充実した機能とコンパクトさを両立するLive用MIDIコントローラー

AKAI PROFESSIONALAPC20
ABLETON Live専用のコンパクトなMIDIコントローラー

AKAI PROFESSIONAL APC20 オープン・プライス(市場予想価格/30,000円前後)直感的な操作性で、音楽制作/ライブ・パフォーマンスのツールとして今や確固たる地位を築いているソフト、ABLETON Live。その専用コントローラーとしてAKAI PROFESSIONALとABLETONがタッグを組み共同開発したAPC40に続き、その機能をよりコンパクトに凝縮した弟分APC20が登場しました。ソフトの持つ柔軟性により、Liveの使い方は十人十色。それならばコントローラーの選択肢が増えるのもまた大歓迎。兄貴分APC40とも比較しつつ、じっくり見ていきましょう。

コンパクトになりながらも操作性は抜群ABLETON Liveでの設定も一瞬


まずは仕様から。サイズは295(W)×67(H)×334(D)mm。12インチのジャケットにも隠れるほどなので、レコード・バックにも収まりは良さそう。重量は1.8kgでAPC40よりだいぶシェイプアップされていますし、持ち運びにはちょうどいいですね。ボディはさすがMPCシリーズでおなじみのAKAI PROFESSIONAL。タフさには信頼感抜群です。ボタンやノブの作りもしっかりしています。ラップトップ・スタンドなどと併用すれば、よりコンパクトなセッティングになりそうです。そして、暗闇でのこのボタンの光り具合はかなり映えるでしょう。見た目がかっこいいのはモチロン、視認性も抜群。では、実際にセッティングしていきます。コンピューターとの接続はUSBケーブル1本。電源はACアダプターを使用するためパソコンに余計な負荷は掛かりません。ラップトップ・パソコンを使用する現場(クラブ/ライブ・ハウス)では予期せぬトラブルが付き物、不安要素はできるだけ排除しておきたいですよね。MIDIコントローラーのマッピングもトラブルが多いものの1つに挙げられます。徹夜でツマミをアサインしたのが、当日水の泡ってこともしばしば。しかし、このAPC20はなんと言ってもABLETON純正Live専用機! パラメーターのアサインも一瞬です! Live 8をインストールしていれば、ドライバー無しで対応します。設定は簡単、Liveの環境設定から"MIDI Sync"のタブをクリックして、ウィンドウ上部のコントロール・サーフェスからAPC20を選択するだけです(画面①)。
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▲画面1 ABLETON Liveの環境設定から"MIDI Sync"のタブをクリック。次に画面右上のコントロール・サーフェスからAPC20を選択するだけそれでは、コントロール部を見ていきましょう。APCシリーズの最大の特徴といえば、そのユーザー・インターフェースにあるでしょう。Liveの画面をそのままハードウェアに置き換えたとも言えるルックスです。既存のLiveユーザーならマニュアルが無くとも直感的に操作ができそうです。昨今、Live用と銘打たれたコントローラーが登場していますが、ここまで忠実に再現しているのは"APCシリーズ" だけではないでしょうか?その忠実さが操作性の良さに直結してくるのだと思っています。

5段×8列のボタンはLiveの画面に対応新たに加わったノート・モード


では、各セクションごとにチェックしていきます。まず目を引くのは5段×8列からなる40個のボタン。これはクリップ・ラウンチ・ボタンと言って、Liveのセッションビュー内(画面②)のクリップ(オーディオ/MIDI)を再生させたり、停止させるときに使用します。apc20_2▲画面② APC20を認識したABLETON Liveのセッションビュー画面。赤枠で囲われているトラックがAPCのクリップ・ラウンチ・ボタンと連動しているこのボタンの並びは、セッションビュー内に現れる赤い枠の中のトラックおよびスロットの配置をそのまま反映しており、クリップの状態によって点灯が色分けされています。無点灯は空のスロット、オレンジはクリップがセットされているが停止中、グリーンが再生中、レッドが録音中。これによりプレイ中の状況が一目で分かり、一度に複数のクリップを操作することも可能です。コンパクトになっても上位機種のAPC40とボタンが同じ数なのはうれしいところ。セッションビュー内の赤い枠はBANK SELECTボタンを使用して上下左右に動かすこともでき、より多くのクリップ・ボタンをカバーします。また、APC20ではノート•モードという機能が追加されました。これは一番右の列中段のNOTE MODEボタン(写真①)を押すことで機能します。この間、クリップ・ラウンチ•ボタンは無点灯になり、インストゥルメントやLiveの音源DRUM RACKを使用する際にボタンをMIDI鍵盤のように使えるようになります。あらかじめ、DRUM RACKにチョップしたビートやホーン系の鳴りものを仕込んでおき、ライブ・パフォーマンスや、DJ用途の際にワンショット・サンプラーとして使ってみたら面白いかもしれません。このノート・モードはAPC40には無かった機能で、40個のボタンの可能性をさらに広げていて非常に面白いと思います。まさに欲しかった機能!apc20_pic1▲写真① 5段×8列のクリップ・ラウンチ・ボタンから下のセクション。最上部がクリップ停止ボタン。一番右のSHIFTボタンと一緒に押せばすべてのトラックが停止する。SHIFTボタンの真下にあるのが新機能のNOTE MODEボタン。以降は順に各トラックのミュート・ボタン(ACTIVATOR)、CUE出力ボタン(SOLO)、各トラックを録音状態にする録音アーム・ボタンクリップ・ラウンチ・ボタンの右側にある縦に5個並んだボタンがシーン再生ボタンです。Live上の選択範囲の横一列を同時に再生することができます。例えば、各トラックをドラム/ベース/ピアノなど、楽器ごとにクリップを配置しておき、1段目にイントロ、2段目にAメロなどと展開を付けておけば、クリップ・ラウンチ・ボタンで楽器を抜き差しして、シーン再生ボタンで全押し状態!なんてときに重宝します。クリップ・ラウンチ・ボタンのすぐ下に並んでいるのがクリップ停止ボタン。各トラックごとの停止ボタンがマッピングされており、クリップ・ラウンチ・ボタンの範囲外が再生中でも停止させることができます。また、SHIFTボタンを押すことで全クリップ停止ボタンとしても機能します。ここまで紹介したボタン類がAPCシリーズの最大の特徴であり、核とも言えるところで、マウス1つでは不可能だったフレキシブルなコントロールを可能にしているところです。主にライブ・パフォーマンスで、そのポテンシャルを発揮するであろうセクションかと思います。

パンやセンドの動作まで担うスライダー複数台接続することも可能


APC20は音楽制作のツールとしても有効なコントローラーでもあります。もう一段下を見ていきましょう。パネル真ん中に並ぶ9個のボタンがNAVIGATION/TRACK SELECTIONになります。左からトランスポート•コントローラー。Liveの再生、停止、録音をコントロールできます。その右がMIDI OVERDUBスイッチのオン/オフ。そして前述した上下左右のBANK SELECTボタン、NOTE MODEボタンと並びます。これらのボタンも、SHIFTボタンを押すことで1〜8トラック/マスター・トラックを選択するためのボタンにもなります。NOTE MODEボタンの下にあるノブはCUE出力のボリューム調整に使用するCUE LEVELとなっています。いよいよ3つのセクションから成るパネル下部へ。上から各トラックごとのミュート・ボタン(ACTIVATOR)、SOLO(CUE出力)ボタン、録音アーム・ボタン(RECORD ARM)。そして、最下部のボリューム・コントロール・スライダーが並びます。今回驚いたのはこのボリューム・コントロール・スライダーです。APC40で言うところの右側、TRACK CONTROLセクションの役割までも担っています。つまり、各トラックのパン、センドA、センドB、センドCがアサインされているのです。ここでも大活躍のSHIFTボタンが登場します。8個の録音アーム・ボタンは、SHIFTボタンを押すことによってボリューム・コントロール・スライダーで操作するパラメーターの切り替えボタンとなっています。左からVOL、PAN、SEND A、SEND B、SEND C、そして、USER1〜3といった具合。ボリューム・コントロール・スライダーはタッチ・センス付きのムービング・フェーダーではないので、初めは戸惑うかもしれませんが、慣れてしまえば意外と使い勝手が良いです。ボリュームはそんなにいじらないという人は、最初からSEND EFFECT用のコントロール・スライダーと割り切ればいいと思います。ここまでは何かとAPC40とAPC20を比較してきてしまいました。どっちを買おうか迷ってしまった方、はたまた既にAPC40を使っているけれど、APC20も欲しくなってしまった方、ご安心ください、2台持ちOKです。共存できるんです。コンビネーション・モードと言って、なんと最大6台まで同時使用可能です。環境設定のリスト最上部から選択するコントローラーに、1台目tr1〜8、2台目にtr9〜16というように、8トラックごとにコントロールできちゃいます。このようなシステムを組むことで、今まで思いもつかなかったミキシング方法や制作方法が発見されて新しいモノが生まれる予感がしてきます。APC20はAPC40と比べツマミやボタンの数は少なくなっていますが、SHIFTボタンで表裏のチャンネル切り替えをすることで、限られたコントローラー部をうまく使っているな!という印象を得ました。コンパクトな中にも"APCイズム"が凝縮されていますね。機能的にも上位機種APC40に引けを取らないと思います。ノート・モードのこと一つとってもAPC20はよりライブ・パフォーマンス/リアルタイム・コントローラーとして特化していると言えるかもしれません。ABLETONユーザーでコレだ! というコントローラーが見つかっていない方、オススメします。何度も言いますが純正ですよ!(笑)。マチガイないです!apc20_rear

▲リア・パネル。左よりUSB端子、ACアダプター、電源スイッチ


『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年8月号より)撮影/川村容一(リア・パネルを除く)
AKAI PROFESSIONAL
APC20
オープン・プライス(市場予想価格/30,000円前後
▪外形寸法/295(W)×67(H)×334(D)mm ▪重量/1.8kg

▪Windows/Windows XP/Vista、Windows互換性サウンド・ボード/ASIOドライバー・サポート推奨、1.5GHz以上のプロセッサー、512MB以上のRAM(1GB以上を推奨)、QuickTime6.5以上推奨、DVD-ROMドライブ、USBポート ▪Mac/Mac OS Ⅹ 10.3.9以降(10.4以降を推奨)、Power PC G4以上のプロセッサー(INTEL製プロセッサーを推奨)、512MB以上のRAM(1GB以上を推奨)、QuickTime6.5以上推奨、DVDROMドライブ、USBポート