パソコンとの連携もスムーズに実現する豊富な機能を搭載したMTR

ZOOMR24
SDカードを記録媒体にした24trミキサー一体型MTRを基本とした総合音楽システム

ZOOM R24 56,700円ZOOMから8月に発売予定のR24は、SDカードを記録媒体に使用した24trのミキサー一体型MTR、8イン/2アウトのオーディオ・インターフェース、DAWコントローラー、ループ・シーケンサー付きのパッド・サンプラーといった機能が統合された総合音楽制作システム! 制作におけるあらゆる欲求を余すことなく、しかも驚くべきハイコスト・パフォーマンスで満たしてくれるMTRです。もはやMTRと呼ぶには忍びない豊富な機能に脱帽することでしょう。早速、使い倒してみます!

あらゆる入力ソースに対応バンドの一発録りに重宝する


初めに、R24のスペックを見ていきます。本機リア・パネルには、XLR/フォーン・コンボ端子のINPUT×8。このうち、INPUT3~8はファンタム電源の供給が可能で、INPUT1はパッシブ・ギターなどの接続が可能なHi-Z対応。出力はステレオOUTPUTとヘッドフォン。本機右パネルには、コンピューターとUSB接続するUSB DEVICE端子、USBメモリーを接続するUSB HOST端子、SDカード・スロットを装備。次にフロント・パネル両脇の取っ手になる個所には内蔵ステレオ・マイクを搭載。このマイクの使用をONにすると信号はINPUT7/8に入力されます。インプット・セクションには、ゲイン・ツマミ、Hi-Zスイッチ、ファンタム・スイッチ、内蔵マイク・スイッチを搭載。フェーダー・セクションには、マスター・フェーダーを含めて計9個のフェーダーを用意。フェーダー上部にはMUTEやRECなどを選択するステータス・キーとトラック/マスター・インジケーターを搭載し、フェーダー下部には計8個のパッドとREPEAT/STOPキーを装備します。続いて、コントロール・セクション。ここには、RHYTHM、EFFECT、USB、TOOL、PROJECT、TRACK、1-8Tr、9-16Tr、17-24Tr、PAN/EQキーといった各メイン機能へ一発で飛べるように整然とスイッチが並べられており、非常に使い勝手が良い印象です。最後のトランスポート・セクションには、PLAYやRECのほかに、オート・パンチイン/アウト、A-B REPEAT、MARK CLEARといった主要キーを網羅。視覚的に分かりやすく、MTRを操作したことのある方ならすぐ使えそうですね。R24は16/24ビット、44.1/48kHzサンプリングのリニアPCM録音で、最大8tr同時録音、24tr同時再生を実現しています。それらの録音データはUSBメモリーか、SDカード(1GBのSDカード付属)へ記録します。最大で32GBのSDHCにも対応しているのはうれしいですね。では、早速エレキギターの録音を行ってみましょう。まず、PROJECTから新規プロジェクトを作成して曲名やサンプル・レートなどを設定します。次に、Hi-Z対応のINPUT1へギター・ケーブルを接続し、Hi-Zスイッチをオン。1-8Trキーを選択してtr1のステータス・キーを赤色に点灯させ録音待機状態にします。そして、最後にGAINツマミでレベルを調整し、これでRECを開始すればINPUT1からの信号はtr1へ録音されます。この状態で、9-16trキーを押せばtr9へ録音、17-24trキーを押してtr17へ録音といったルーティングも可能です。R24には、高品位なインサート/センド・リターン・エフェクトが豊富に内蔵されているので(表①)、せっかくなのでかけ録りをしてみましょう。ギター系インサート・エフェクトでは、クリーン/クランチからディストーションまで、何と60種以上ものパッチが用意されており、即戦力になるものから変態系までそろっております! ここでは、FENDER Twin Reverbとコンプを組み合わせたというパッチを使用します。ガイドとなる内蔵メトロノームをオンにしてRECスタート。終わったらステータス・キーを緑色のモニター状態にしてチェック。立体的なギター・サウンドが素晴らしいです。
R24_pic

▲表① ギター、ベース、ボーカルなどアルゴリズム別に7モジュールで構成されたインサート・エフェクトと2系統のセンド・リターン・エフェクト、トータル3系統を同時に使用可能今回は、録音時にエフェクトをかけ録りしましたが、もちろん録音済みトラックへのインサートも可能です。2本目のギターをオーバーダブする場合は、前述の9-16trキーでtr9へ録音するなどの方法もあります。また、ディスプレイ下部に表示されているSWAP機能を使えば録音済みトラックを任意の好きなトラックへ移動することも可能です。一通り、レコーディングを終えての感想としては、やはり8tr同時録音を活用してみたいと思わされました。8基のマイクプリを使用したスタジオでのドラム録りや一発録りにも重宝しますね。24tr同時再生の恩恵にあずかって、次々と録りためていきたくなります。

472種類ものビート・パターンを搭載ミックス作業も本体内で完結


さて、先ほどのレコーディング・セッションでは、まだリズムがなかったので、内蔵リズム・マシンも活用してみます。リズム・マシンには10種類のキットと472種類ものリズム・パターンがプリセットされており、さらにオリジナルのパターン作成もOK。パターン作成にはパッドをたたきながらリアルタイム入力とステップ入力が可能。また、リズム・パターンを任意のトラックへ入力できる点もうれしいですね。高品位なサウンドなので曲作りも楽しくなります。そして、R24に付属されたUSBメモリーには1.5GBに及ぶ生ドラム(超使えます!)やブレイクビーツのループが収録されており、ドラム・トラック制作には事欠きません。ドラムも加わって曲として出来上がったところで、この完成した曲を良い意味でぶっ壊してみましょう(笑)。本機の目玉と筆者が勝手に思っている8パッド×3バンクのサンプラー&ループ・シーケンサーの出番です。簡単に説明すると録音済みサンプル(または外部サンプル)をフェーダー下のパッドへ割り当てて、トリガーしながら好きなように演奏したり、その演奏をシーケンサーへ記録(リアルタイム/ステップ入力)して曲を再構築するというもの。言い換えるとR24がリミックス・マシンへ変貌する感じですね。操作法も至って簡単! TRACKキーを押してパッドへ割り当てたいトラックを選択し、サンプルをループ状態にして、スタート/エンド・ポイントを設定します。必要に応じてサンプルにタイム・ストレッチ処理、そしてパッドの奏法(ゲート、ワンショット、リピート)を選択。これで割り当て完了! あとは複数のパッドをたたきながら自由に曲を練るのも良し、ステップ入力でシーケンサーへ打ち込んで曲を完成させるのも良いでしょう。使用した感想は、録音したロックな曲をクラブ・ミュージック的な感じにリミックスする場合やバンドの音楽に一癖加えたい場合に有効なのではないでしょうか? ダンス・ミュージック制作には活躍しそうです!さて、最後のミックス・ダウン工程ですが、もちろんR24内で行えます。流れとしては、まず各トラックのレベル、EQ、パンやリバーブ/コーラス量などを調整し、最終的なステレオ・ミックスをMASTERトラックへ録音していきます。その際に重宝するのがMASTERトラックへインサート可能なマスタリング・エフェクト! 20種内蔵されているマスタリング・アルゴリズムはどれも秀逸で、驚くほど簡単に音圧を稼ぐことが可能でした。ちなみに、インサート・エフェクトには前述のギター・アンプ・モデリングやマスタリングのほかにも、8ch分のコンプ+EQを使える8×CompEQやステレオ・マイク用途にも使えるDual Micといった150種類ものプログラムを持つDSPエフェクトが搭載されています。いずれも録音時やミックスで積極的に使えるものになっています。

オーディオI/Oやコントローラー機能DAWとの連携もスムーズ


ここまで急ぎ足でR24単体の機能を紹介してきましたが、最後にR24とパソコンを相互連携させる機能を紹介します。R24とパソコンの連携には、主に3つのパターンがあります。まず、R24をSDカード・リーダーとして使用するパターン。この機能では、パソコンでR24内のSDカードをデータ管理できるため、完成した曲をパソコンへコピーしたり、R24で使いたいサンプルをパソコンからSDカードへコピーしたりすることが可能になります。非常に便利ですね。次にR24をDAWのオーディオI/Oとして使うパターンです。本機が8イン/2アウト、最高24ビット/96kHzの入出力可能なオーディオI/Oへ変身! これだけで製品になるほどありがたい機能ですね。DAW経験が無い方でもSTEINBERG Cubase LEが付属しているので、これから始めたい方にもお薦め。極めつけは、サンプリング・レートが44.1kHz時に限り、内蔵のインサート/センド・リターン・エフェクトも使用可能になることです! DAWソフトへのエフェクトかけ録りはもちろん、Hi-Zやファンタム電源も使えるのでパンやエフェクトが使える簡易8イン・ミキサー的な用途も考えられますね。そして3つ目は、R24をコントロール・サーフェスとして使用するパターン。本機がMackie Control対応のDAWコントローラーへ見事に変身し、R24のパネル上にあるフェーダーやスイッチを使ってDAWソフトを自在にコントロールできます。フィジカル・コントローラーが欲しい方にたまらない機能ですね。Mackie Control対応なので主要DAWソフトのほぼすべてを面倒な設定をせずに、24トラック/マスター・フェーダーの調整をすぐ行えます。オーディオI/O機能との併用もできるので、録音からミックスまでの主な操作をR24上からコントロール可能! 例えば入力楽器が多く、かつDAW操作をメインとしたライブなどでは、R24とDAWを核とした省スペース・システムのみで、面白いことができそうです。 ここまで機能が満載だと一体、R24をなんて呼べば良いのか分からなくなります(笑)。これは使い手を選ばない製品だなーと実感しました。一家に一台あれば便利とはまさにこのこと。R24_rear

▲リア・パネル。左からACアダプター端子、電源スイッチ、出力ボリューム、出力端子R/L(TRSフォーン)、ヘッドフォン・ボリューム、ヘッドフォン端子、入力端子×8(XLR/TSフォーン・コンボ)このうち入力3〜8はファンタム電源へ対応し、入力1はHi-Z入力を備えるので、パッシブ・ギターなどさまざまなソースに対応する


『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年9月号より)
ZOOM
R24
56,700円
▪最大同時録音トラック/8 ▪最大同時再生トラック/24 ▪録音フォーマット/WAV(16/24ビット、44.1/48kHz) ▪録音時間/1GBにつき200分(モノラル・トラック換算) ▪オーディオI/O接続タイプ/USB2.0 ▪オーディオI/O同時入出力数/8イン&2アウト▪オーディオI/O時の最大ビット数&サンプリング・レート/24ビット&96kHz ▪外形寸法/376(W)×52.2(H)×237.1(D)mm ▪重量/1.3kg

▪Windows/Windows XP SP2/Vista SP1/7、INTEL Pentium 4 1.8GHz以上、1GB以上のRAM、USB2.0ポート ▪Mac/Mac OS Ⅹ 10.4.11以降/10.5/10.6、INTEL Core Duo 1.83GHz以上、1GB以上のRAM、USB2.0ポート