響きを調節可能な音響パネルとコンデンサー・マイクのバンドル製品

SE ELECTRONICSX1 Home Studio Bundle
ラージ・ダイアフラムを採用したコンデンサー・マイクとリフレクターのセット

SE ELECTRONICS X1 Home Studio Bundle オープン・プライス(市場予想価格/31,500円)今回紹介するSE ELECTRONICS X1 Home St
udio Bundleは、ラージ・ダイアフラムを採用したコンデンサー・マイクのX1と、Project Studio Reflexion Filter(以下、PSRF)をセットにしたバンドル製品です。PSRFはマイクの周りを覆うような形のパネルで、部屋の形状や材質による不要な反射音の影響を軽減できるとのこと。早速、その音の変化を試してみましょう。

ダイアフラムはハンドメイド気合いが感じられるまじめな作り


X1を手に取ってみると、この価格帯ではあまり見かけないブラック・ラバー塗装仕上げで、重量感を含めその高級感はなかなかのもの。しかも、1インチ(約25mm)径のハンドメイドによるラージ・ダイアフラムから、ボディまでを自社工場で生産というまじめさ。製作者の気合いを感じさせてくれます。指向性は単一で、スイッチ類は向かって左側に−10dBのPAD、右側にベース・カット・スイッチとシンプルな構成。最大SPLも125dBと必要にして十分です(NEWMANN U87AIとほぼ同じ)。PSRFは、上から見ると半楕円形で大きさは縦30cm、横36cm、奥行き20cmくらい。マイク2本は楽に囲えます。これは既発のReflexio
n Filter Proのエントリー・モデルになりますが、同じポリエステル・フォーム素材が採用されていて、円柱状に加工されて並んでいます。外側が少し固くて押し込むと柔らかい不思議な触り心地です。またマイク・スタンドに直接マウントでき、ネジ穴のサイズもAKG規格の3/8インチ・タイプなのでほとんどのマイク・スタンドに付けられます。

ミックスしやすい存在感のボーカルにアコギもエフェクター的に太くなる


それでは、U87AIと比較しながらチェックしていきます。マイクプリはN-TOSCH SSL SL4000
E HAバージョンです。まずは男性ボーカルの方に、PSRF無しでマイクから7cmくらいの距離で歌ってもらいました。第一印象は、U87AIと比較すると明るくて輪郭がはっきりした音だなというもの。5kHz辺りから2dBほどなだらかに上がっている感じです。ただ個人的には、もう少し温かみを感じる帯域と、明るさを感じさせてくれる帯域との音のつながりがある方が好みなので、3cmくらいまで近づいてもらうと、いい感じの近接効果で300Hzくらいが軽く膨らんで、明るく温かい声になりました。次に10畳くらいの軽く響く部屋でPSRFを使用してみます。PSRFとマイクは30cmくらいの距離にセット。これは歌ってもらいながらPSRFを1mくらいの位置から徐々に近付けていき、音像が安定してきたと感じた距離です。これ以上近くてもエンジニア的には"全然アリ"でしたが、ボーカリスト的には"吸い過ぎると歌いづらい"という意見がありこの距離になりました。さて、ボーカリストとマイクの距離を7cmくらいにするとPSRF無しに比べて明らかに太くどっしりとして存在感が増しました。これはマイクに近付いたときと同じ効果で、何よりもこんな感じでボーカルが存在しているとミックスがやりやすいなと思いました。あと気のせいかS/Nが微妙に良くなった気もします。さらに、3cmくらいまでマイクに近付いてもらうと、いい意味で近接効果を感じられずに音像が大きくなる印象を受けました。逆に30cmくらいまで離れたときの音は、ザラついた感じが減少して、しかもマイクからどのくらい離れたかを把握しやすくなりました。これだけ離れてもPSRFの効果があるのも不思議です。アコギでもチェックしてみました。PSRF無しだとX1はかなり派手な傾向の音で、ボディの響きよりは弦の響きの方が勝ってしまう印象を受けました。それは、マイクとアコギの距離を10/50/100
cmのいずれにしても同じ。ところが、PSRFを使用するとその派手な感じは減少して、ボディの響きと弦の響きのバランスが取れ出します。ここでPSRFをマイクの直後まで近付けると、かなりデッドで太い音になりました。これは一つのエフェクターって感じです。プライベート・スタジオや自宅で本チャンを録るのが当たり前になってしまった昨今、エンジニアはすべての音を自分の好みで録ることができなくなってきています。ファイルを開いたときに初めて聴く音も多数あります。そのときに困るのが歌や生楽器の響きと距離感です。ほとんどの場合で余計な響きが多く、"さてどうしようか"となります。そうした際、本製品を使うと一つの部屋を作るくらいの効果があると思います。そして、響きと距離感もコントロールしやすいと思います。できたら、PSRFだけのバラ売りもしてほしいです。なぜなら、4方向に立てて試してみたいからです。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年6月号より)
SE ELECTRONICS
X1 Home Studio Bundle
オープン・プライス(市場予想価格/31,500円)
▪指向性/単一 ▪インピーダンス/≦200Ω ▪感度/−32dBV/Pa(25.1mV/Pa) ▪最大音圧レベル/125dB(0.5% THD@1,000Hz)