160以上のモデリングを含むアンプ・シミュレーターの最新バージョン

IK MULTIMEDIAAmplitube 3
レコーダーの機能も付加したアンプ・シミュレーター

IK MULTIMEDIA Amplitube 3 44,940円ギター・アンプ・シミュレーターの雄、Amplitube 3が発売された。まずはAmplitube 2からの変更点を挙げていこう。前シリーズであるAmplitube 2のアンプ・モデルはもちろん、Amplitube Jimi Hendrix、Amplitube Metalといった製品のアンプやストンプ・モデルなどをすべて搭載し、キャビネット/マイク/ラック・エフェクトなども充実。さらに、新たにモデリングされた30種類のアンプやエフェクト・モデルも加わり、その数何と合計160種類以上となった。そもそも、Amplitubeの使い方は、チューナー→ストンプ・エフェクト→アンプ→キャビネット→ラック・エフェクトという流れになっており、チューナー以降はそれぞれ2セット使用可能。動作はスタンドアローンのほか、VST、RTAS、Audio Unitsのプラグイン・エフェクトとしても動作する。では、実際にチェックしながら見ていこう。

新たに追加されたストンプ・エフェクトは最大12個の組み合わせができる


Amplitube 3で新たに加わった30種類のモデリングの中から特に面白そうなアイテムを見ていこう。最初はストンプ・エフェクト(画面①)。ik_1▲画面① ドラッグ&ドロップで入れ替え可能なストンプ・エフェクト。6つのモデルを1セットとして、最大2セット分のエフェクトを立ち上げることができる。"TapDelay"や"Step Filter" などが今回から加わったこれは最大6つの同時使用が可能だが、2ユニット使用できるので12個の組み合わせを実現。これだけの数をつなげると、実際のコンパクト・エフェクターだったらノイズが少し気になるところだが心配ない。例えば、"TapDelay"は8つの独立したディレイ・ポイントを持ち、かなり複雑なディレイ・エフェクトを得ることができる上、リバース機能やフィルターもあってかなり楽しめる。また、BPMシンクをONにしておけば曲のテンポに合わせた効果を得ることができる。"Crusher"は普通のディストーションよりも過激なひずみを得ることができるエフェクトで、サンプル・レートやカットオフ周波数を変化させるようなサウンドのため、ギターというよりはシンセに近いと感じた。ほかにも"StepFilter"など、今回新しく加わったストンプはどれもコンパクト・エフェクターというよりもむしろDAW用の高機能なプラグインといった印象であった。なお、それぞれのストンプはドラッグ&ドロップで簡単に入れ替え可能だ。続いてアンプ部分。こちらは、クリーン/クランチ/リード/ベースという4つのジャンルに分けられている。クリーンでは、新たにおなじみROLAND JC-120をモデリングした"JAZZ AMP-120"(画面②)が加わった。ik_2▲画面② ROLAND JC-120をモデリングした"JAZZ AMP-120"。ほかにも31種類のアンプ・モデルと46種類のキャビネット・モデルを搭載しているクリーン・トーンでコーラス/ビブラートをかけた音が絶品だ。ブライト・スイッチもよく効くし、実機JC-120のちょっと硬めだなぁと感じる部分もよく再現されている印象を持った。クランチ系でちょっと珍しいのがORANGE(画面③)のアンプ。これは1970年代にイギリスのロック・バンドが使っていたギター・アンプだ。MARSHALLと比べるとクリーン・トーンが幾分武骨な感じであるが、実際の音もゴリゴリッとしたイメージだ。F.A.C.という独自のパラメーター(低音カット)による独特のジャリッとした音はなかなか気持ちが良い。リードではAmplitube Metalから搭載されたMESA/BOOGIE Triple Rectifierのモデリングがなかなかいい感じ。モダンなひずみもこれでOKだろう。ik_3▲画面③ ORANGEを元にしたアンプ・モデル。アーティストにも使用者の多いアンプ・サウンドが手軽に味わえるのもシミュレーターならでは今回のバージョン・アップではベース・アンプも拡充されていた。トランジスターのハイパワー・アンプとして人気があったACOUSTIC 360は、ジョン・ポール・ジョーンズやジャコ・パストリアスが使用したことで有名で、ほかにもラリー・グラハムなどが使用していた。早速ベースを通してみるとなかなか良い。低音がかなりボーンと響く手応えだ。ファズは確かにエグいひずみが得られるが、ベース用ということもあって意外と芯はしっかりとしていて、音程感が失われることもなかった。ベース・アンプでもう一つ気になったのがGALLIEN-KRUEGERのモデリングである"Combo150MB"。小型アンプとして有名なこのモデルは低音がぐっと締まった感じで、オールマイティに使える印象だ。リハスタでおなじみのTRACEELLIOTのモデリングも追加された。

自由度の高いマイク・シミュレーターで部屋の響きや定位まで調整可能


メキャビネット部では、2本のマイクを選択し、そのレイアウトを自由に変えることができるようになった。マイクはダイナミック/コンデンサー/リボンという3つのカテゴリーに分類され、これまでの"Dynamic 57" "Condenser 87" "Dynamic 421"などスタジオの定番ものに加え、各ジャンルとも充実している。1つのキャビネットに対して2つのマイクのセッティングが可能になり、場所やレイアウトも自由自在。 ルーム・アンビエンスも音質/機能共にアップした。特にAmplitube Jimi Hendrixにも用意されていたリボン・マイクが2機種増えた。本物のリボン・マイクは状態の良いものだと高価で扱いにも気を遣うのでなかなか手が出ないが、シミュレーターなら安心だ。まずは、GROOVE TUBESVelo-8のシミュレート"Velo-8"を実際に使ってみた(画面④)。ik_5▲画面④ 2つのマイクを選んで自由に配置ができるキャビネット・シミュレーター。"Dynamic 57"などネーミングでニヤリとさせられる有名マイクのほか、リボン・マイクGROOVE TUBES Velo-8のシミュレートも加わったこれは何とも言えない独特のサウンドで、ダイナミック・マイクほど中域に寄らずコンデンサーほど冷たい感じもしない。音像がとても大きく、個人的に非常に気に入った。特にクランチ系の音だと、最も自然な感じで録れるだろう。複数マイクでのレイアウトは楽しいし音像が結構変わるが、これは実際にオケの中でいろいろ試したいところだ。単純にパンで定位させるのではなく、このマイク・シミュレーターで距離とレベルをちょっと変えて定位させるなんていうのも面白い。マイクの選択とレイアウト次第でサウンドも大きく変化する。ちなみに"JAZZ AMP-120"でコーラスをかけて2本のマイクでステレオ収録というのが、当たり前だがかなりいい感じだった。また、オンマイクのセッティングとは別にアンビエンス・マイクも用意されている。確かに圧倒的なリアルなルーム感を味わうことができた。そのほか、キャビネット部分には新たにロータリー・スピーカー(画面⑤)のシミュレートも加わった。ik_6▲画面⑤ LESLIE 122をモデリングしたロータリー・スピーカー。ギターだけでなく、オルガンなどのエフェクトとしても使える元はいわゆるLESLIEスピーカーだが、昔からギターをLESLIEで鳴らす人は多かったので、これはかなりうれしい。MIDIなどで回転速度を切り替えてやればより本格的になるだろう。レコーダー機能も搭載された総合エフェクト・パッケージ Amplitubeにはラック・エフェクター(画面⑥)も用意されている。コンプ、EQ、コーラス、リバーブなど全17種類を装備。エンジニア的なエフェクトが主だが、Amplitube 3では"Rezo" "StepFilter" "StepSlicer"など、かなりシンセ的な音色を狙えるエフェクトも搭載している。こちらもストンプ同様、ドラッグ&ドロップでエフェクトの順番を変えることができる。ik_7▲画面⑥ ストンプ・エフェクトだけでなくラック・エフェクトも装備。コンプレッサー/リバーブ/ディレイなど汎用性のあるものからステップ・フィルター類まで用意また、4trのレコーダーも搭載。多重録音はもちろん、ファイルの読み込み、さらに再生スピードを変えられるので、曲の耳コピでスピードを落とす、あるいは速めて再生するのにもいいだろう。さらに今回からブラウズ機能も搭載された。プリセット・ブラウザーで一覧&検索することができるようになり、セッティングが楽になる。また、プリセット・エクスチェンジ機能を使えば、IK MULTIMEDIAのユーザー・エリアで求めるプリセットを探したり交換することも可能だ。そのほか同社のStealth Pedalなどのハードとつなぐ際に便利なMIDIラーン機能の搭載や、CPU効率の高いエンジンによりストレスが軽減されたのも大きい。Amplitube 3は、これまでの同ソフトの各モデリングに加え、クオリティの高いエフェクトを搭載し、ギタリストだけではなくDAWで制作する人にとってもかなりお得感のある製品だ。特に空間系のエフェクターなどの使いでは相当あるだろう。実際ギターやベースだけでなく、エレピやオルガンなどにも積極的にかけたくなる魅力を持ったパッケージだと感じた。このように、本機は高機能で、いろいろな用途に使える。"複数のマイクプリが必要だ"という人は要チェック!である。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年7月号より)
IK MULTIMEDIA
Amplitube 3
44,940円
▪Windows/Windows XP/Vista/Windows7、1GHz以上のCPU(Intel Core Duo 1.66GHzプロセッサー以上を推奨)、512MB以上のRAM ▪Mac/Mac OS Ⅹ 10.4、10.5、10.6(PowerPC、Intel)、Power PC G4 Dual 1GHz以上のCPU(Dual 2GHz G5、またはIntel Core Duo 2.3GHzプロセッサー以上を推奨)、1GB以上のRAM(2GB以上を推奨)