オーディオ・インターフェースを内蔵のUSBニアフィールド・モニター

ALESISM1 Active 520 USB
生楽器との相性が良さそうな豊かな低音感

ALESIS M1 Active 520 USB オープン・プライス(市場予想価格/22,800円前後/ペア)ADATシリーズでもおなじみの機材メーカー、ALESISから登場したのは、なんとスピーカーとUSBオーディオI/Oが一体化したニアフィールド・モニター。これまでにも双方それぞれに製品を発表してきた同社ですが、それらのノウハウを掛け合わせるとどのようなことになるのか、作業工程を含めて早速検証していきたいと思います。

シンプルなセッティングでUSB経由の信号を取り込み可能


まずはスピーカー部分から簡単に仕様などを説明していきます。本機は127mmのウーファーと25mmのツィーターによって構成された2ウェイのアクティブ・スピーカー(アンプ内蔵のもの)です。ペアでの販売となっており、Rch側のスピーカーでは、本体前面にON/OFFを兼ねたボリュームつまみ、ヘッドフォン端子、あとは電源供給時に点灯するライトが用意されており、通常時は青、信号過入力時には赤く光ります。背面にはローエンドを強調するBASS BOOSTスイッチ、TRSフォーンのL/R入力端子、後述のオーディオ・インターフェース用USB 1.1端子を装備。Lch側には同梱されているXLRケーブルを使用して接続する流れとなります(ゆえにRch側の方が重いです)。また、マットな色彩を基調とした落ち着いた配色が個人的に好印象です。続いてUSBオーディオ・インターフェース部について。と言っても内蔵されているので特に見た目では普通のスピーカーとの差異はありません。USBケーブルでコンピューターに接続し、簡単な初期設定をすればもうそれで準備完了。基本的にはドライバーのインストールも不要ですが、WindowsのASIO環境で使用する場合はドライバー・ソフトの"ASIO4ALL"をダウンロードすることで対応可能です。しかしながら、そもそもスピーカーにインターフェース?、と一瞬考えてしまいますが、要するにコンピューターからのUSB経由の信号をそのままスピーカーで出力できたり、2イン/2アウトのオーディオI/Oとして本機への入力信号をそのままコンピューターに取り込んだりすることが、とてもシンプルなセッティングで可能になったわけです。ちなみに、当然ですがUSBを使用せずとも普通に入力端子からの入力をスピーカーから再生することも可能です。

生楽器との相性が良さそうな豊かな低音感


次は実際に使用しての感触を書いていきます。まずは気になる出音ですが、BASS BOOSTオフ時でも若干中低域寄りの出音で、柔らかいというか太いという印象です。その傾向を踏まえると、元から低音が強調されたクラブ・ミュージック向けというよりは、生楽器を中心とした音楽とより相性が良さそうで、その豊かな低音感はリスニング用途にも適していると言えるでしょう。続いて録音に関してですが、これも出音のイメージと同じく少し中低域に寄っているキャラクターでややレンジは狭めではありますが、しかし価格を考えれば納得のコスト・パフォーマンスです。その録音時に関してですが、TRS入力端子からの音とコンピューターからの音はともにスピーカーから同時に出力される設定になっています。そのままだと例えば(マイクプリ経由などで)マイクの録音をするような素材(要するに音を拾ってしまう状態)の場合だと音が入り込んでしまい、また音量を下げて外音を切ると、ON/OFFとボリュームを同じツマミで併用している都合上、電源を切ることになってしまいます。さてどうしたことか、と一瞬考えましたが、答えは実に簡単。その場合は、ヘッドフォンを挿すことで外音が消える仕組みになっており、外音を遮断して録音することが可能です。これってAV機器などでは普通だったりしますが、こういった制作系の機材では意外と珍しい仕様ではないでしょうか。それだけ本機が幅広いユーザーを視野に入れているということでしょう。ついでに最初"ヘッドフォン用にもボリューム調整の端子が欲しかった"とか思っていたのですが、その仕組みのおかげで一つのボリューム端子を併用できるので全く問題ありませんでした。なんだか何気ない部分なのですが、簡潔かつ理にかなった構造で効率の良い作りだなと感じます。今までミキサー経由でオーディオI/Oやスピーカーに信号を送るという従来のルーティーンに慣れている自分としては、最初そのワークフローに動揺を隠せませんでしたが、やれる/やりたいことを明確にしつつ作業をしたところ、ほんとにあっという間に慣れました。本機は、パソコン中心で音を録ったりすぐに再生したりを気軽にしたいけど仰々しいシステムは不要な方、配線をシンプルにしたい方、コンピューターの小型スピーカーの出音では満足できない方、そしてもちろん音楽制作への入門編の機材として活躍しそうです。何よりペアでこのお値段とは、懐に優しい限りでしょう。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年2月号より)撮影/川村容一
ALESIS
M1 Active 520 USB
オープン・プライス (市場予想価格/ 22,800円前後/ペア)
▪周波数特性/56Hz~20kHz▪ダイナミックレンジ/80dB▪アンプ出力/LF