ノート・パソコンと並べて置けるUSB MIDIコントローラー・シリーズ

ICONI-Key/I-Pad/I-Controls/I-Key
ミュージシャンやDJだけでなく、VJからも重宝されるMIDIコントローラー

ICON I-Key/I-Pad/I-Controls/I-Key(写真上段):6,825円I-Pad(写真中段):7,875円I-Controls(写真下段):7,875円MIDIコントローラーが進化して多様化・巨大化が進む中で、KORG NanoシリーズやNOVATION Nocturnをはじめとした製品が発売され、"ぱっと出してすぐ使える" 手軽さや設置のしやすさから、既に1ジャンルを確立するほどの人気を集めている"USB型ミニMIDIコントローラー"。今回紹介するICONの3機種は、こうしたUSB型ミニMIDIコントローラーのジャンルにカテゴリー分けされる。 ミニMIDIコントローラーにガジェットや初心者向けというイメージ、もしくは出先での作業など限定された用途を思い浮かべる方も居るかもしれない。もちろんそういった用途にも向いているが、筆者がこうしたコントローラーをよく見かけるのは、クラブやライブ・ハウスである。こうした場所では機材設置スペースや確保できる電源が限られていることが大半で、USB型ミニMIDIコントローラーが重宝される傾向にある。また、ミュージシャンやDJだけでなく、VJが映像をコントロールするのに使用されるケースも多い。制作時の使用に加えて、そうしたモバイル・パフォーマンス用途も考慮しながら、この3機種をチェックしてみたい。

コスト・パフォーマンスの高い鍵盤とリボン・コントローラーを配したI-Key


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▲写真① I-Key/I-Pad/I-Controlsには、ホワイトのほかブラック・カラーも用意されている。I-Padはトリガー・パッドも濃いグレーになるなど、デザイン性も考えられているので、好みのカラーを選択したい


I-Key/I-Pad/I-Controlsは、"perfectly match with MacBook"と銘打たれているだけあって、APPLE MacBook(13インチ)と合うようにサイズ設定されており、カラーも白と黒が用意されている(写真①)。さらに本国アメリカではオプションでMacBook Proとマッチするアルミ・カバーもあるくらいで、Macと並べて使うことへのこだわりが見られる。ちなみにICONは日本ではあまりなじみのないメーカーであるが、Webサイト(www.icon-global.com)を見ると、MIDIコントローラーだけでなく、オーディオ・インターフェースからミキサーやヘッドフォンまで、音楽制作に関係する製品全般を扱っているようだ。 では、ミニ鍵盤25鍵仕様のI-Keyから見ていこう。先述したように13インチのMacBookと同じ本体幅なので、最初はその見た目から弾きにくそうな印象を受けたが、意外にもすぐ慣れることができた。指にまとわりつくような感覚は無く、押し込むとすぐに底打ちするわけでもない、適度にストロークのあるミニ鍵盤だ。価格を考えるとコスト・パフォーマンスは高いと言えるだろう。鍵盤はベロシティ対応で、付属のiMapエディター・ソフト(画面①②③)でベロシティ・カーブの設定なども簡単に行える。icon_pic1▲画面① 付属のエディター・ソフトiMapは3機種ごとにそれぞれ異なるユーザー・インターフェースを持っている。I-KeyのiMapでは、鍵盤のベロシティ・カーブ(4種類)、サステイン・ボタン/リボン・コントローラーへのCCアサインなどが行えるicon_pic2    ▲画面② I-Pad用のiMap。パッド/タッチ・パネル/フェーダーへのMIDIノート/CCアサイン、ベロシティ・カーブ(4種類)の設定が可能。この設定はI-Pad本体のArtistボタンで切り替えられるicon_pic3▲画面③ I-Controls用のiMap。フェーダー/ノブ/アサイナブル・ボタンへのノート/CCアサイン設定が可能。設定は4つまで"レイヤー"として保存でき、本体のLayerボタンで切り替え可能。汎用DAWのテンプレート・レイヤーも用意このiMapは3機種すべてに付属する専用のアプリケーションで、前述したベロシティ・カーブの設定やコントロール・チェンジの割り当てなどが行える。例えば、ベロシティを127に固定することもできるなど、必要な設定項目はおおよそ網羅している。設定した項目は4種類まで本体に保存でき(I-Pad/I-Controlsのみ)、本体側からシーンを切り替えるように変更ができる。さて、I-Keyには鍵盤以外にサステイン・ボタン、ピッチ・ベンド/モジュレーション・コントローラーも付いている。サステイン・ボタンはiMapで任意のコントロール・チェンジに割り当てることができるので、通常のサステイン・ペダルの用途以外の利用も可能だろう。ピッチ・ベンドとモジュレーションはリボン・コントローラー方式になっており、タッチしているときだけ音色が変化する構造。特にピッチ・ベンドはレバーの抵抗が無い分、指でウニョウニョと音程を変えられ、ユニークなサウンドを作ることができる。I-Keyを縦に持ってメロディカのように弾き、ピッチ・ベンドやモジュレーションを駆使するようなライブ・パフォーマンスも面白いだろう。

たたき心地◎のパッドを備えたI-Padジョイスティックが個性的なI-Controls


次はI-Pad。ドラムなどの演奏に最適なトリガー・パッドを6個×2段=12個搭載し、左にロール/フラムとホールド・ボタン、そのロールをコントロールするタッチ・パッド、さらにフェーダーが1本付いている。トリガー・パッドはもちろんベロシティ付きで、本体サイズの割に大きめなのでたたき心地が良い。本体もほどよく厚みがあって、造りもしっかりしているので安定感があり、膝の上に置いてパッドを演奏することも可能だ。タッチ・パッドは横軸でロールの早さ、縦軸で音量をコントロールできるので、任意のプレイが可能だ。フェーダーはデフォルトでボリュームのコントロール・チェンジが割り当てられているが、iMapで任意のパラメーターをアサインできる。フィルターやディレイなどのプラグインにアサインしたフェーダーが1本プラスされるだけで、パッド・パフォーマンスの表現はぐっと上がるだろう。ちなみに、フェーダー右上にあるArtistボタンはiMapで設定したシーンの切り替え用だ。最後はコンパクトなボディに9本のフェーダーと9個のノブ、18個のアサイナブル・ボタン、トランスポート/シーン切り替えボタンを配置したIControls。仕様や操作子の数は他社の同サイズ製品とほぼ同等であるが、ユニークなのは左下に付いているスティックだろう。最初見たときは一体何に使うのかと思ったが、何とこのジョイスティックはマウスとして使用できる。操作感はジョイスティック独特のものであるが、今後のバージョン・アップでクリック・ロックができればプラグインなどのコントロールに積極的に活用することができるだろう。9本のフェーダーは形状やタッチがしっかりしていて使いやすい。コンパクト・サイズのフェーダーは2本指でつまんで操作するのが難しかったりするが、このI-Controlsはフェーダー部分が比較的大きいため、その操作が簡単にできる。また、フェーダーを激しく動かしてもパラメーターがジャンプするような不安定な動作も見受けられなかった。9つのノブは適度な重さがあり、実際にソフト・シンセをコントロールしたところ、隣同士のノブを同時に操作するときも指が当たりにくく、使い勝手がよく考えられている。ノブに突起が付いているためブラインドで位置が把握できるのも好印象。"ツマミをいじってます" 感が得られる。これら3機種共通の仕様として、I-Keyは専用ドライバー不要、I-PadとI-ControlもWindowsXP以外は専用ドライバーが不要で、最新のWindows 7でもそのまま使用することができる。もちろんUSBバス・パワーで動作するため、"パッと接続してすぐ使える" 仕様だ。ちなみに、3機種とも本体左側にUSBポートが2つ用意されているのだが、資料によると3台をデイジー・チェーンするためのものらしい。この辺も面白いアイディアが盛り込まれている。今回テストして感じたのは、他社から既に同サイズの製品も数種類発売されてはいるが、この3機種は後発の利を生かし、他社製品に無い機能をうまく盛り込んでいるということ。トラック制作はもちろん、ライブ用のモバイルMIDIコントローラーを選ぶ際にも十分選択肢となり得る存在だろう。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年6月号より)
ICON
I-Key/I-Pad/I-Controls/I-Key
I-Key 6,825円/I-Pad 7,875円/I-Controls7,875円
3機種共通▪接続方式/USB(タイプA-ミニB)▪付属ソフト/USBケーブル、MAGIX Samplitude SE、iMapソフトウェア⃝I-Key▪外形寸法/325(W)×33(H)×99(D)mm▪重量/560g⃝I-Pad▪外形寸法/325(W)×20(H)×99(D)mm▪重量/600g⃝I-Controls▪外形寸法/325(W)×20(H)×99(D)mm▪重量/510gす

▪Mac/Mac OS X(10.6対応)▪Windows/Windows XP/Vista/7(32ビット)