USBデバイスと柔軟に連携するマルチCDタンテ/DJミキサー

PIONEERCDJ-350/DJM-350
ホーム・ユースに最適なCDターンテーブルとDJミキサー

PIONEER CDJ-350/DJM-350 CDJ-350(写真左):オープン・プライス(市場予想価格/65,000円前後)DJM-350(写真右):オープン・プライス(市場予想価格/60,000円前後)世界中のDJたちから厚い信頼を得るPIONEERから、ホーム・ユースに最適なCDターンテーブルCDJ-350とDJミキサーDJM-350が同時発売された。両機共にUSBデバイス内の音楽ファイル再生に対応し、気軽にDJプレイをしたり、DJミックスなどをレコーディングできることが最大の特徴だ。本DJセット(写真①)を、早速レビューしていこう。cdj_pic1

▲写真① CDJ-350×2とDJM-350を並べてセッティングしたところ。3台合計しても、幅658mm、奥行き107mmという、コンパクトさ(各機の外形寸法の合計値)。このサイズなら、自宅のテーブルの上にも設置しやすいだろう。また、持ち運びの際にも、省スペース化が図れそうだ

拍やビートの位置を目視できるBEAT表示機能を搭載


まず、CDターンテーブルCDJ-350から紹介しよう。再生可能メディアはオーディオCDやMP3などを記録したCD-R/RWに加え、USBデバイス(フラッシュ・メモリー、ハード・ディスクなど)となる。出力端子はオーディオ・アウト×1(RCAピン)のみ。そのほか、2台の同社CDターンテーブルを自動的に交互演奏させることができる"コントロール・コード"を接続するコントロール端子×1とUSB端子×1、そしてトップ・パネルにUSB端子×1が備えられている。搭載された端子からも分かるように、本機最大の特徴は何と言ってもUSBデバイスを接続できる点だ。オーディオCDだけではなく、USBデバイス内の音楽ファイル(MP3/AAC/WAV/AIFF)が再生可能である。この価格帯の機種でこういった機能が搭載されていること自体、"すごい"の一言に尽きる! 興奮を抑えつつ、早速使用してみた。最初に、SOURCE SELECTボタンで"USB"を選択し、音楽ファイルを収めたUSBデバイスをトップ・パネル上のUSB端子に挿し込む。すると、ディスプレイがデータ・セレクト画面に切り替わる。後はSELECT PUSHボタンでファイルを開き、曲を選択していくだけだ。操作は非常に簡単で、説明書も不要なのでは?と思ったほど。選曲作業自体もCDを扱うときとさほど変わらずストレスが無い。また、本機には"Rekordbox"という音楽管理用ソフト(Mac/Windows対応)が付属しており、これを使うとさらに選曲が快適になる。このソフトでは曲のBPMやビート位置の解析、ジャンル分けやプレイリストの作成を行うことができる。また、解析した曲をUSBデバイスに転送し、本機に接続すると、ジャンル名やアルバム名、アーティスト名での選曲が可能になる。使い勝手も非常に良く、コンピューターへのインストール方法と設定が分かりやすいことに加え、コンピューター本体にストックされている音楽ファイルを素早く読み込んでくれるので、使い始めるまでがスムーズだった。操作画面はPIONEER製CDJのディスプレイのインターフェースを反映させたものなので、同社製品を使い慣れているDJは違和感なく使うことができると思う。ちなみに、リア・パネル上のUSB端子を使ってCDJ-350とコンピューターを接続すれば、そのコンピューター内のRekordboxに保存された曲のキューやループ・ポイントの呼び出しなど、同ソフトの操作を本機から行うことができる。CD、USB、コンピューターそれぞれの入力切り替えはSOURCESELECTボタンを使いワンタッチで行えるので煩わしくなく、プレイ中の混乱も無い。
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▲写真② BEAT表示機能はディスプレイ内"INFO" に反映され、1小節(8分音符単位)の長さを表す上下2つのインジケーターで構成される。上部は拍の位置を示し、下部は曲の進行に合わせて左から右に進む矢印型の表示で曲の再生位置を表す。この機能を使えば、音を視覚的にとらえられるので、ミックス時にも便利だろう操作系に関しては、実際のプレイで頻繁に使われるオート・キュー、ループ機能、ビート・キュー、マスター・テンポ、テンポ・チェンジなどの基本機能は完備されており、通常のプレイには十分過ぎるほど。中でもテンポ・チェンジは、±6/±10/±16%に加え、WIDE(±100%)もあるので、トリッキーなプレイをするDJは重宝するだろう(WIDEは音楽CD再生時のみ設定可能)。操作系の特徴としては、ディスプレイに備えられた"BEAT表示機能"(写真②)が挙げられる。これは曲の拍位置と再生位置を表示する機能で、ビートの位置を目で確認することができるため、音を視覚的にとらえながらスクラッチやループ・パフォーマンスができる。また、ループ・パフォーマンスといえば、本機には"ビートループ" "ループディバイド" "ホットループ"の3種類のループ機能が搭載されている。"ビートループ"は、再生中の曲のBPMに合わせて4拍のループ再生を繰り返すもので、"ループディバイド"は、ループ再生中に違うリズムのループ再生を行う機能。そして、"ホットループ" はループ再生中にループの最初に戻って再度ループ再生できる機能で、いずれもワンプッシュで操作可能だ。ループの出音も実に奇麗で、音のつなぎ目のノイズも気にならない。また、BPM LOCKボタンを押すだけで、再生中の曲のBPMをあらかじめ設定したマスターBPMに合わせられるBPMロック機能も便利だ。これを使えば初心者でも簡単にミックスを楽しめる。本機の使用感については、どのボタンもタッチ感触が良く、スライド幅が適切なTEMPOスライダーも滑らかに使える。ジョグ・ダイアルの操作感については、さすがにCDJ-1000やCDJ-2000のようなハイエンド・モデルと同等のスムーズさは無いが、もちろんプレイに支障をきたすようなものではない。ディスプレイもシンプルで分かりやすくできており、見やすい。

USBデバイスを接続するだけでDJミックスをWAVで録音可能


次に、DJM-350を紹介しよう。こちらは2チャンネルのDJミキサーで、入力端子は各チャンネルにフォノとCD(RCAピン)が1系統ずつと、さらにAUX×1系統(RCAピン)、マイク・イン×1(フォーン)が搭載されている。出力端子には、マスター・アウト1系統(RCAピン)、ヘッドフォン×1(フォーン)が備えられている。そのほか、コントロール端子を各チャンネルに1系統ずつ、そしてUSB端子×1を装備。非常にシンプルではあるが、コンパクトなボディに必要十分な機能がギュッと詰め込まれているという印象だ。本機の特徴はトップ・パネル右上のUSB端子だ。何と、この端子にUSBデバイスを接続しRECボタンを押すだけで、本機に入力された音をこのUSBデバイス内にWAVファイルとして録音できてしまうのだ。また、録音後にPLAYボタンを押すと、先ほど録った音が再生される。そのUSBデバイスをコンピューターに接続すると、当然、録音したファイルを再生/保存することができる。これは、自分のDJミックスをレコーディング/チェックするにあたって、実に手軽で便利な機能である。レコーディングの音質に関しては、ケーブルを介さず直接取り込んでいるだけあり、まさにそのままの音が録音されている感じで良い印象。そして、もうひとつの特徴はエフェクト機能だ。本機には"FILTER" "CRUSH" "JET" "GATE" の4種類のマスターにかかるエフェクトが搭載されている。使用法は極めて簡単。MASTEREFFECTセクションに配置された任意のエフェクト・ボタンを押し、LEVEL/DEPTHノブを回してエフェクト・レベルを調整するだけだ。直感的な操作法なので、DJプレイ中、自分の気分の高まりをダイレクトに表現できる。かかり具合も絶妙で、さすがはEFX-1000などの優れたDJ向けエフェクターを開発しているPIONEERである。各チャンネルに配置されたアイソレーター・タイプの3バンドEQも非常に有用。帯域別に+9〜−∞dBまで、幅広いレベル・コントロールが可能だ。DJミキサーの肝となる縦フェーダーやクロスフェーダーも、適度な重みと動きのスムーズさがマッチしていて気持ち良い。マスターの出音は、同社製品らしいシャキっとした音質が特徴的。ホーム・ユースに向けた製品とは言え、音はクラブでも通用する質だと思う。両機を組み合わせて使用した総合的な所感は、"快適"だった。無駄な機能は無く、必要十分な機能が搭載され、操作系の配置も分かりやすい。本製品群を使えば、初心者でも快適にDJプレイを楽しめるはずだ。また、音楽をデータとして持ち歩くUSB DJシステムとしても申し分無く、これからのDJに最適なセットだと思う。USBデバイスの利用は今後のDJスタイルの主流になっていくのでは?と思うほど、とにかく便利だった。とりわけ、個人的に最も衝撃的だったのは、"USBレコーディング機能"だ。音楽ソフトなどを使った煩わしい録音作業から一挙に開放されると思うと、レコーディング用にワンセット欲しいと思うくらい。さらに、楽曲制作やリミックス作業でフレーズ・サンプリングをしたり、CDJ-350のトリッキーな機能を使った音をサンプリングしたりするのに重宝しそうだ。初心者だけではなく、アナログ環境の煩わしさをよく知っている方が利用されるのも面白いのではと思う。各機は個別で購入可能だが、やはりセットで導入するのがよいと思う。並べてもコンパクトなので、家にセットするにはもってこいだろう。cdj_rear

▲CDJ-350のリア・パネル。左側からACアダプター、オーディオ・アウトL/R(RCAピン)、コントロール端子、USB端子を配置。コントロール端子を使い、2台の同社DJターンテーブルを接続すれば、オートで交互演奏させることができる


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▲DJM-350のリア・パネル。左側からACアダプター、マスター・アウトL/R×2(RCAピン)、CH2&CH1にフォノ/CDインL/R(RCAピン)とコントロール端子を1系統ずつ(フォーン)、AUXインを1系統(RCAピン)、マイク・インを配置


『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年8月号より)
PIONEER
CDJ-350/DJM-350
CDJ-350:オープン・プライス(市場予想価格/65,000円前後)DJM-350:オープン・プライス(市場予想価格/60,000円前後) 
●CDJ-350▪周波数特性/4Hz〜20kHz ▪全高調波歪率/0.006%▪SN比/115dB ▪外形寸法/220(W)×107(H)×288.5(D)mm ▪重量/2.3kg●DJM-350▪周波数特性/20Hz〜20kHz(CD/ライン/マイク) ▪全高調波歪率/0.007% ▪SN比/97dB(CD)、86dB(フォノ)、80dB(マイク) ▪サンプリング・レート/48kHz▪チャンネルEQ/HI:−∞〜+9dB(13kHz)、MID:−∞〜+9dB(1kHz)、LOW:−∞〜+9dB(70Hz) ▪クロストーク(LINE)/78dB ▪外形寸法/218(W)×107(H)×301(D)mm ▪重量/3.2kg