高域の気になるノイズも無く、パワフルで豊かな低音を提供してくれるスピーカー - サンレコ〜音楽制作と音響のすべてを届けるメディア

MACKIE.Thump TH-15A

玖島博喜（TEAM URI-Bo）

高域の気になるノイズも無く、パワフルで豊かな低音を提供。何もしなくても最高の状態を引き出してくれるスピーカー

MACKIE. Thump TH-15A 53,025円／1本近年のMACKIE.製品の数々には、目を見張るほどのこだわりを感じる進化が見られます。以前レビューしたPA用のデジタル・ミキサーTT24に、世界的に絶賛されているDOLBY Dolby Lake Processorの機能を凝縮したLP48のマウントが可能なのも例外ではないでしょう。それほど音に確かな情熱のあるMACKIE.が新たなPAスピーカーを発表したと聞いてはじっとしていられません！　早速レビューしてみたいと思います。

何もしなくても最高の状態を引き出してくれるスピーカー

本機はパワード・タイプの２ウェイ・スピーカー
です。最近ではさまざまな現場や店舗で目にするほど爆発的に売れた同社のSRM450V2を開発したチームが、このThumpシリーズのスピーカー（本機とサブウーファーTH-18S）も設計しているので良い部分は継承し、弱い部分は改良され本機は"まさに最強"でしょう。その良い部分とは、通常の381mmサイズのスピーカーは大きく重く設営しにくいサイズですが、本機はほかのスピーカーに比べ16.3kgと軽量、サイズも689（H）×401（D）×427（W）mmとコンパクト設計。材質は非常に頑丈なポリプロピレン製になっているので、少々手荒に扱ったとしてもびくともしません。また音質面ではこのキャビネットの大きさに似合わない"図太い低音と大音量"を生み出しており、さらにアンプはクラスD Fast Recoveryを採用することにより（LFのみ。HFはクラスA/B）、LFが300W、HFが100W、総合計400Wのハイパワーで、381mmウーファーの迫力ある低音と、高音質でひずみが少ない25mm径高域コンプレッション・ドライバーをドライブします。また特筆すべきは同社独自の優れたアクティブ・プロセッシングやクロスオーバー、内部温度感知機能と、ドライバー間のディレイを完ぺきに合わせることで、スピーカーの効率を"何もしなくても最高の状態" で引き出すようになっています。しかも本機裏の操作パネルには、3バンドEQ（ハイ／12kHz／シェルビング、ミッド／ピーキング、ロー／80Hz／シェルビング）とバイパス・スイッチ、ボリューム、電源スイッチ、I/Oコネクターしか装備していません。これなら複雑な操作を強いられないので素人さんにも扱いやすいですね！

高域の気になるノイズも無くパワフルで豊かな低音を提供

カタログ・データから、今回のレビューは"音質"と"パワー"に重点をおいてチェックしました。本機はマイク／ライン入力を装備していますので、まずSHURE SM58を直接本機にインプットしてみます。イコライザーはバイパスの状態でボリュームを上げていくと２時辺りでスピーチなどでは問題無い音量を確保できます。少し強めにしゃべってもOL（クリップ・ランプ）は点灯しません！　もう少し音量を上げて、野外などの周りのうるさそうな感じを想定し、３時半くらいまで音量を上げてみてもひずみは無くむしろ大き過ぎるほど。音質においてもピークを感じる部分やディップしている帯域も無く、このまま現場に持っていってもなんら問題もありません。現場のチェックとしてセンター・フィル用に使用してみました。今回はわざとグラフィックEQを通さず本体のイコライザーのみで現場に臨みます。思った通り本機のイコライザーのみで調整をすることが可能で、低音を−4dB、ミッド（1.2kHz辺り）を＋2dBと、すぐにフラットにすることができました！　このサイズのスピーカーは高域のチリチリ感が耳につくのですがそれも無く、低音も18インチ・クラスのサブ・ローのような"豊かな音質"です。もちろんパワーも余裕があるのでボリュームは２時設定でかなりパワフルになってくれます。内蔵のアンプに余裕があるので鳴り方もストレス無く奇麗です。本機にはポールやスタンド用のスタンド・ホールもありますし、横に倒せばウェッジ・モニターとして使え、縦の状態では小割りなどの資材を使うこと無く本機をあおることもでき、ユーザーすべての環境に対応しパーフェクトな形で音を提供できます。時代が進めばさまざまなものが"進化"を遂げ、また使いやすくなります。後から出てきた機材ほど能率的でより良い製品が発売されるのです。その最たる優れたスピーカーがこのTH-15Aと言っても良いでしょう。