ワイド・レンジで素直な出音が魅力のボーカル用コンデンサー・マイク

SHUREPG42-LC
25mmの大型ダイアフラムを搭載した"毎日の使用にも耐えられる"耐久性と、ナチュラルでクセのない中低域&ノイズが少なく伸びやかな高域

SHURE PG42-LC 30,240円数々の定番マイクを生み出してきた名門SHUREからボーカル用コンデンサー・マイクのエントリー・モデルが新たに発表されました。これまでダイナミック・マイクに定評のあった同社ですが、最近はリボン・マイクなど新しいコンセプトの製品のリリースが目立っており、新しい製品に期待が持てます。そして今回紹介するPG42-LCは、価格帯を考えると今最も競合製品の多いクラスだけに、その出来栄えが気になるところ。昨年11月に東京・目黒にオープンした筆者のIROHA STUDIOからレポートさせていただきます!

25mmの大型ダイアフラムを搭載 "毎日の使用にも耐えられる"耐久性


まず初めて手に持って感じたのは、そのずっしり感。ほどよい重みがあるほうが安心感がありますよね。制振効果にも多少影響があると思います。現代的な丸みを帯びたフォルムもさることながら、表面の仕上げも手を抜いた感じが無く好印象です。そして立派なアルミ製キャリング・ケースと、本体と一緒に収納可能な専用のサスペンション・ショック・マウントも付属。ショック・マウントはマイク本体を挟むだけではなく、簡単にネジ止めされるタイプなので安定感がありますが、その見た目は価格相応といったところ。でも最低限の性能があるし、これがあるのとないのとでは大違い。別売りでないのはありがたいです。肝心のカプセルには金メッキ処理された25mmの大型マイラー・ダイアフラムを採用。ここ最近の傾向ですが、ボーカル用マイクの世界ではエントリー・モデルでさえも大型ダイアフラムが当たり前になってきました。ダイアフラムは大きければいいというものではありませんが、声のように複雑なソースを収音するには大型の方がいい場合が多いようですし、何よりデカいのは製品に気合いが入っているという証拠なのです。また、自宅録音での使用を考えた場合、マイク選定の重要な要素の1つは"耐久性"なのですが、このマイクは繊細な大型ダイアフラムの付いたコンデンサー・マイクを毎日の使用にも耐えられるように頑丈に作ったことのこと。壊れにくいことはすごく大事です。

ナチュラルでクセのない中低域とノイズが少なく伸びやかな高域


まずは、"ボーカル用"とのことなので、ボーカルで試してみました。ぱっと聴いた感じでは、そのサウンドはとても明るい印象です。ノイズも少なく高域が気持ちよく持ち上がっているために、まさにリード・ボーカル向き。中域から低域にかけては非常にナチュラルでクセがなく、男性/女性を問わずボーカル・マイクとして使えると思います。前述の通りハイエンドが奇麗に伸びて聴こえるので、無理なEQは入れなくてもミックスの中で際立つボーカルを作れるでしょう。ただ、明るいマイク全般に言えることですが、子音のキツいボーカリストの場合にはマイキングに多少の工夫が必要かもしれません。そして近接効果もうまく処理できていると思います。むしろオン気味のセッティングで使う方がちょうどいい感じ。指向性は単一で固定ですが、ダイアフラムから口が離れると低域が引っ込みやすく、体感的な指向性はやや強い印象がありました。でも自宅で録音するときには、これくらいの方が余計なノイズを拾わなくていいと思います。続いて、スタジオにあるNEUMANN M147 Tubeと聴き比べをしてみました。価格が10倍くらいの開きがあるにもかかわらず、クオリティ的にはそこまでは負けていません。サウンドはやはりPG42のほうがハイ上がりに聴こえます。ピーク感は無いのでキツい印象はありませんが、シャキっとした今風の感じ。何となくAKG系っぽいところがあるのかも......というわけで次はAKG C414B-ULSと一緒にギター・アンプに立ててエレキギターで比較試聴してみたところ、やはり印象は似ています。細かいニュアンスもよく拾っていて、自然です。中域のおいしいところもうまく拾えている感じがします。C414B-ULSに比べると若干固い印象もありますが、それはエイジングのせいもあるかもしれないということと、マイクプリの相性を吟味できればもっといい結果が得られるかもしれません。メーカー側は"ボーカル用マイク"とはうたっていますけど、ギター・アンプの収音に使ってもいい結果が得られました。ショック・マウントが大きいのでベッタリくっつけてセッティングすることはできなかったのですが、素直な音質なのでどんな楽器でも合うかもしれません。ボディのサイドにはPADスイッチ(−15dB)も付いていて高い音圧にも耐えられるように作られているので、ボーカルだけではなく楽器などにどんどん使っていけると思います。ここのところ、自宅録音のためにいろいろ機材をそろえようとしている人が自分の周りに多く、マイクの選定に悩んでいる人も少なくありません。このPG42-LCは、そういったニーズにも応え得ると思いました。価格/性能のどちらをみてもいい落としどころになるのではないかと思います。決して見た目をビンテージっぽくしているわけでもなく、個性的というわけではないのですが、汎用性が高く、堅実かつ丈夫で扱いやすいマイク。そういう位置付けだと思います。ダイナミック・マイクでは満足できなかった方もコンデンサー・マイクを使うのは初心者の方も、コンデンサー・マイク特有のレスポンスの良さと大型ダイアフラムのレンジの広さを堪能できるマイクになっているでしょう。また今回は試すことができなかったのですが、このPG42-LCには、姉妹品としてより楽器のレコーディングに最適化されたPG27-LC(23,940円)があるほか、USB接続専用のモデル(PG42-USB/37,590円)もラインナップされているようなので、こちらも要チェックです。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年4月号より)撮影/川村容一
SHURE
PG42-LC
30,240円
▪周波数特性/20Hz〜20kHz▪指向性/単一▪PADスイッチ/−15dB▪付属品/アルミニウム製キャリング・ケース、サスペンション・ショック・マント▪外形寸法/55(φ)×150(H)mm▪重量/439g