抜群の鳴りが特徴のモニター・スピーカーCMSシリーズの最小モデル

FOCALCMS40
フランスの新興メーカーによる小型パワード・モニター

FOCAL CMS40 オープン・プライス(市場予想価格40,000円前後/1本)新興のモニター・スピーカー・ブランドとして急速にその名を高めつつあるフランスのFOCALから、パワード・モニターの新製品、CMS40が発売された。238(W)×155( H)×155( D)mmで5.5kgと小型で軽量、価格も4万円前後。既にいろいろな小型パワード・モニターが各社から発売されて激戦区となっているこのゾーンで、FOCALはどんな個性を発揮してくれるだろうか? 早速、その実力のほどをチェックしてみた。

ヒップホップなどの音作りに頼りになる中低域の安定感が特徴


箱から取り出して設置してみると、あらためてコンパクトで、しかもなかなか高級感がある。キャビネットはアルミニウム・ダイキャストを黒くコーティングしてあるのだが、程良くつや消しされ銀色のツィーターとのマッチングもよく、渋い。正面にはパワー・スイッチとレベル・コントロール、背面はライン入力(XLR/RCAピン)、センシティビティ(+4/0/−10dB)とLF/HFのシェルビング(それぞれ−2/0/+2dBの切り替え)となっている。 スピーカーは4インチのポリグラス・コーン製ウーファーとアルミニウム・マグネシウム合金のツィーター(ドームが反転したデザインで同社のスピーカーの特徴になっている)、また正面下にはデュアル・フロント・ポートがあり、これによってパワフルな低域を再生しているという。なおゴム製のテーブル・スタンドやアジャスタブルなスパイクが付属し、素早く的確にセッティングできる。特にスパイクは簡単にモニターの仰角を変えられるので、とても便利。早速いろいろな音源を聴いてみた。まず驚いたのは、このサイズからは考えられないほどの鳴りで、音量をかなり上げても箱鳴りを全く起こさない。普通のホーム・スタジオならば音量不足になることはないだろう。また音量を上げても下げてもサウンドのバランスがあまり変わらないのにも感心した。中低域の安定感が大きな特徴で、量感たっぷりだ。さらに低域は量感だけでなく、スピード感もある。ヒップホップやクラブ系のサウンド作りで低域が焦点になるときでも頼りになるだろう。カタログでは60Hz以上となっているが、サイン波で50Hzまでは十分に音を聴くことができた。ただし40Hz以下となるとかなり薄くなる。重低音のためにはCMS Subのようなウーファーか、2サイズ大きなCMS65辺りが必要だろう。次にクラシック系の音源やシンプルなギターの弾き語り、小編成のジャズなどを聴いてみた。いずれも、余計な色付けの無い正確な音で、音像がとてもリアルだ。また、高域が奇麗に伸びているので、ピアノやアコギ、シンバル・レガートなどがとても気持ち良い。HF(4.5kHz以上)、LF(450Hz以下)は3段階でバランスの調整できるので、環境や好みによって調整するといいだろう。ただし音楽制作用には必ずベスト・ポジションをキープし、フラットな状態から調整することを勧める。また音に奥行きが感じられるのも本機の大きな特徴で、リスニング用のスピーカーとしてもジャンルを問わず楽しく聴けるだろう。

3エフェクトの効き具合が明確定位や音の前後も確認しやすい


さて実際に打ち込みと生録を試してみると、低音の音作りがやりやすい。このサイズのモニターでありがちな音量が出ない/すぐにブーミーになって不正確になるといった弱点がなく、サイズの大きなモニターと同じ感覚で音作りできる。低音の速さがはっきり聴き取れるので、アタックの部分が調整しやすいのが印象的だ。また、シンセやグリッチ的なサウンドでも超高域がよく聴こえ、音作りが新たな次元に入ったように感じる。また中域においても音の正確さは光り、生録音をするときのマイクの違いやマイクとの距離のとり方が如実に現れる。EQ、フィルター、コンプなどのエフェクトの効き具合が明確なために、自分の録音技術が上がったかのように感じられるのは大きな強みだろう。左右の定位だけでなく、音の前後も判断しやすいので、音源の配置が楽しくなる。それに加えてもう1つ、リバーブに関しても残響の種類やニュアンスの違い、リバーブの切れ際がはっきり聴こえる。FOCALのウーファー・ユニットに使われているコーン素材は非常に軽量で剛性が高いとされ、レスポンスの高さとひずみの少なさが切れの良さを生んでいるのだろう。同社のスピーカーについては、かねてから高い性能とリーズナブルな価格という評判を聞いていたので期待感があったのだが、実際に音を聴き、制作に使用してみて、完成度の高さと音の魅力に驚いた。余計な色付けがなく、音としての正確さがそのまま魅力につながっている。このサイズと価格帯のランクでは圧倒的な力を持っている。もし購入を迷うとすれば、同シリーズのCMS50やCMS65といったより大きなモデルとの比較になりそうだ。ぜひショップで実際に音を聴き、その優秀さに触れてほしい。高く推薦できる1台だ。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年8月号より)
FOCAL
CMS40
オープン・プライス(市場予想価格40,000円前後/1本)
▪周波数特性/60Hz〜28kHz▪最大音圧/97dB SPL▪外形寸法/238(W)×155(H)×155(D)mm▪重量/5.5kg(1本)