−20dBのPAD搭載で大音量の録音にも対応するコンデンサー・マイク

SHUREPG27-LC
マイキングの距離で低域をコントロール。ダイナミック・マイクのような気軽さも魅力

SHURE PG27-LC 23,940円最近思うことですが、昔のコンソールを含めたアナログ環境の録音で使用していたマイクと、最近のDAWなどのほぼデジタル環境の録音で使用するマイクとでは、微妙に変わってきているように思います。昔使っていて"良かったな~"と思うマイクでも、最近のシステムでは、"ん~"ということがあるのです(経年変化は除いて)。もちろん定番は定番で良い味を出すので使用しているのですが、皆さんはどうですか? さて今回は、SHUREから新しいコンデンサー・マイクPG27-LCの登場ということで、試してみました。値段もお手頃です。さてその実力は......。

4種のサイド・アドレス型マイクが登場 PG27-SLはマルチなソースに対応


まずPG27-LCを手に取ってみたところ、重みもあり、全体的にしっかりとした作りになっています。本機はサイド・アドレス型コンデンサー・マイクで、同時に同じ形でボーカル録音に特化したというPG47-LC(30,240円)、それぞれのUSB接続モデルであるPG27-USB(31,290円)、PG47-USB(37,950円)も同時に発表。それぞれダイアフラム部の編み目の作りも丁寧です。この辺はさすが老舗のマイク・メーカーといったところでしょう。安心感があります。SHUREのサイトによると、特にPG27-LCは楽器からボーカルまでどんなソースにでも対応するとのことですが、本体には−20dBのPADも装備しているので、キックや大音量のギター・アンプの録音でも難なくこなせそうで、同社のマイクはライブのボーカルや楽器収音で使用することも多いですが、これなら全く問題無いと言えそうです。とは言えコンデンサー・マイクなので、もちろん使用時には48Vのファンタム電源が必要です。また付属品を見れば、マイクスタンド・アダプターと、キャリング・ポーチが入っています。そして何ともうれしいのが2万円代という低価格ですが、肝心の音の方はいかに? 早速チェックしてみましょう。

マイキングの距離で低域をコントロール ダイナミック・マイクのような気軽さも魅力


今回は用途が広そうなので、いろいろな楽器で試してみました。まずはボーカルですが、ぱっと聴き素直な音を聴かせてくれる印象です。他社の同価格帯のコンデンサー・マイクと比べても、クセは無く、確かに"どんなソースにでも使ってください"というメーカーの意図が分かります。ただ、幅広い用途を想定していることもあり、低域に関してはややすっきりした音になっています。そのため通常のボーカルのマイクの位置にセッティングしてしまうとちょっと軽く感じでしまうので、少し近づいて使用する方がよいでしょう。本機は良い意味で近接効果が有効に使えます。マイクの距離感で低域の調整ができますので、低域が足りないと思ったら思いっきりマイクを近づければ良いのです。そういう意味でも、本体のPADの値が−20dBと設定されているのも納得です。また、ボーカルの1~3kHz辺りの耳につく周波数も素直に抑えられているので聴きやすいです。続いてはアコギで試してみたのですが、今度は低域のすっきりした感じが功を奏して、アコギ録音時にありがちな低域のボンボンとした部分が少なく、EQ無しで収録することができました。高域もジャキっとした感じではなく素直に伸びていて、全体的に奇麗。幾つかのマイク・ポイントで使ってみたのですが、コンデンサー・マイクにありがちな"ここの位置ではすごく良いけど、ちょっと外れるとイマイチ"ということも少なく、宅録を含めマイキングに慣れていない人でも気軽に楽しめるマイクだと思います。また、ここでも低域が欲しければ、ボーカルのときのようにちょっとオンマイク気味で使えばいいということを忘れずに!次にギターとベース・アンプでのチェックですが、これも印象は良かったです。特にベース・アンプでちょっとこもった音作りをしたい際は、抜けが悪いだけにマイク選びに苦労するのですが、本機ではその感じも無く、変にブーミーになることもありません。後は低域の質感をマイクの距離で調整すればよい感じです。ギター・アンプでは、今回はディストーション・フルパワー系のバッキングで使用してみたのですが、これも低音の弦を押さえたときの不用意な低域成分もうまく抑えられていて良い印象でした。ただ、このマイクは中域の"良い意味でのクセ"が少ないのが気になったのですが、同社のSM57を混ぜることで補うことができました!ここまでさまざまなシチュエーションで試してみましたが、全体的にオンマイクで使用した方が良い感じです。コンデンサー・マイクなのですが、実際に使っているとダイナミック・マイクを使っているかのような気軽さが感じられます(低価格だということもありますが......)。PADが20dBもあるので、大音量のギター・アンプでも問題ありません。オンマイクで遠慮なく使ってほしいですね。また指向性に関しては、本機は単一指向ですが、音場的には広い感じではないので、ここからもライブから宅録までどの現場でも使える印象を受けました。しかも、コンデンサーなのに感度も抑えられており、周りの余計な音も拾いにくいのも良い点。音質的には特に個性がある感じは無いのですが、逆に言えば汎用として使用することができるということ。ただ、この辺が好みの分かれるところかもしれません。同時に発表されたPG47が"ボーカル用"と銘打っているだけあって、その分個性が出ているのですが、本機は、中域から低域に関しての情報量の多さは多少落ちますが、マイクとソースとの距離で調整するという楽しみもあり、いろいろな実験も含め変に気負いすること無く使える便利なマイクだと思います。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年3月号より)撮影/川村容一
SHURE
PG27-LC
23,940円
▪周波数特性/20Hz〜20kHz▪指向性/単一▪インピーダンス/300Ω以下▪等価ノイズ・レベル/−20dB▪最大SPL/PADオフ時:134dB SPL PADオン時:154dB SPL▪PADスイッチ/20dB▪付属品/マイク・フォルダー、キャリング・ポーチ▪外形寸法/55(φ)×150(H)mm▪重量/438g