッチを押すだけの簡単操作で、検出したピークから最大の録音レベルを設定できるのです。調整信号なども使ってその感度を調べてみましたが、かなり信頼できる結果が得られました。もちろん録音レベルは音色やフレーズに応じたデリケートな判断が必要なものですが、リハーサル・スタジオなどで自分たちの演奏を録音する場合など、“とりあえずオーバーしないレベル”が簡単に設定できるメリットはとても大きいでしょう。楽曲中で一番音量が大きくなりそうなところをパッと演奏して検出させ、即録音なんてホントうれしいです。


コンプレッサーやミキサーを内蔵レイテンシーを抑える新技術も
③コンプレッサー ADコンバーターの後に用意されているデジタル・コンプレッサーもかなり積極的に音作りに使えます。アナログ・コンプのように質感を変化させるタイプではありませんが、音のエンベロープを整える感じでライン入力したギターやベースはもちろん、ボーカルのピークを抑えたりできます。反応も早いので、慣れればドラムやパーカッションにも十分使えます。オン/オフによる音質の変化やレイテンシーもほとんど感じられず、内蔵のDSPを使用しているのでコンピューターのCPUに負荷をかけることがないのもGood! このコンプの設定だけをプリセットとして保存できるともっとうれしいのですが、今後のバージョン・アップに期待しましょう。④ダイレクト・モニター・ミキサー 録音時に大切なのは、演奏しやすいモニター・バランスです。Octa-Captureにはステレオ4系統のダイレクト・モニター・ミキサーが内蔵されており、入力チャンネルからの信号をコンピューター(DAWソフト)を介さずに直接出力したり、これらとDAWソフトからの信号とのバランスを取って任意の出力端子に送ることもできます(画面④)。こうして文章にすると難しそうですが、ベースの人にはキックが大きめのバランス、ボーカルにはキーボードを大きめにして音程が録りやすいようにするとか、ドラマーにだけクリックが聴こえるようにするなど、パートごとで異なるニーズに応じることができるのです。またボーカルなど必要であればモニターのみに内蔵DSPによるリバーブをかけることも可能です。


▲リア・パネル。左から電源コネクター、USBポート、MIDI OUT/IN、S/P DIFコアキシャル入出力(96kHzまで対応)、ライン・アウト1〜8(TRSフォーン)、インプット5〜8(XLR/TRSフォーン・コンボ)
(『サウンド&レコーディング・マガジン』2011年11月号より)
ROLAND
Octa-Capture
オープン・プライス(市場予想価格/60,000円前後)
▪同時録音チャンネル数/12ch(192kHz時は4ch) ▪同時再生チャンネル数/10ch(192kHz時は4ch) ▪信号処理/24ビット(AD/DA)、40ビット(内部処理) ▪規定入力レベル/インプット1〜6(XLR)=−56〜−6dBu、インプット7&8(XLR)=−50〜0dBu、TRSフォーン入力=−46〜+4dBu▪規定出力レベル/+0dBu(バランス) ▪周波数特性/20Hz〜60kHz(192kHz動作時、+0/−2dB)▪ノイズ・レベル/−87dBu(Typ.、ゲイン最小、入力600Ω終端、IHF-A) ▪外形寸法/283.3(W)×50.4(H)×157.9(D)mm ▪重量/1.32kg(本体)
▪Windows/Windows XP Home&Professional/Vista/7、INTEL Core 2/1.6MHz以上のプロセッサー、1GB以上のメモリー(2GB以上を推奨)、DVD-ROMドライブ、USB 2.0ポート、WDM/ASIO 2.0対応※AMD M780G/M780Vチップセット搭載パソコンでは正常に使用できない場合あり ▪Mac/Mac OS X 10.4.11以降(付属ソフトCAKEWALK Production Plus Packは10.5.7以上)、INTEL Core以上のプロセッサー、1GB以上のメモリー、DVD-ROMドライブ、USBポート、Core Audio対応