音源に応じて指向性やPADを細かく調整できるC414の最新モデル

AKGC414 XLS
同じ音源でもバリエーション豊富に集音可能なマイク

AKG C414 XLS 165,900円今回レビューするのは新しくモデル・チェンジしたAKGのC414 XLS。普段はAKGのマイクと言えばC451、C391、C480などを使うことが多く、同社のマイクには高域の広がった明るい音色のイメージがあります。自分がかかわるライブの現場ではC414シリーズはたまに見かけるくらいで触れる機会があまりなかったので楽しみです。

1本のマイクでさまざまに録れる9段階切り替えの指向性


まずケースの中を見ると、ポップ・ガードが入っています。マイク・ホルダーもワンタッチ式でショック・マウント下の部分を回転させるだけでしっかりと固定できる仕様。指向性の切り替えが前のモデルの5段階(無/単一/双/超/ワイド)から各指向性の中間への設定が加わり9段階になりました。またPAD(0/−6/−12/−18dB)とハイパス・フィルターも3段階と本機だけで細かい設定が行えます。ゲインのみのシンプルなマイクプリを使用する場合、高音圧の音源を録る際にゲインを絞りきってもピークが入ることがあるので、PADは重宝しそうです。"1本で何でも録りたい"方には持ってこいじゃないでしょうか。仕事で訪れたライブ・ハウスにC480 Bがあったので聴き比べてみました。単一指向にセットして自分の声で聴いた第一印象は"自然だな"という感じ。C480 Bは高域がフッと広がるような空気感があるんですが、本機は締まった低域と中域がしっかりあり、抜けが悪い訳でも高域上がりでもなく、耳で直接聴いた実音に近いです。とは言えハイエンドが無いわけではなく、中域の密度感が濃い印象で、マイクの近くでしゃべってみたときは中域が多少粗いかなと感じましたが、30cm程離してみるとそれも気にならなくなりました。とても音が近く感じ、50cmくらい離れても音源の輪郭がボケずにしっかりした音です。ハイエンドがもう少し欲しい気もしましたが、EQで補正できる範囲。EQのかかりがとても良く音が作りやすいので録りの時点でEQすると良いと思います。ポップ・ガード無しで使ってみましたが、吹かれには強くこのときは必要性を感じませんでした。

高域から低域まで密度が濃く"近い感じ"で録音可能


続いて各スイッチを試してみました。まず気が付いたのは、PADスイッチが押してもすぐに切り替わらない点。押してから5秒ほどでじわじわ切り替わります。"あんまり変わらないな"と思いどんどん押したところ、急に低域が無くなってびっくりしました。ハイパス・フィルターも40Hzずつ切り替わるのでとても使いやすいです。100Hzのみのハイパス・フィルターなどは普段まず使わないので実用的。ライブ時にエアー収音をしながら指向性を切り替えてみましたが、同シリーズに以前から搭載されている5段階はしっかり変わり、新しく設けられた"それぞれの中間"は前後どちらかの特性に寄った感じ。例えば単一指向と超指向の中間なら単一に近いです。5段階の中では、特に超指向を選択したときにしっかり空間が狭くなって面白く、指向性の切り替えが付いているタイプでも超指向は少ないのでこれはうれしいです。モノラルでエアー収音すると単一指向のときに若干高域が上がって聴こえますが、耳で聴いた感じに近いので、ステレオで立てればより耳で聴いた通りに録れるではと思います。さらにバンドのリハの立ち会いがあったのでいろいろな楽器で試してみました。まずギター。高域上がりのマイクだと特にひずみ収音の際うるさくなり過ぎるのですが、本機はその様子も無く、ギター・アンプから15cmほど離しても高域から低域まで密度の濃い音でしっかり録れました。これなら高域と低域に2本立てなくても十分。次に超指向でベースを収音してみましたが、音像が大きくなり過ぎず低域がぼやけることも無く締まった音で、これも好印象。かなり好みな感じで、ライブでも使っていきたい音色です。ドラムは太鼓ものとの相性が良く、超指向で録ったタムとキックは鳴りが良く特に好印象でした。そして最後にボーカル。男性、女性共に試してみました。音につやっぽい感じはあまり無いのですが、音が近くはっきり録れるので楽曲によってはバッチリ。離れてもしっかりした音なので歌いながら動きがちな人やマイクに慣れていない人の歌録りなどで使いやすいでしょう。ワイド指向でボーカルの50cmくらいにセットし、モノラル一発録りをすれば、ボーカルが楽器に埋もれることなく録れました。本機は同じ音源でもバリエーション豊富に収音可能。これまでスイッチが多いマイクに良い印象がなかったのですが、これだけ幅が広がるのは利点です。マイクを何本も購入するよりも、本機をステレオで購入すればさまざまな用途で使えるので、コスト・パフォーマンスに優れていると言えそうですね。そして個人的には、自分の耳に合うマイクが見つけられてうれしかったです。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年8月号より)撮影/川村容一
AKG
C414 XLS
165,900円
▪周波数特性/20Hz〜20kHz ▪最大音圧レベル/140dB SPL ▪外形寸法/50(W)×38(D)×160(H)mm ▪重量/300g