バーチャル・アナログによる野太い音が特徴のSHシリーズ最新シンセ

ROLANDGaia SH-01
同社シンセサイザーの原点とも言えるSHシリーズのニュー・モデル

ROLAND Gaia SH-01 オープン・プライス(市場予想価格/74,000円前後)ローランドのシンセサイザーの原点とも言えるSHシリーズの新モデルが登場しました! その名もGaia SH-01(以下Gaia)。かつてSH-1やSH-101が小型かつ低価格なシンセとして大ヒットし、後世に語り継がれる銘機となっていったように、歴史にその名を刻み込むことを宿命付けられたかのような型番。同時にギリシャ神話の大地の女神である"ガイア" の名を冠していることからも、ROLANDの意気込みが感じ取れますね。4年前に登場したSH-201の後継機的な位置付けで、往年のアナログ・シンセ同様、音作りの基本が分かりやすいパネル・レイアウト。久々に指先が騒ぐシンセサイザーの登場です!

3つのTONEを重ねて多彩な音作りフィルターやアンプもTONEごとに独立


本機で最初に驚いたのがその軽さでした。"これがシンセサイザー?"と思った程です。何とたったの4.2kg。手持ちのMIDIコントローラーのキーボードの方が重いと感じるくらいでした。緑パネル・レイアウトについて具体的に見ていきましょう。中心部の黄色の枠で囲まれた3つのセクションは左からオシレーター、フィルター、アンプで、それぞれに独立したエンベロープ・スライダーが付いています。これらはアナログ・シンセの音作りの流れに即した配置になっており、従来のシンセ・ユーザーにはなじみやすく、これからシンセを始める初心者にも分かりやすい構造となっています。 音源はバーチャル・アナログで、オシレーターで用意されている波形はノコギリ波、矩形波、パルス波、三角波、サイン波、ノイズ、SUPER SAWと7種類の基本波形があり、それぞれに3つのバリエーションがあって、VARIATIONボタンを押してWAVEボタン消灯→赤→緑と切り替えることで選択します。2つのツマミはピッチとデチューンをコントロールし、スライダーはパルス幅を直接変更するPW、LFOでパルス幅を調整するPWM(後述の青い枠に囲まれたLFOが関係するため、パネルでは青い文字で表記)、エンベロープ関連の計5本です。オシレーター同士のSYNC機能やリング・モジュレーターもあります。その右隣のフィルター部にはカットオフとレゾナンス、キー・フォローの3つのツマミ。カットオフはローパス/ハイパス/バンドパス/ピーキング/バイパス(フィルター無し)の5つのモードをボタンで選択し、それぞれのスロープを−12dB/octと−24dB/octの2種類から選べます。スライダーはエンベロープ関連の5本を装備。続くアンプ部は、レベルをコントロールするツマミとエンベロープ・スライダーで構成されます。さて、Gaiaのすごい点は上記の音作りの構造を"TONE"として3系統持っているところ(図①)。つまり、オシレーターを3つ持ち、その3つの出力に対してフィルターやアンプも個別にコントロールできるという点です。オシレーターは複数あっても、フィルターやアンプが共用のモデルは多いですが、Gaiaではそれぞれが完全に独立しています。つまりシンセ3台分の機能を持っているということなのです。ただしマルチティンバーではありません。3台分の音を合わせて1つの音としてぜいたくに使うのです。よって、凝ったフィルタリングを施したり、非常に豊かで厚みのある音や攻撃的な音を容易に作ることができます。パネルの左側にTONE1〜3の音をON/OFFするスイッチと、どのTONEをエディットするか選ぶSELECTスイッチがあります。SELECTスイッチは同時押しができるので、TONE1と2、1と3、2と3あるいは全部同時に押して任意のパラメーターを同時に調節することも可能です。SH-201やデスクトップ型のROLAND SH-32といった以前のモデルでは、2つのオシレーターのレベルを1と2のバランスという形で、ツマミもしくはスライダーで調整していたのですが、本機ではアンプ部のツマミで各オシレーターのレベルを個別にコントロールします。DJ的に言うと、クロスフェーダーでミックスするのではなく、チャンネル・フェーダーでミックスするという感じですね。青い枠で囲まれているのはLFOのコーナーです。本機ではピッチ/フィルター/アンプ用にフェーダーが個別にあり、煩わしいルーティングを必要とせずダイレクトにアクセスできます。従来機に比べてLFOのスピードをかなりスローに ローランドのシンセサイザーの原点とも言えるSHシリーズの新モデルが登場しました! その名もGaia SH-01(以下Gaia)。かつてSH-1やSH-101が小型かつ低価格なシンセとして大ヒットし、後世に語り継がれる銘機となっていったように、歴史にその名を刻み込むことを宿命付けられたかのような型番。同時にギリシャ神話の大地の女神である"ガイア" の名を冠していることからも、ROLANDの意気込みが感じ取れますね。4年前に登場したSH-201の後継機的な位置付けで、往年のアナログ・シンセ同様、音作りの基本が分かりやすいパネル・レイアウト。久々に指先が騒ぐシンセサイザーの登場です!3つのTONEを重ねて多彩な音作りフィルターやアンプもTONEごとに独立 本機で最初に驚いたのがその軽さでした。"これがシンセサイザー?"と思った程です。何とたったの4.2kg。手持ちのMIDIコントローラーのキーボードの方が重いと感じるくらいでした。パネル・レイアウトについて具体的に見ていきましょう。中心部の黄色の枠で囲まれた3つのセクションは左からオシレーター、フィルター、アンプで、それぞれに独立したエンベロープ・スライダーが付いています。これらはアナログ・シンセの音作りの流れに即した配置になっており、従来のシンセ・ユーザーにはなじみやすく、これからシンセを始める初心者にも分かりやすい構造となっています。 音源はバーチャル・アナログで、オシレーターで用意されている波形はノコギリ波、矩形波、パルス波、三角波、サイン波、ノイズ、SUPER SAWと7種類の基本波形があり、それぞれに3つのバリエーションがあって、VARIATIONボタンを押してWAVEボタン消灯→赤→緑と切り替えることで選択します。2つのツマミはピッチとデチューンをコントロールし、スライダーはパルス幅を直接変更するPW、LFOでパルス幅を調整するPWM(後述の青い枠に囲まれたLFOが関係するため、パネルでは青い文字で表記)、エンベロープ関連の計5本です。オシレーター同士のSYNC機能やリング・モジュレーターもあります。その右隣のフィルター部にはカットオフとレゾナンス、キー・フォローの3つのツマミ。カットオフはローパス/ハイパス/バンドパス/ピーキング/バイパス(フィルター無し)の5つのモードをボタンで選択し、それぞれのスロープを−12dB/octと−24dB/octの2種類から選べます。スライダーはエンベロープ関連の5本を装備。続くアンプ部は、レベルをコントロールするツマミとエンベロープ・スライダーで構成されます。さて、Gaiaのすごい点は上記の音作りの構造を"TONE"として3系統持っているところ(図①)。つまり、オシレーターを3つ持ち、その3つの出力に対してフィルターやアンプも個別にコントロールできるわけだし、あえてシンプルなデザインにした潔さなのではないかと思います。▲図① Gaiaのブロック・ダイアグラム。ご覧の通り、3つのTONEにはオシレーター/フィルター/アンプ/LFOが独立して用意されているので、音作りの幅は非常に広い。エフェクトも5種類が同時にかけられるぜいたくな作りだエフェクトはアンプ部を経てミックスされた音に対して、ディストーション系/モジュレーション系/ディレイ/リバーブ/ローブーストの5種類が同時に使えます。パネル左端にはおなじみのDビーム・コントローラーもあり、ピッチやエフェクトの操作が可能。入出力にはセンター・キャンセリング機能のある外部オーディオ入力、そして2系統のUSB端子も装備し、1系統はコンピューターとUSB接続してオーディオ/MIDIインターフェースとして機能させることができます(Windows/Mac対応)。もう1系統のUSB端子は、パッチやフレーズを保存するUSBメモリー用です。

SUPER SAWの太く攻撃的な音エレクトロ・サウンドにも最適


さて実際に演奏してみましょう。プリセット・パッチではのっけから3系統の音を駆使したファットな音を聴くことができます。パッド系の音も非常に深みがあるし、風のようなエフェクティブな音色にも水滴の音が混じるなどして表情豊かです。TONE1と2だけを使ったパッチもありますが、TONE3をONにすればさらにデチューンの効いた音が加わり、豊かな音になることを即座に実感できる心憎い演出もあったりしました。個人的にここしばらくはパルス波にハマっているのですが、SH-201ではLFOのパートにあったパルスワイズ・モジュレーションが本機ではオシレータ部にあってじっくり使える感じがしました。同社のJP-8000/JP-8080で有名になった、7種類のノコギリ波が同時に鳴ってるようなSUPERSAWも健在。派手めなダンス・ミュージック向けの非常にアグレッシブな音です。各種ツマミはコーティングが施され、指になじんで触っていて気持ちいいし、各スライダーの動きには適度な重みがあって、微調整しやすい上にちょっと触れたくらいではズレたりしないのもうれしいです。違うタイプのフィルターをかけたトーンを混ぜ合わせたり、トーンごとに異なったポイントでピーク・フィルターをかけたものを重ねるといった芸当ができるので、ピキピキ鳴りつつも太い攻撃的でロッキンなエレクトロ・サウンドなんかもすぐ作れちゃいました。これ、今風のエレクトロをやりたい人にはかなり向いてると思いますよ。また、レゾナンス発振させてフィルター・カットオフを動かした際の反応が進化しており、滑らかに変化していく印象。全体的にツマミを動かしたときの音の変化が自然で、音作りをスムーズに行えるでしょう。こそれとLFOをかける先のピッチ/フィルター/アンプが独立してる点がかなりのヒット。それぞれ交互または同時にかけたりしながらレートをツマミでグリグリするというフレーズ作りに相当ハマってしまいました。今はLFOな気分で、テクノやエレクトロのシーンでもLFOを多用した動的なフレーズを多く耳にするので、こんな風にダイレクトに操作できるって素晴らしい! 速攻で1曲分のシンセ・パートを録音しちゃいました。あー楽しいなあ!! アナログ・シンセの構造を知っている人なら取扱説明書無しで扱えるシンプルな構造は、初心者に対してもサウンド・メイキングのプロセスを理解する上で非常に優れた設計とも言えるでしょう。触りたいパラメーターに即時にアクセスできて、単一の機能を持つツマミやフェーダー操作するアナログ・シンセ的な快感は、液晶パネルの表示を見ながら機能を切り替えていくワークステーション・タイプには無いものです。しかしあらためて見てみると、こういうインターフェースを持つ国内のハードウェアのシンセサイザーってほとんど無くなってしまいましたね。そんな中でこのGaiaはまさにシンセサイザーらしいシンセサイザー。単三電池×8本で駆動させることもできるので、ライブ・パフォーマンスでも場所を選びません。アナログ・タイプのシンセに欲しいと思われる機能をすべて盛り込んだと思われるGaia。同社の原点回帰であると同時に、最新の技術を投入した集大成とも言えるモデルなのではないでしょうか。roland_gaia_rear
▲リア・パネル。左からDC IN、ヘッドフォン、アウトプットR&L/MONO(TRSフォーン)、フット・ペダル、MIDI OUT/IN、そしてUSB×2(コンピューター接続用、メモリー用)といった端子群が並ぶ

『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年6月号より)
ROLAND
Gaia SH-01
オープン・プライス(市場予想価格/74,000円前後)
▪鍵盤数/37(ベロシティ対応) ▪最大同時発音数/64音 ▪音源/バーチャル・アナログ ▪TONE/3(オシレーター+フィルター+アンプ+各エンベロープ+LFO) ▪パッチ・メモリー/プリセット×64、ユーザー×64 ▪オシレーター波形/SAW、SQUARE、PULSE/PWM、TRIANGLE、SINE、NOISE、SUPER SAW ▪オシレーター・エンベロープ/ATTACK、DECAY ▪オシレーター・モジュレーション/OSCILLATOR SYNC、RING MODULATION ※トーン1のOSCにトーン2のOSCがモジュレートされる ▪フィルター・タイプ/LPF、HPF、BPF、PKG(−12dB/−24dB) ▪フィルター・エンベロープ/ATTACK、DECAY、SUSTAIN、RELEASE ▪アンプ・エンベロープ/ATTACK、DECAY、SUSTAIN、RELEASE ▪LFOシェイプ/TRIANGLE、SINE、SAW、SQUARE、SAMPLE&HOLD、RANDOM(テンポ・シンク機能付き) ▪エフェクト/DISTORTION、FUZZ、BIT CRASH、FLANGER、PHASER、PITCH SHIFTER、DELAY、PANNING DELAY(テンポ・シンク機能付き)、REVERB、LOW BOOST ▪コントローラー/ピッチ・ベンド&モジュレーション・レバー、Dビーム・コントローラー ▪アルペジエイター/プリセット・パターン×64 ▪フレーズ・レコーダー/ユーザー×8、トラック数×1 ▪電源/DC9V:ACアダプターまたは充電式ニッケル水素電池単三形(別売)×8 ▪外形寸法/689(W)×100(H)×317(D)mm ▪重量/4.2kg(ACアダプターを除く)