機能やライブラリーを拡張しブラウザも改良されたソフト・サンプラー

NATIVE INSTRUMENTSKontakt 4
高度なエディット環境と使いやすい操作性、多数のファイルを柔軟に扱える見通しのよさ、即戦力のプリセットなど、あらゆるユーザーに強力にアピールする製品

NATIVE INSTRUMENTS Kontakt 4 オープン・プライス(市場予想価格/43,800円前後)高機能ソフトウェア・サンプラーの代表的製品ともいえるNATIVE INSTRUMENTS Kontaktがバージョン4へと進化した。さらに洗練された操作性とともに、新機能も盛りだくさん、サンプラーの将来像を示す強力な音源となっている。

より使いやすくなったユーザー・インターフェース


起動して最初に気付くのが一新されたユーザー・インターフェースだ。これまで3段階切り替えだったウィンドウ・サイズは、無段階に拡大/縮小できるようになり、ノート・パソコンなどの狭いディスプレイでも快適に使用できる。付属のライブラリーは、従来からさらに約10GB拡大された43GBに。Mellotronやビンテージ・シンセなど、キーボード系の充実が目立つ。そしてそれらの読み込みでは新搭載のブラウザ機能が便利だ。シンセの音色選択のようにタイプ(bass、pianoなど)、ティンバー(fat、woodenなど)を選択し、簡単に読み込める。もちろん従来のデータベースによる、ライブラリーをまたいだ音色検索や、ファイル・メニューからの直接読み込みも可能。お好みでどうぞ、というわけだ。豊富なサード・パーティー・ライブラリーを有するのもKontaktシリーズの魅力だが、さらに、多数販売されているKontaktエンジン採用音源の音色は、Kontakt 4による直接読み込みが行える。あまり知られていないことだが、こうすることで音源製品では不可能なスプリット・ポイントの変更といったエディットも可能になる。また、他製品ライブラリーのコンバートも、EMU E-IIIやE-IV、AKAI S1000/3000などのハード・サンプラーから、TASCAM GigastudioやAPPLE EXS24などのソフト・サンプラーまで網羅。それらを含めたサンプルのデータベースを構築していくことができる。過去の資産を生かしたい人から、これからライブラリーを構築したい人まで最適の製品だ。

進化したエディット機能 Authentic Expression


Kontakt 4のエディット環境は強力だ。波形レベルではテンポとピッチの独立変更、ビートのスライスといった、フレーズ・サンプルのエディット機能も豊富に装備しているのが現代のサンプラーらしい。エフェクトは、ビンテージ・タイプを含む13種類以上のフィルター(複数同時使用可能)、ビット落としやコンプ、コンボリューション・リバーブを装備。DAWを使わなくても、これだけで最終形の音にまで仕上げられる。さらにこのバージョン4から搭載されたAuthentic Expressionにより、サンプル間のモーフィングが可能になった。あるサンプルのスペクトルを別のサンプルの特性に合わせてモーフィングできる機能だが、とにかく聴いてみるのが早い。例えば、"Choir"という新たなボイス系のプリセットで、ホイールの上げ下げだけで母音の間が滑らかにつながっていく変化は、従来のクロスフェードとは全く異なる。サンプル単位から、フレーズ、曲単位のモーフィングまで、さまざまな面白い効果が作り出せる。こういった目に見える部分だけでなく、目に見えない部分のバージョン・アップも着実に行われている。心臓部ともいえる、オーディオ・エンジンも大きく改良された。これまでに比べ、低域がスッと出る感じになり、密度感も向上した。前バージョンと同じプリセットで聴き比べても、ベースやシンセがグッと前に出てくる感じになっている。また、サンプルの保存/読み込みに関して、ロスレス圧縮フォーマットNCWを新たに採用。音質を損なわずに最大50%までファイル・サイズを落とすことができる。ロスレス圧縮は、今後のサンプラーのトレンドになりそうな機能だが、いち早く名乗りをあげたのは、さすがと言える。筆者自身、Kontaktシリーズは最初のバージョンから使い続けている。非常に柔軟で高機能であることに魅力を感じる一方で、操作性などで若干の難解さやマニアックさを感じていたことも事実だ。しかし、そんなKontaktもこのバージョン4になって、ずいぶんとこなれ、使いやすくなったと実感する。トーンの調節やエフェクトのかかり具合などのエディットは、必ずしもサンプルの深い階層に入っていかなくても、プリセット音源感覚で簡単に行える。一方で、その気になれば、音響実験室のような凝った音作りも可能だ。ほとんどのDAWにソフト・サンプラーが付属している現在、単体製品を買い足すことの意味が問われている。それに対するNATIVE INSTRUMENTSからの回答とも言えるのが、このKontakt 4だ。これにしかない高度なエディット環境と使いやすい操作性、多数のファイルを柔軟に扱える見通しのよさ、即戦力のプリセットなど、あらゆるユーザーに強力にアピールする製品に仕上がっている。DAWが変わっても長く付き合える存在として、検討してみてはいかがだろうか。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2009年12月号より)
NATIVE INSTRUMENTS
Kontakt 4
オープン・プライス (市場予想価格/ 43,800円前後)
■ 付属サウンド・ライブラリー/43GB

■ 対応プラグイン規格/スタンドアローン、Audio Units、VST、RTAS(Pro Tools 7以降)■ Windows/Windows XP(SP2、32ビット)/Vista(32ビット/64ビット)、INTEL PentiumまたはAMD Athlon 1.4GHz以上のCPU、1GB以上のRAM■ Mac/Mac OS X 10.5以降、Core Duo 1.66GHz以上のCPU、1GB以上のRAM