プロの作曲家の手による実用的かつハイクオリティなストリングス音源

AUDIOBROLA Scoring Strings
ソロから巨大編成まであらゆる構成が可能。リアルなレガートや連打などを簡単に実現。業務用に的をしぼったソフト音源。

AUDIOBRO LA Scoring Strings オープン・プライス(市場予想価格/147,000円前後)現在テレビ音楽の作曲家/プロデューサーとして長い経験を持つアンドリュー・ケレステスが設立したAUDIOBRO。その最初の製品が、今回紹介するLA Scoring Stringsだ。Scoringとは、劇伴(映画やテレビ、演劇などの伴奏音楽)や映画音楽のこと。その名の通り、業務用に的をしぼった、実用的かつハイクオリティなソフト音源となっている。

ソロから巨大編成まであらゆる構成が可能


実用的かつハイクオリティというLA Scoring Stringsの特徴は、まずその楽器編成に現われている。全体は、1stバイオリン/2ndバイオリン/ビオラ/チェロ/コントラバスの5パート。バイオリンが1stと2ndの2つあるのがキモで、これが用意されていないと、バイオリン2パートをユニゾンにするアレンジ(定番だ!)を行ったときにフェイジングが起きてしまうのだ。それぞれのパートの人数だがこれもまた実用的な工夫がされている。まず、基本になるのは16人/16人/12人/10人/8人と大人数のフル編成だが、さらにそれを分けた、小編成も充実しているのが素晴らしい。例えば、バイオリン(1st/2ndとも)であれば、4人編成が2種類、8人編成が1種類、さらにソロ、となっている。同様にビオラであれば3人/3人/6人とソロ、チェロは3人/3人/4人とソロ、コントラバスは2人/2人/4人とソロといった具合。これらを使えば、ポップスなどに適した4人/4人/3人/3人(/2人)のような小編成や弦カルテットも可能になる。さらに、フル・オーケストラ編成であっても、1stバイオリンを2分割して使うようなDivis(i ディヴィジ)も自由自在だ。ディヴィジは劇伴やショービズの音楽では多用されるテクニックだが、従来のライブラリーでは難しかった。さすが、生の弦を書いている人が自身の"これまでのソフト音源によるフラストレーションの解決のために"プロデュースした音源だ。

リアルなレガートや連打などを簡単に実現


編成だけでなく奏法や表現に関しても即戦力だ。収録されているのは、ロング・トーンとスタッカートおよびピチカートといった代表的な奏法が数種類ずつで、必ずしも種類は多くはないのだが、一つの音色でさまざまな表現が可能な使い勝手の良い音色。明るくはっきりしたサウンドは、まさに"LA"のスタジオの音だ。さらに、ロング・トーンでは、専用サンプルによる完全なレガートやポルタメント、グリッサンドが可能だ。それも、わざわざパッチを切り替えなくてもレガートで弾けばレガートになるといった具合に自動化されている。また、パッチによっては、弱音ではポルタメント、強音ではレガートといった具合に切り替えてくれる。もちろん、コントローラーによる切り替えも可能。とにかく、素早く仕事ができるようによく工夫されているのだ。また、ショート・トーンによる"刻み"やピチカートでは、自動的にサンプルやタイミングをバラつかせて、機械的な演奏にならないようにもしてくれる機能も装備する。これらの効果はパッチごとにバラバラにかけることが可能なのもいい。同じ16人編成でも4人/4人/8人に分けてこれらの機能をかけ、さらに自然なバラつきを演出することができるのだ。しかも、そのための手間は驚くほど少ない。ちなみに本ソフトは、NATIVE INSTRUMENT Kontakt Player 3をベースに動くように制作されており、そのKontaktスクリプト・プロセッサーにより、各インストゥルメント独自のGUIやエフェクトを搭載しているのも魅力の1つだろう。またKontaktではおなじみだったDirect From Disk(DFD)機能も改良され、ハード・ディスク・ストリーミング再生がより快適になった。これはサンプルをRAMに読み込まず、ハード・ディスクから直接再生する機能で、コンピューターに搭載されたメモリー容量以上の大容量のサウンドを扱うことが可能となっている。ちなみに本ソフトはDVD-ROM5枚組、CD/CD-ROM1枚で38GBもの大容量のサウンドを収録しており、最大64パートのマルチティンバー、同時発音数は無制限だ。さらに柔軟なアウトプット・ルーティングについても触れておこう。各アウトプット・チャンネルには4つのインサート・エフェクトと4つの外部エフェクトを適用可能となっており、より多彩なストリングスを表現することが可能な機能だ。大編成のストリングス音源というと、ああ例のあれかと思う人も多いかもしれないが、このLA Scoring Stringsは一味も二味も違う製品だ。既存の先行製品をよく研究しつつ、さらに魅力的な製品に仕上がっている。筆者自身、さっそく欲しくなってしまった。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年3月号より)
AUDIOBRO
LA Scoring Strings
オープン・プライス(市場予想価格/147,000円前後)
▪Windows /Windows XP/VISTA、INTEL Pentium IV / AMD Athlon 2.8GHz 以上、2GB以上のRAMを推奨、VST2.4/RTAS/スタンドアローン対応▪Mac/Mac OS X 10.4以降(10.5対応)、PowerPC G5 1.8GHz / INTEL Core Duo 1.66GHz以上、2GB以上のRAMを推奨、VST2.4/RTAS/スタンドアローン対応