コスト・パフォーマンス&性能が高くオールマイティ仕様のリボン・マイク

MXLMXL R-77J
ビンテージらしさを残しつつ、現代の音楽事情に合わせた設計

MXL MXL R-77J オープン・プライス(市場予想価格/83,800円前後)今回紹介するMARSHALL ELECTRONICSのプロ・オーディオ・ブランド、MXLがリリースしたMXL R-77Jは、ビンテージらしさを残しつつ、現代の音楽事情に合わせた設計のリボン・マイクです。Jというネーミングの通り、日本だけの特別仕様になっており、リボンを1.8μ素材で新規張り直しをし、出力トランスにRCAタイプの高性能ハイμコア・カスタム・トランスを採用、そしてオール金メッキという気合いの入れよう。スタジオでもよく見かけるMXLが送り出す最新のリボン・マイクはどんなものか、早速レポートしていきたいと思います。

制振効果もあるつややかな金メッキを使用


届いたマイクの外箱がまずデカイです。マイクとは思えない大きさですが、その箱を空けると中
には木箱! 高級感出しまくりです。マイクの外観ですが、"ビンテージ・マイクを凌ぐ過去最高の出来映え"と自信を持った設計になっているそうです。その外観は......金ピカ‼ 指紋が付きやすく、手袋をはめて扱いたくなるほどつやがあります。金メッキというのは制振効果もあるので、この仕上げはだてじゃないかもしれません。ちなみに、指紋が付きやすいことを考慮してか、磨き用クロスが付属します。MXLは他社とはひと味違う仕上げを施すことが多く、赤や緑のマイクも存在します。その中では比較的おとなしい仕上げですが、MXLらしさは十分。マイク・ホルダーはゴム・ワッシャーを介してネジ止めされ、卓上スタンドも付属。フローティング・マウントはありませんが、用途を考えると妥当でしょうか。グリルは必要最小限の感じで、中のリボンがよく見えます。

音像がぼやけることなく空間をうまく表現してくれる


まずは女性ナレーション録りから。セッティングは付属の卓上スタンドを使ってみます。しかしケーブルを接続する際に一つ問題が。MOGAMI製のケーブルが付属していて、コネクターはNEUTRIK製ですが、ケーブルを差し込むとマイク・ホルダーに当たります。前か後ろに傾ければ全く問題無いのですが、卓上スタンドに対して垂直にはなりません。双指向性という特性やセッティングの自由度を考えるとLアングルのコネクターを用意したほうが良さそうです。比較対象として、ダイナミック・マイクのSHURE SM58とコンデンサー・マイクのRODE NT-1Aを同時に使用してみました。まず素直な感想は、リボン・マイク然とした、柔らかい音質でありながら、しっかりと高域も収録でき、つやのある声が録れました。ナレーション録りにはコンデンサー・マイクを使うことが多いのですが、R-77Jを使うと雰囲気を出しやすく、コンデンサーだと高域が若干うるさく感じます。SM58も柔らかい印象がありますが、比較すれば音像が狭く、つやが足りません。声質にもよるとは思いますが、R-77Jは幅広く活躍しそうです。ただやはり、リボン・マイクの宿命とも言えますが、入力感度は低い反面、ノイズを拾いやすいのです。特にこのR-77J、卓上スタンドを通してテーブルや床の振動をガンガン拾います。制震ゲルを敷いて若干抑えることができましたが、ナレーターには手の置き場所や原稿の配置に気を使っていただきました。次に、アコースティック・ギターのレコーディングでオフマイクとして使用してみました。振動に
気を付けながらセッティングしてみます。はっきり言って好みの音です。ボディの鳴りを十分に録りつつ、音像がぼやけることなく、空間をうまく表現してくれます。今回はスチール弦でしたが、ガット弦にはドンピシャはまると思います。実際の収録にはラインをDIで収録しつつ、R-77Jの音を足す方向で行いましたが、バランスによってしんを出しつつ空気感も出すのが楽に行えました。R-77Jのリボン・マイクとしての性能はかなり高いです。コスト・パフォーマンスも非常に優秀。繊細なリボン・マイクですので、耐久性なども気になるところですが、スタジオに一本置いておくと活躍してくれると思います。

▲付属の卓上スタンド(左)と木製のキャリング・ケース


『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年2月号より)撮影/川村容一
MXL
MXL R-77J
オープン・プライス (市場予想価格/ 83,800円前後)
▪周波数特性/20Hz〜18kHz▪指向性/双指向▪入力感度/−55dB(0dB=1V/Pa)▪外形寸法/65(φ)×180(H)mm▪重量/860g▪付属品/専用木製キャリング・ケース、専用卓上スタンド、マイク・ケーブル