Onyxの上位機種と同等のプリアンプを搭載した小型オーディオI/O

MACKIE.Onyx Blackjack
秀逸なプリアンプ部を持ったオーディオ・インターフェース

MACKIE. Onyx Blackjack 33,390円高級機にも匹敵するMACKIE. Onyxのマイク・プリアンプを搭載した2イン/2アウトの小型オーディオ・インターフェース、Onyx Blackjackが登場。早速この小さな箱に秘められた計り知れないパワーを検証していきましょう。これからオーディオ・インターフェースの購入を考えている方はもちろん、高品位なマイク・プリアンプを探している宅録ユーザーも必見です!

人間工学に基づいた快適な操作性高品位パーツを用いたシンプル設計


まず外観ですが、外形寸法は167(W)×64.2(H)×109.6(D)mmで、APPLE iPhoneを横に並べて2個半ほどの幅。さらに重量は0.7kgといった軽量小型サイズです。ボディの頑丈さを誇るパウダー塗装の金属シャーシに目を奪われます。ちょっとしたデスク・スペースにポンと置けるのはもちろん、ライブなどのハードな環境にも十分に対応できる点はうれしい限りです。さらに、人間工学に基づきフロント・パネルを25度の傾斜を持つ設計にしたことで、パネル部の視認/操作性を向上させており、実際に机の上に置いて検証してみたところ、確かに驚くほど快適にツマミ操作や背面インプット端子へケーブルの抜き差しが可能でした。インターフェースのツマミは特にレコーディング作業中は頻繁にいじる個所なので、このさり気ない配慮はありがたいです。常に手元近くに置きたくなるシンプルなデザインも大変気に入りました。まずは、本機のスペックを見ていきましょう。入出力部はリア・パネルにマイク/ラインのXLR/TRSフォーン・コンボ入力×2(INPUT1/2)、ステレオ・モニター用のTRSフォーン出力×1系統、USB端子×1、フロント・パネルにヘッドフォン端子×1といった構成になっています。ツマミ、スイッチ類は、フロント・パネルにプリアンプ部のゲインを調整するゲイン・ツマミ×2、ギターなどハイインピーダンス楽器の直接入力を可能にするHi-Zスイッチ×2、入力レベルを2色(緑/赤)で点灯させて過大入力を識別するSIG/OLLED、インプット・モニターを調整するTO MONツマミ、インプット・モニターをモノラル/ステレオで切り替え可能なMONO/STEREOスイッチ、48Vファンタム電源が供給可能なPHANTOMスイッチ、モニター音量を調節するMONITORツマミとPHONESツマミが装備されております。必要最低限の機能だけを凝縮したシンプルな設計ですが、2イン/2アウトで事足りるプロジェクトであれば、これ以上の機能は必要ないでしょう。むしろ、このクラス&価格であろうともMACKIE.の誇るOnyxマイク・プリアンプ部や114dBという驚くべきダイナミック・レンジを実現したCIRRUS LOGIC製AD/DAコンバーターといったプロフェッショナル・クオリティを存分に注ぎ込んだオーディオ・インターフェースといった印象です。

主要DAWにはもちろん対応DAWソフトTracktion 3も付属


では、次にOnyx Blackjackを使って実際にレコーディングを行ってみましょう。最初に本機をパソコンとUSBケーブルで接続します。Macユーザーはこれだけでスタンバイ完了ですが、WindowsユーザーはMACKIE.のWeb(www.mackie.com/jp/products/onyxiseries/drivers/)から最新のASIOドライバーをダウンロードしてインストールしましょう。さて、Onyx BlackjackはAPPLE LogicやSTEINBERG Cubase、ABLETON Liveなど主要DAWと互換性のあるドライバーに対応しているので、既にお使いのDAWで作業が始められます。またDAWを始めようと考えているユーザーには、音楽制作ソフトTracktion 3が付属されるので、購入してすぐにDAW体験ができます。Tracktion 3を立ち上げるとセッティング画面が現れるので、ここでサンプリング周波数を設定(画面①)。Onyx Blackjackは最高24ビット/48kHzに対応します。mackie_1▲画面① オーディオ・インターフェースのセッティング画面。左上のタブ"Setting"から設定することができるでは早速、入力ソースを録音していきましょう。まずはエレキギターのレコーディングを行ってみます。INPUT1へケーブルを接続し、Hi-ZスイッチをON(余談ですが、MACKIE.製品のHi-Zスイッチに記載されたギター・マークがなぜかJACKSON Warrior的変形ギターな点が毎回ツボです)。ギターを強めに弾いた状態で、SIG/OL LEDがオーバーロードして赤色に点灯しないようにGAINツマミを上げていきます。プリアンプ入力にはユニティ・ゲインを表すUの記号が記載されており、ライン入力の際はここを目安にすれば最適なライン・レベルの調整が行えるでしょう。MACKIE.のミキサーにはおなじみです。この状態でINPUT1の信号はTracktion 3の指定したトラックへ送られており、このままレコーディングを開始しても問題無いのですが、通常DAWからのモニターはレイテンシーが発生してしまい、せっかくのギター・プレイに支障をきたします。そこで活躍するのが、INPUT MONITOR部のTO MONツマミです。このツマミはスタジオ・モニターやヘッドフォンへのモニター入力信号として使われ、入力ソースをDAWを介す前にモニターできるためレイテンシーが発生しません。この場合、DAWからのモニター音はレベルを下げるなりミュートをしておきましょう。さらにMONO/STEREOスイッチをSTEREOに切り替えればINPUT1の信号をLに、INPUT2の信号はRへ振り分けられます。例えば、DAWからのベーシック・トラックを聴きながらギターをLchからモニターしたい場合や、ボーカル・レコーディングでヘッドフォンを片耳に当てて地声をモニターする際に重宝するでしょう。

プリアンプは驚きの高音質音の立ち位置が分かりやすい


さて、肝心のモニター・サウンドですが、正直これが一番の驚きでした。筆者はエレキギターのDIにAVALON DESIGN U5(倍ほどの価格)をよく使いますが、聴き比べてもそん色ないどころか、場合によっては、Onyx Blackjackの方が理想的なサウンドが得られるほどのクオリティ!中域がはっきりしていて存在感があり、音の立ち位置が分かりやすい印象です。ノイズも皆無ですね。人によって好き嫌いはあるにせよ、おおむねギター・レコーディングには非常に相性がいいと感じました。また、MACKIE.を使ったギター・レコーディングといえば、筆者も昔から行っているプリアンプ部で意図的にオーバーロードさせてひずみを得る荒技があります。もちろんOnyxBlackjackでも良好で非常に気持ちのいいクランチ・サウンドが得られました。といいつつ、この荒技はオフィシャルではないので自己責任で!次にコンデンサー・マイクを使ってアコースティック・ギターのサウンドも録ってみましょう。マイク・ケーブルを接続し、PHANTOMスイッチをON。これでファンタム電源が供給されます。先ほどと同じようにゲイン・ツマミで適正レベルを調整。こちらのサウンドも芯がありながら高域がキラキラしたサウンドが得られました。やはり、この価格帯のオーディオ・インターフェース付属のプリアンプとは到底思えない代物です。ここで、Tracktion 3への録音を開始しましょう。ルーティングは自動的にINPUT1へ信号が入っているので、そのままRECスタートするもよし、メイン・ウィンドウにあるloopsブラウザー(画面②)からドラム・サンプルを選んでトラックへドロップしてガイド・リズムにするのもいいでしょう。一通りレコーディングが終わり、プレイバックしたサウンドの印象も実に素晴らしいです! CIRRUS LOGIC製AD/DAコンバーターの威力を存分に生かしたダイナミック・レンジ、明りょうな音像はミックス作業にも貢献するでしょう。mackie_2▲画面② MACKIE. Tracktionのメイン画面。最大の特徴は、シングル・ウィンドウで構成されているところ。レコーディング、ミックス、エフェクト設定からマスタリングまですべてこの画面上で操作していく。画面左上の○の中に見えるloopsから気に入ったループを見つけ、右側にあるアレンジ・ウィンドウのトラックにドラッグする仕組み。ちなみに、自分で作成したループも簡単に検索できるように保存しておくことが可能最後にTracktion 3の概要に触れておくと、いわゆるメジャー系DAWをマルチディスプレイなどで慣れ親しんでいるユーザーには取っ掛かりが難しく感じるかもしれません。それはシーケンス・ウィンドウやミキサー、ループ・ブラウザーなどをシングル・ウィンドウにすべて統一している故なのですが、これに慣れると効率良くスムーズに操作できます。特にラップトップの小さな画面内で作業を完結しなければならないプロジェクトには持ってこいのDAWソフトなのではないでしょうか。エフェクト類も充実しており、エディットやループ・ベースでの作業も簡単に行えるので初心者の方でもすぐに使える印象でした。一通りOnyx Blackjackを使用してみた感想は、なんと言ってもプリアンプ部の秀逸さに引かれました。このクラス&価格帯のオーディオ・インターフェースに搭載されているプリアンプの中では間違いなくトップ・クラスのもので、レコーディングをメインにとらえてオーディオ・インターフェース選びをしている方にお薦めしたい逸品ですね。2イン/2アウトというスペックに物足りなさを感じるユーザーもいるかと思いますが、そこを割り切ってしまえば、コスト・パフォーマンスは抜群です。今までの経験上、MACKIE.製品に裏切られたことは無い筆者ですが、今回ばかりは裏切られました。もちろんいい意味でね!mackie_rear1

▲リア・パネル 左からUSB端子、モニター出力R/L(TRSフォーン)、INPUT2/1×2(XLR/TRSフォーン・コンボ)


『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年11月号より)
MACKIE.
Onyx Blackjack
33,390円
▪外形寸法/167(W)×64.2(H)×109.6(D)mm ▪重量/700g

▪Windows/Windows XP SP2/Vista/Windows 7、Pentium 4/Celeron/Athlon XP以上のプロセッサー、512MB以上のRAM ▪Mac/Mac OS Ⅹ 10.4.11以降/10.6.2、G4以降のプロセッサー、 512MB以上のRAM