スタジオ&ブースどちら側の音もモニターできるモニター・コントローラー

CONISISM03
クラブ系向きの低域の伸び。ワンランク上をいく音質

CONISIS M03 194,400円私は仕事柄いろいろな音楽家の家で作業することがあり、そこでいつも問題になるのがオーディオI/Oのモニター・アウト、ヘッドフォン・アウト、マスター・アウトで音質の差があること。だから小型のミキサーなどを使ってモニター・コントローラーの役割をさせ、スタジオ側のヘッドフォン用CUEとコントロール・ルーム側モニターを調整している人が多いのではないでしょうか。これだと音質に少し不満が出て、やはり専用のモニター・コントローラーが欲しくなるわけです。というわけで、今回はCONSISのモニター・コントローラーをチェックしてみます。

強く"プロ仕様"を印象付けるガンメタのパネル・デザイン


まず外見は少し大きめ。アルミ製のシャーシでサイド・パネルはプラスチックのようで、大きさは横480mm(W)×281mm(D)×98.6mm(H)、重量4kg。大きさの割には軽量です。トップ・パネルは落ち着いたガンメタで、つまみとスイッチと外枠はマットなブラック仕上げ。コンシューマーというよりはプロ機器仕様といった仕上がりです。ほぼ中央にある大きめのボリュームつまみはNEVEっぽいデザイン。クリック式ではありませんが、適度なトルク感で使いやすいです。このボリュームの上に、モノラルでモニタリングする"MONO"、トリム・ゲインを適応させる"DIM"、そして"MUTE"を切り替えるスイッチ(それぞれレベル・コントロール付き)があります。また、左には入力を切り替えるインプットソース・セレクト・スイッチ、右には出力を切り替えるモニター・セレクト・スイッチがあります。各スイッチ間は余裕があり、使用感も大変良いです。また、ヘッドフォン出力はトップ・パネルに用意され、パネル右下には本機からスタジオ側に送る音声をコントロールするスイッチなども用意されています。入力としては、ステレオ入力4系統(XLR×3、RCAピン×1)で、1系統にはアッテネーター・トリムを、またもう1系統にはゲイン・トリムを搭載しています。また、トークバック用マイク入力1系統も装備。出力はモニター出力がステレオ出力3系統(XLR×3、RCAピン×1)で、うち2系統がトリムを備えています。それに加え、スタジオ・トークバックなどを送るスタジオ・センド出力(XLR)や外部VUメーターなどを接続するソース・セレクト出力(XLR)も用意。一般的なモニター・コントローラーの入出力にはフォーンが採用されることが多いのですが、本機ではXLRがメイン。そのほか電源はACインレットとなり、トーク・バック・スイッチを接続するためのトーク・バック・センド・スイッチ端子(TSフォーン)も実装されています。

クラブ系向きの低域の伸び ワンランク上をいく音質


続いては、自分好みのルーティングを組んで、使用感や音質などを試してみました。まず本機への入力は、オーディオI/Oからのメイン・アウトを本機リア・パネルのステレオ入力に接続(いろいろな環境で試した結果、個人的にオーディオI/Oのメイン・アウトがDAW環境で一番音が良いと思います)。さらに本機のモニター出力はパワー・アンプやパワード・スピーカーに接続。なお、トリム・ゲインの有無によって多少音質に差があり、私の好みはトリム・ゲインの無い接続端子だったので、細かいゲイン調整はパワー・アンプ側で行うことにしました。まとめると、オーディオI/Oのメイン・アウト→本機→パワー・アンプ→スピーカーという流れです。今回はそれに加え、ソース・セレクト出力に外部VUメーターを接続(聴こえる音とメーターの振れを感覚的に一体化できればS/Nが良く、ひずみの無い状態にできます)しました。続いてスタジオ・センド出力をCUEボックスのステレオ・モニター入力に接続。こうすればブース内のミュージシャンのヘッドフォンにバランス良くモニター音を送れます。また、この状態でトークバック・スイッチを押せば、モニター音に割り込んでトークバックを送れます。そして最後にトークバック用マイク入力にブース内のマイクを接続。この機能は本機の特徴で、これで、トークバック・リターン・スイッチを押して、トリム・ゲインを調節すれば、ブース側の音が聴けるようになります。今まではこのような製品は無かったのです。これらのトークバック・スイッチとトークバック・リターン・スイッチを使い分ければブース内のミュージシャンとうまくコミュニケーションが取れるでしょう。さてさてその音質は、低域の伸びが素晴らしいので、クラブ系の方に向いているのではないでしょうか。また中高域の奥行き感もあり、"ワンランク上の音質"となっております。さらにヘッドフォン出力の音質、解像度とも感じ良く、この音質で安価なヘッドフォン・アンプを発売してくれないかと思いました。ちなみに本機は、同社のキュー・システムCOM28シリーズとの連携も抜群で、同社製品のみで高クオリティのモニター・システムを構築可能です。触っているとプロっぽい使用感なので楽しくなり、昔よく使っていたボーカル・セレクター・スイッチを思い出しました。ジャパン・プレミアムとでも言うのでしょうか。何たってメイド・イン・ジャパンです。安心して使用できるでしょう。

▲リア・パネル。左からACインレット、COM.SYSTEM端子(D-Sub 9ピン)、トークバック・センド・スイッチ(フォーン)、トークバック・リターン・マイク入力(XLR)、モニター出力C(RCAピン×2)、モニター出力A(XLR×2)、モニター出力B(XLR×2)、ソース・セレクト出力(XLR×2)、スタジオ・センド出力(XLR×2)、2トラックB入力(XLR×2)、2トラックC入力(RCAピン×2)、DAWミックス入力(XLR×2)、2トラックA入力(XLR×2)


『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年1月号より)
CONISIS
M03
194,400円
▪周波数特性:5Hz〜100kHz▪外形寸法/480(W)×281(D)×98.6(H)mm▪重量/4.0kg